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橋本美穂は「老老介護」をこう表現した!

2019年4月号から始まった連載『同時通訳者・橋本美穂の「英語にないなら作っちゃえ!」』は、読者参加型企画として、皆さんと一緒に「新しい英語」を作っていくコーナーです。

2021年4月号からは誌面もリニューアルし、橋本美穂さんの特別音声解説も付いて、さらにパワーアップしました!

5年目を迎えるこの企画、ぜひ皆さんもチャレンジしてみてください!

 

さて、今回のお題は…?

お題:「老老介護」

小川友宏さん(大阪府)
gray and old caregiver
理由:お年寄りが介護しているところをイメージしてみました。

ハリケーンさん(山口県)
longevity crisis
理由:みんなが長生きするようになった末に発生した危機と捉えました。

hamazoさん(福岡県)
eldercare by the elderly
理由:「年配者による年配者の介護」と表しました。

Kenさん(東京都)
E2E care
理由:E2Eはelderly to elderlyの略です。

Noriさん(兵庫県)
hunched-over supporter
理由:老人を「腰の曲がった」という形容詞で表現しました。

Akihiroさん(神奈川県)
Caregivers for the ripe are ripe.
理由:ripeを繰り返すことで、日本語のニュアンスを残しました。

高田と俺さん(鹿児島県)
same-generation nursing
理由:「同じ世代の介護」と考えたので。

Elfyさん(鹿児島県)
elders cared for by elders
理由:「老人による老人の介護」という表現です。

 


さて、橋本美穂さんは一体どのように「老老介護」を表現したのでしょうか?

 

私ならこうしちゃいます

 

a crutch with a cane

四字熟語って究極のインパクト・コンパクトですよね! 漢字だけで情景が想像されて伝達効率が高いのが特徴ですが、英訳は大変です。もちろん、一石二鳥(kill two birds with one stone)、試行錯誤(trial and error)など簡単なのもありますが、一念発起、我田引水など、説明的にならざるを得ないものが大多数です。

さて、「老老介護」をシンプルに訳すとelderly care provided by elderly peopleですが、このままでは会話の中で非常に使いづらいのです。「お父さんの病状が進んでしまって、もう老老介護よ」とか、「老老介護は社会問題です」といった和文を英訳してみるとわかります。

そこで、使い勝手を向上させ、a crutch with a caneという英語を作っちゃいました! まず、crutch(松葉杖)は「支え、サポート」を意味する比喩です。実は、prop(つっかえ棒)も同様なのですが、要介護者が必要としているのはつっかえ棒レベルの支えではなく医療レベルなので、病院を連想させるcrutchを選択しました。次に、with a cane(杖をついて)ですが、「介護者も杖をついている」という意味です。実際に杖をついているかどうかではなく、そういう年齢である、ということ。このフレーズが定着すれば、たとえ「老老介護問題」と漢字が6つ並んでも、“the crutch-cane issue”と一刀両断(in a single sweep)に訳せちゃいますよ~!

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著者略歴

  1. 橋本美穂

    アメリカ合衆国テキサス州ヒューストンで出生。東京都で幼少期を過ごし、6歳で再び渡米。サンフランシスコにて小学校時代を過ごし、帰国後は兵庫県神戸市で中学・高校時代を過ごす。慶應義塾大学総合政策学部卒。

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