呉柏毅六段の心の一局(2)棋聖戦Bリーグ昇格への戦い
第二譜(51-100)
黒51のツケは中央白を浮くようにしながら左辺黒の安定を求めています。白54のハネだしの前に52を先に決めたのは繊細な手順です。
白74は鋭い手ですが、先に75のマガリを決められてたら黒はもっと困っていたかもしれません。
黒85〜91の決め方は少し損でした。黒95ハネで後手を引いたのも問題です。右下の模様を広げるべきでした。
実戦図(50-52)
呉先生「実戦の51ツケは上下の黒を繋がろうとしてる手です」
聞き手「ワタれれば黒の弱い石がなくなって中央の白4子だけが浮いてしまいますね」
呉先生「白もワタリを阻止しようとします」
実戦図(52-59)
呉先生「実戦の52は利かしです」
参考図8
呉先生「実戦の52を省くと、参考図8の6から7となったときに黒8と出られてしまうので、先に52を打ってから58としました」
実戦図(59-63)
呉先生「実戦の63ツケは分断された黒石の補強です」
聞き手「63を打たないと...」
参考図9
呉先生「参考図9のように白から1とノゾく手があり黒は不安です」
聞き手「左辺の黒を上下に切断することができました」
実戦図(63-67)
参考図10
呉先生「68でもし参考図10の1に出ると白は△4子を取れますが、2のアテも大きいところで黒は捨てても打てます」
実戦図(66-74)
呉先生「実戦の74はいい手でした。なぜいい手かというと...」
参考図11
呉先生「元々将来参考図11の黒1のワタリがあります。手抜くのは次に黒からAのハイがあるので、白はBに受けます。黒1のワタリがほぼ先手な意味がありました」
参考図12
呉先生「74(△)の後、参考図12の黒1には白2とキリ、黒3と取れますが、白4のアテが先手になります。手抜くのは左辺の黒がいじめに合うので仕方なく。白は先手で参考図11のワタリを防いでいます」
参考図13
呉先生「74は良い手だったのですが、タイミングが問題で、ここでは参考図13の白1と下辺にマガるべきでした」
聞き手「黒2とワタる手がありますが」
呉先生「この局面ではワタリを防ぐより黒の下辺を破ることの方が大きいです」
実戦図(74-85)
呉先生「実戦の黒75で左下隅の白に嫌味が生じました」
聞き手「手になりそうな形をしていますね。黒85では、斜め左下に両アタリがありますが」
参考図14
呉先生「85では、参考図14の1とハネるのが良かったです。白2のキリは黒5までとなって、白が支えきれません」
参考図15
呉先生「対局中先に黒1ハネは2にノビられて、将来3のキリに白4で捨てられることを嫌いましたが⋯」
聞き手「黒5と二子を取っても白6で上辺が大きくなりますか」
呉先生「黒は、△と頭を出していますし、黒Aもあって上辺の白地がまとまるのは難しそうです」
実戦図(85-93)
呉先生「実戦の92までとなってみると、白は中央にそこそこの地ができています」
聞き手「攻められるはずの中央の白が地をもってしまった」
参考図16
聞き手「黒が得たものは下辺の地ですが」
呉先生「本来はAあたりまで広げられそうでしたが、△の交換によって黒は一路下のBと広げる程度になっています」
参考図17
呉先生「振り返って、参考図13の白1が大きいと言ったのは、実戦の黒93(参考図17の黒1)オキがあるからです。参考図17の2とぶつかると以下9まで白取られます」
参考図18
聞き手「受けるとしたらどうでしょうか」
呉先生「参考図18の白2ぐらいでしょうか。黒5のワタりに手を抜くと隅があぶないので、白は6と守らざるを得ず、それから黒はAにまわることができます」
編集部注:呉柏毅先生は令和6年現在六段、49期棋聖戦Aリーグに在籍
(つづく)