金子真季二段の心の一局(1)「願ってもない対局」
金子真季二段から皆さまへ
本日はお集まりいただき、ありがとうございます。
皆さまにとって素敵な時間になるよう、頑張りたいと思います。これからも洪道場をよろしくお願いいたします。
洪から真季へ
真季は11番めの道場出身棋士です。真季は多くの才能を持っています。囲碁はもちろんですが、絵と文章、歌もとても上手です。機会があれば真季のきれいな声を皆さまにぜひ聞かせたいです(笑)
プロになって着実に成長していく姿を見たらとても嬉しいです。今回二段昇段も 本当によかったです。これからの活躍がとても楽しみです。いつも心いっぱい応援しております。
2018年9月20日
第58期十段戦予選C
白 金子真季 初段(当時)
黒 マイケル・レドモンド 九段
持ち時間3時間
実戦譜(1-50)
金子先生「白6はびっくりする手ですが最近流行の様子見の手法です。白26や黒27が決まってやや打ちやすいと思いました。白32のツケでAは上辺が治まってしまいます」
金子先生「この対局を選んだのは、レドモンド先生のような高段者と対局することがなかなかなかったので、心にのこっていたからです」
実戦図
参考図1
金子先生「右下隅の変化では、参考図1の白2とキルと黒は3とおだやかに引く手もあります。そのあと白4とアテるのですが」
聞き手「白4はいったん手を抜いて、後で白から4といくとすると、黒7のあと右辺に展開する手を残す」
参考図2
金子先生「参考図1の黒3のあと、黒が先に右辺黒△にくれば、参考図2の白1と下からアテて、白5とサガった2子は取られてしまいますが、白9まで、右辺を先手で動く手を残しています」
聞き手「ちょっと高度ですね」
参考図3
聞き手「最近の評価では、参考図3のように黒3のヒキから次に黒Aと入れる手が立派なので黒が良いということになって、最近ではあまり打たれません」
金子先生「この対局は昨年の9月で、その頃は黒3でBからアテたりいろいろ賑やかにやってました。小山先生の研究会でも、この形を題材にして勉強していました」
金子先生「今回は実戦のように黒7とハネてきたので、白としては右下隅にアジを残したいので白8とハネ、黒ツギとなりました」
聞き手「右下隅の白は小さく生かして、右辺を重視する手です」
参考図4
金子先生「ここで、例えば参考図4の白1などと守る手もあるのですが、アジを残したかったので、右下隅はいったん放置して右上隅の三三にまわりました」
実戦図
参加者「でたでた、ダイレクト三三」
金子先生「まあ、時代の流れなので大目に見てください(笑) 良いか悪いかは別にして、流行に乗っていた時期ですので」
聞き手「強い人のやることは真似したくなるので、プロも真似るんですね」
金子先生「この時期は、最新流行の手を何度も打ちましたが、楽しかったです」
実戦図
聞き手「黒13では、AにハネたりBにノビる手がありますが、第三の選択肢ですね」
参考図5
金子先生「実戦ではブツカリましたが、参考図5の白1とツケるのは、黒2とブツカッて白3から黒4まで、最初にハネてノビてハッてノビたことと同じになります」
聞き手「黒13とケイマにした意味がなくなりますね」
参考図6
金子先生「黒は参考図6の黒2とオサエたいのです。ただ、白3に黒4とオサエると以下白7まで、黒1子が取られてしまいますので」
参考図7
金子先生「黒4では参考図7の黒4とヒイて黒6のオサエ」
聞き手「これは、いま流行っている手です。とても難しい変化がいっぱいあります」
金子先生「みなさんも、一度は目にしたことがあるかもしれませんね」
聞き手「白1とツケると難しい変化が待っています」
実戦図
金子先生「実戦はそれをやめて、白14とブツカりました。右上隅は簡明にいこうと思っていました」
聞き手「難しい変化では、相手が良い手を研究していると不利になりますから」
金子先生「さっきの難しい変化では、右上隅だけで碁が終わってしまう可能性もあったので、この碁は長く打ちたかったんです。なのでゆっくりした方を選びました」
実戦図
金子先生「ここで黒は手を抜いて、左下にかかってきました」
参考図8
聞き手「参考図7の黒1とノビるのが普通ですが」
金子先生「白4とシマるのも大きいところなので、ノビなら一本ハッてから白4にシマるつもりでした」
聞き手「こうなると、黒は右辺ですか」
金子先生「白は下辺にヒラいて、ゆっくりした碁になります」
聞き手「黒は左下が大きいと判断したのですね」
実戦図
金子先生「ここでどこが大きいとかとなると、右辺の黒模様なので、実践図の白18とキリました」
参考図9
金子先生「参考図9のように、白1とアテて白3にサガるのもあるのですが、黒4辺りにヒラかれて依然黒模様が大きいので、ちょっと厳しめにいってみました」
聞き手「金子先生らしい、戦闘的な手ですね」
参考図10
聞き手「ここで参考図10の白1とアテれば」
金子先生「黒はAとヒラくかBとトブか」
聞き手「実戦ではよくこういう形になりますね」
金子先生「本局は右上をアテずに白26とトビました」
聞き手「トバレるのを嫌ったのですね」
金子先生「黒からトバレて、自分が攻められる流れになるのも嫌でしたが、先にトンだら黒はどう受けるかな、と思いました」
実戦図
金子先生「このとき、黒が実戦図黒27のさらに一路二間にヒラケば、あまりにもウス過ぎるし、実戦の一間では黒の足が遅いようにみえる」
参考図11
金子先生「かといって、参考図11のケイマだと、白からズカズカ押さえつける手もあるんじゃないかと」
参考図12
金子先生「あるいは、参考図12のように進行すると、黒は上辺に押さえつけられたようで、自分は嫌だなと思いました」
参考図13
聞き手「黒からは参考図13のハネが気になるのですが」
金子先生「ハネにはAとサガる手もあるのですが、折角白26(白△)とトンだので、参考図の白2とツケてしまおうと」
金子先生「スミの白との攻め合いは、参考図13のように白が勝つので、黒はハネられません」
実戦図
金子先生「実戦図の黒27とトバれたときに、内心今日はイケるんじゃないかと。黒は位が低いから白はいいんじゃないか、という感覚でした」
次回連載第2回「殺戮天使が狙う」をお楽しみに