橋本美穂は「ブラック企業」をこう表現した!
2019年4月号から始まった連載『同時通訳者・橋本美穂の「英語にないなら作っちゃえ!」』は、読者参加型企画として、皆さんと一緒に「新しい英語」を作っていくコーナーです。
2021年4月号からは誌面もリニューアルし、橋本美穂さんの特別音声解説も付いて、さらにパワーアップしました!
4年目を迎えたこの企画、ぜひ皆さんもチャレンジしてみてください!
さて、今回のお題は…?
お題:「ブラック企業」
二瓶真さん(東京都)
a modern-slavery company
理由:労働者を酷使することを端的に表現しました。
いかりんぐさん(奈良県)
hell company
理由:社員にとって地獄。気軽に使えるような単語で。
TMさん(東京都)
demanding company
理由:demanding and underpaying としたいところですが、日本語のように短くしました。
なおきまさん(埼玉県)
exploiter company
理由:長時間働かせ、搾取するイメージから。
めろんぱんさん(宮城県)
galley enterprise
理由:社員=ガレー船の漕ぎ手のイメージです。時代によっては必ずしもブラックではなかったようですが。
mulanさん(兵庫県)
a slave-holding company
理由:slave-holdingとholding companyを合わせて、奴隷を飼っている会社=ブラック企業と考えました。
しゅんさん(神奈川県)
zombie company
理由:働いている人に活気がなくなってしまっているから。
強帯さん(神奈川県)
operationally dirty firm
理由:「運営上卑劣な企業」という意味です。
さて、橋本美穂さんは一体どのように「ブラック企業」を表現したのでしょうか?
私ならこうしちゃいます
merciless.com
今月は典型的な和製英語を取り上げました! そのままblack companyと英語に置き換えたって伝わらないし、人種差別になりかねません。blacklisted company(ブラックリストに載っている企業)と訳したところで実際そんなリストが存在するわけでもなく、そこを真面目に訳しても仕方ないですしね。定番の表現にsweatshop(搾取工場)ならありますが、イメージが衣料の製造工場に偏ってしまいます。やはり誤解なくニュアンスを伝えるには、どういう職場なのかを描写するのが一番です。例えば、a workplace that forces its staff to work extremely hard but pays very littleなど。
しかし、ここからが腕の見せ所です! キーワードを1つに絞るとしたら何でしょうか? 暴力を連想させるinhumane(非人道的)、brutal (残酷)は誤解されそうです。heartless(冷酷)、cruel (非情)は人に対して使うことの方が多いです。exploitative(搾取的な)は正しいけれど、ひねりが足りない! というのも、「ブラック企業」は自虐ネタやジョークとして使われる場合が多いですよね? そこで、私はmerciless(無慈悲)という単語をスパイスにしちゃいました。末尾に.com(ドットコム)を付ければ、いかにも悪そうな社名の出来上がり! 冗談で使う分にはクスッと笑ってもらえそうです。