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洪道場の白黒さんぽ

一力遼竜星の心の一局(3)「気合の激突」

 第2譜

第2譜(49-100)

洪先生「柯潔九段は現在世界最強といわれる棋士です。日本トップ棋士の一力竜星との対戦だったので、とても関心が高く、囲碁・将棋チャンネルでは18時から生放送をしていました。夕方の生放送は初めてだったようです」

 

 実戦図54

実戦図49-54

一力先生「実戦は白50とオサエから白54のブツカリとなって、黒は左辺に先手で地を稼ぎましたが、その代わり白は中央に厚みを築きました。黒は多少得をしたようですが、総合的に見れば白も腹は立たない進行です。実戦ではこのあと黒は下辺にまわりましたが」

参考図35

参考図35

一力先生「実戦の黒49を打たずに参考図35の黒1かAあたりに打ったほうが、この図と実戦では左上の景色が違うので、こちらの方が良かったようです」

参考図36

参考図36

一力先生「実戦の白54で参考図36の白1と手を抜くのは、黒2とオサエられ、この後黒からAからBが厳しいので」

参考図37

参考図37

一力先生「参考図37の白3とハネ、以下黒6までとなると、左上の白は目がなく中央に逃げ出さなければならず、黒は左辺地が大きい上に左上隅の黒も目形ができて白は逃げるだけになり、白には楽しみがない局面になってしまいます。一見足が遅いように見えますが、白54は非常に重要なところです」

実戦図56

実戦図54-56

一力先生「実戦で黒は55としました。ここで白56が良い手で、AIも第一候補に挙げています」

 参考図38

参考図38

一力先生「白56は、後で実際に打ちますが、参考図38の白△とツケる手があり、また、左辺の白と下辺の白2子のちょうど中間にありバランスが良く、黒から受ける手が難しくとても良い位置でした」

参考図39

参考図39

聞き手「白56で参考図39のハサミはどうでしょうか」

一力先生「ハサミも良い手ですね。黒は2と白の上下を割かれて、黒10と中央に進出されると、最初に打った白1の得がなくなり、黒は中央も厚くなって、白はちょっと自信の持てない展開です」

参考図40

参考図40

一力先生「例えば、参考図40のように、黒を左辺にある程度制限してからなら、白6のハサミは良いでしょう」

実戦図61

実戦図56-61

一力先生「ここは難しい場面なので、一旦黒57としました。白58とツケて白60の切りは、かねてより狙いの手です」

参考図41

参考図41

参考図42

参考図42

一力先生「黒61で参考図41の黒1とこちらからアテるのは白2と切って、以下参考図42まで隅の黒2子が孤立し、この進行は流石に黒少しまずいでしょう」

実戦図65

実戦図61-65

一力先生「黒65までとなって、黒はやや利かされた感じです」

参考図43

参考図43

一力先生「黒61で参考図43の黒1と反発する手もあります」

参考図44

参考図44

一力先生「参考図43の白6のあと、参考図44のように黒1あたりに打つと白2と切られて、左辺の黒石が取られてしまいます」

参考図45

参考図45

一力先生「そこで、参考図45の黒1ツギから、白に地を与えても外側をアツくする打ち方も考えられました。実戦よりもこちらの方が少し良かったかもしれません。黒もこの図は想定していたようですが、実戦よりもやや甘いと考えたようです」

実戦図72

実戦図65-72

一力先生「左下隅を決めて、実戦の白72にスベリました。このスベリは一見大きそうではないのですが、左上の黒の目を奪いつつ白の目を補強した一石二鳥の手です」

参考図46

参考図46

一力先生「実戦の白72では、参考図46の白1と打つ手もあり、この方が良かったかもしれませんが、このときは左上の黒の目を奪う方を選択しました」

一力先生「この時点では、左下の黒をアツく抑え込むことができたので、白は悪くないなと思っていました」

実戦図74

実戦図72-74

一力先生「黒は73と下辺を詰めてきました」

 参考図47

参考図47

一力先生「ここで、例えば参考図47の白1のように手を抜くと、黒2とされて下辺が黒っぽくなってしまいますので、一度は実戦の白74と頭を出します」

実戦図80

実戦図74-80

一力先生「黒77の急所には白78として、黒79のフクラミに白は80としましたが、ここで白が…」

参考図48

参考図48

一力先生「参考図48の白1とすると、黒2から白5のような展開になり、ここまで黒が中央に対してアツくなると、右下に黒6からのデギリなど白のウスミが気になります。白1、3は価値が低いかなとみて、ここで実戦の白80と仕掛けていきました」

参考図49

参考図49

一力先生「ここで参考図49の黒1と切るのは白2、黒からここにすぐには厳しい手はありません」

聞き手「実戦で白80は、前から狙っていたのですか」

一力先生「どちらかといえば、下辺も左辺にもすぐに有効な手が思いつかなかったので、相手の出方を見るために手を渡したような意味合がありました」

参考図50

参考図50

一力先生「実戦の白80に対し参考図50の黒1とされても、以下白8までとなっては右下の黒の方が弱いでしょう」

参考図51

参考図51

一力先生「そこで黒は部分的には参考図51の黒1としますが、白4までとなって右辺の黒全体の目を狙われることになりそうです」

実戦図81

実戦図80-81

一力先生「そこで黒はこのタイミングで81と打ってきました。このあたりは早碁ならではの気合いで、お互いに自分の主張を通そうという展開です」

 

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著者略歴

  1. 洪 清泉

    1981年12月30日生 韓国済州出身
    1993~1997年 韓国棋院院生として修行
    1999,2001年 アマ国手戦優勝(韓国代表決定戦)
    2004年 鳳凰杯プロアマオープン優勝
    2007年 全日本アマチュア名人戦 優勝
    2008年 全日本アマチュア本因坊戦 優勝
    2009年 関西棋院試験碁合格 関西棋院入段
    2013年 二段
    2014年 NHK杯出場
    2015年 棋聖戦Cリーグ進出
    2016年 天元戦本戦進出
    2016年 三段
    2016年 碁聖戦本戦進出
    2017年 天元戦本戦進出
    2017年 NHK杯出場
    2018年 NHK杯出場
    2019年 四段

  2. 一力 遼

    平成9年(1997年)6月10日生
    宮城県出身
    宋 光復九段門下。
    平成22年夏季入段(平成23年度採用)
    平成24年二段、25年三段、26年四段、同年七段、29年八段
    日本棋院東京本院所属

    平成25年 棋道賞新人賞・勝率第1位賞受賞
    平成26年 第39期棋聖戦リーグ入り ☆16歳9ヵ月でのリーグ入りは史上最年少記録。リーグ入りにより七段に昇段
    平成26年 第1回グロービス杯世界囲碁U-20優勝
    平成26年 第5回おかげ杯優勝☆二連覇
    平成26年 第39期新人王戦優勝
    平成26年 棋道賞国際賞受賞
    平成27年 棋道賞国際賞受賞
    平成28年 棋道賞最多勝利賞 47勝19敗 最多対局賞 66局
    平成28年 第25期竜星戦で井山裕太棋聖を破りタイトル獲得
    平成29年 棋道賞優秀棋士賞受賞
    平成30年 第27期竜星戦優勝
    平成30年 第25期阿含桐山杯優勝
    平成31年 NHK杯優勝
    令和元年 第28期竜星戦優勝

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