姚智騰六段の心の一局(4)「激しい戦いの末に」
実戦図173-185
聞き手「173手目の時点で右上隅の死活は読めていたのですか」
姚先生「いや、そうでもなかったのですが、185とトブつもりでした」
第5譜(183-213)
洪先生「白188が敗着でAに打てばなかなか死なないので、まだ難しかったです。実戦はコウになり白が取られては黒の勝ちが決まりました」
実戦図185-189
姚先生「ここで白に勘違いがあったようで、188に189で白の難しいコウになりました」
参考図28
姚先生「参考図28の白1とトンで黒2のヌキ白3から4とツケ、5にAなら白Bで生きているので6とハネます。白はAと取ってコウになります。勝率は白70%ぐらいですがこのあともまだ難しいです」
参考図29
姚先生「白1とグズんでもコウになりますが、白が黒2をヌイた図が参考図28に比べて損をしています」
聞き手「参考図28より小さいコウダテで足りるということですね」
姚先生「コウは色々な作り方があると思うのですが、白にとって最も有利な形が参考図28だったようです」
参考図30
姚先生「白188は強い手でこの後参考図30の白1とハネダシてこのコウに勝てれば隅の黒4子をとれますから、秒読みの中では仕方のない手でした」
実戦図189-193
姚先生「193と実戦もコウですが、これは大変なコウです」
実戦図193-207
参考図31
姚先生「実戦の黒207に参考図31のように白がコウを解消すると黒2として攻め合いは黒の勝ちです」
実戦図207-213
姚先生「実戦の213まで打って勝つことができました」
聞き手「序盤からすごい戦いでしたね。111の切りはなかなか気づかない手でした」
姚先生「局後の検討でも気づかなかったと。ちょっと意表を突いた手でした」
実戦図101-107 再掲
参考図32
聞き手「実戦の白102で参考図32の白1から3とすれば冷静だったのでは」
姚先生「そうですね。しかし対局中は強気にいきたくなります」
聞き手「実戦の102からは一本道ですね。参考図19とワリコンだ後の変化はどうなりますか」
参考図33
姚先生「一例ですが参考図33のように進むことが考えられます。しかし白は断点が多く、この図はちょっと怖いかもしれません。ワリコミの勝率は50%で互角でした」
姚先生「勇気を出してワリコンでいれば、ここで決着がついたかもしれません」
参考図34
姚先生「実戦の白110で参考図34の白1という手があるにはありました。白は△の3子を捨てて冷静に打つのですが、102と打ったらこの図は選びにくいでしょう」
参考図35
聞き手「実戦の黒107で参考図35の黒1としたらどうですか」
姚先生「黒は5の左側に切れないので5とツイで白6となり、今度は中央の黒石が不安です」
姚先生「この対局の前に右下の小目からのシマリを大ゲイマにするか二間ジマリにするか勝率を調べていたのですが、大ゲイマの方が僅かですが勝率が良かったので選びました。しかしすぐ星にツケられてしまい、AIによるとこのツケで白の勝率が上がるということはなかったのですが、私自身がこの変化にあまり詳しくなかったのです。藤沢先生はさすが勉強家だけあってヒヤッとさせられました。最近は星のツケを警戒した打ち方をしています(笑)」
ハイライト
洪先生「このツケ(△)か第四譜の131のツケか悩みましたが、やはりこのツケがお気に入りです。そこに打つのか! そこから始まるのか! と思いました。勝負師にとって勝ち負けはもちろん大切ですが、人と人が創る芸術的な一手が私は好きです。智騰にはこれからもどんどんこういう手を見せて欲しいです。お願いね!
推薦図
洪先生「智騰が道場にいる頃、推薦図の白△の手を見せてくれました。善悪の判断よりもびっくりしました。『何という柔軟な考えだ』と感心した記憶があります。常識にこだわらないこの発想こそ智騰の原動力だと感じています。どんなことも同じですが、柔軟な考え方が大切だと思います。これからも斬新な手をたくさん見せて欲しいです」
洪先生「智騰が新人王戦で準決勝まで進んだことがあるので、あと少しだなと感じています。今季も期待しています。私は智騰の豊な発想力と実践的な打ち方が特徴だと思っています。常に新しい形を考え、自分だけの碁を打っているのできっと大きく開花すると信じています」