呉柏毅六段の心の一局(1)心優しきナイスガイ
呉柏毅五段(令和6年現在六段)から皆さまへ
皆さんこんにちは、関西棋院の呉柏毅です。
今日はお忙しい中お越しいただき、ありがとうございます。自分の事ご存知ない方の方が多いと思うので今回のイベントを機に、皆さんに知って頂けたら嬉しいです。この機会を作って頂いた洪先生初め、参加していただいた皆さんに感謝の気持ちが伝わるイベントになれば嬉しいです。
洪から柏毅へ
柏毅はプロ棋士になる夢を持って、小さい頃から日本に留学しました。一人の時間が多かったです。淋しかったでしょうね。私は毎日のように柏毅と一緒にいましたが、私では出来ないことが多いなといろいろ感じました。美味しいご飯でも食べようと思い柏毅とはたくさん食事を一緒にした気がします。
なかなか入段試験の壁が厚く苦労もしましたが、今は関西棋院を代表する棋士になって嬉しく思います。
今は遠くにいてご飯食べる時間は減りましたが(笑)いつも想っています。一人暮らしなのでよく食べ元気に過ごして欲しいです。いつも心いっぱい応援しております。
2018年9月27日
第43期棋聖戦Cリーグ最終局
白 鈴木伸二 七段
黒 呉 柏毅 五段
持ち時間3時間
第一譜(1-50)
棋聖戦は第1期から棋戦システムを革新したことで有名なタイトル戦です。囲碁界の一番大きい優勝賞金、藤沢秀行先生の命がけの6連覇、趙治勲先生の車椅子対局など数々の話題があるプロ棋士達の夢の棋戦です。
白12、14は早く安定する定石です。白20のワリウチは良いバランス感覚です。黒石が多い所なので早く治まりたくて生きを急いでいます。
白34は面白い様子見です。
白44から戦闘が始まっています。
実戦図1-19
呉先生「この対局は、勝てば棋聖戦のBリーグに昇格する大切な手合でした。対戦が決まった時から緊張していたのを今でも覚えています」
参考図1
呉先生「実戦の19は参考図1のAとBを見合いにした手です」
参考図2
聞き手「例えば参考図2の1なら」
呉先生「参考図2のような変化になります。実戦の19は参考図1のCのマガリもありそうですが対局中は味気なく感じました」
実戦図19-29
呉先生「実戦の20のワリウチが一路下に寄せたのは右上黒の厚みを警戒したのかもしれません。23のブツカりは白の形をダブらせる意図です」
実戦図29-34
聞き手「白は黒の厚みの中でしっかり生きたので満足でしょうか」
呉先生「白が先手で地を持ちながら治まったので不満はありません。やや白持ちの長期戦模様です」
参考図3
聞き手「実戦の白30はなぜ必要なのですか」
呉先生「実戦の白30を省くと参考図3のように黒2から4となり、後に黒5で眼形がなくなるので白5ぐらいですが」
参考図4
呉先生「そのとき参考図4の1と2の交換は利かしになっています」
参考図5
聞き手「参考図5の白1と単にブツカるのとどうちがうのでしょうか」
呉先生「1,3の形はとても立派な分、実戦と比べて白の後手になるデメリットがあります」
参考図6
呉先生「実戦の白30の交換があれば、参考図6で黒が手を抜くと白1と効かされ、さらに手を抜けばABCなどの利かしが残ります」
聞き手「つまり白30は先手を取る効果があったということですね」
実戦図34-44
呉先生「実戦の41ハサミツケは守る前のちょっとした利かしです」
聞き手「44で、ここから中盤に入っていきますが、この局面をどう見ていましたか」
呉先生「細かくなりそうな気がしていました。自身はなかったです」
実戦図44-50
呉先生「実戦のように戦いになってきたときに、先程の34と35の交換が利かしになっているのです」
参考図7
呉先生「白が参考図7の1とハネると黒は2のヒキが相場ですが、この交換だけで将来左側の白への援軍になっている意味があります」
(つづく)
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