橋本美穂は「舌を巻く」をこう表現した!
2019年4月号から始まった連載『同時通訳者・橋本美穂の「英語にないなら作っちゃえ!」』は、読者参加型企画として、皆さんと一緒に「新しい英語」を作っていくコーナーです。
2021年4月号からは誌面もリニューアルし、橋本美穂さんの特別音声解説も付いて、さらにパワーアップしました!
5年目を迎えるこの企画、ぜひ皆さんもチャレンジしてみてください!
さて、今回のお題は…?
お題:「舌を巻く」
ハリケーンさん(山口県)
send a soundless "Bravo!"
理由:bravoはぜひ巻き舌で!
なおきまさん(東京都)
be surprised to silence
理由:感動&恐れの両方の理由で「話さなくなる」ためニュートラルにしました。
みぶさん(兵庫県)
be stunned with admiration
理由:スタンガンで電撃が走ったときの様子と誰かの行動の素晴らしさであぜんとした様子をイメージしてみました。
Ellyさん(兵庫県)
speech-frozen
理由:感動して言葉が出ない感じです。
なみさん(愛知県)
put me on mute
理由:言葉がでないくらい驚いたというニュアンスを出したくて、リモート会議でよく使う表現を使いました。
Shpookyさん(神奈川県)
flatline in admiration
理由:心臓が止まるくらいの称賛をイメージしました。
ばやしこさん(兵庫県)
wow with tongue trill
理由:驚きすぎて舌でトリルの音を出す様子をコミカルにイメージして、tongue trillを用いました。
れんこんさん(大阪府)
tongue-stuck amazed
理由:「舌が固まるほど驚く」と表現しました。
さて、橋本美穂さんは一体どのように「舌を巻く」を表現したのでしょうか?
私ならこうしちゃいます
OMTTG
ここ最近あまり聞かなくなった慣用句ですね! こういう死語の予備軍みたいな言葉に出くわすと、まるでタンスの奥から出てきた古い洋服のように、手にとって眺めてみたくなりま
す。さて、「舌を巻く」が持つ意味合いを英語で分解すると、impressed+ surprised+ speechlessでしょうか。この3つのニュアンスを1つのフレーズで表現するのは至難の業です。インパクト・コンパクトにするにはどうすりゃいいんだ? しかも、舌を巻くってホントなの?(笑)
まずは私、やってみようの精神で、舌先を奥に向けてみたり、左右を巻いてみたり、あれこれ試してみました。この状態を英語で何と表現すべきか......考えた揚げ句、今回は「舌を巻く」をあえて直訳し、tuck your tongueとしました。「巻く」という動作をrollやcurlなどで表すと、「え、どういう状態?」といらぬ反応を呼び、余計な情報がイメージに加わってしまうので、動詞はtuck(たくし込む、しまう)にしました。さらに、この古くなっちゃった慣用句を大幅アップデートするために、すっかり定着したOMG*と融合しちゃいました! こんな発想で「OMTTG」と文字列を並べれば、Oh, my tongue-tucking goodness.の出来上がり。誰でも知っているOMGの間にTTを挟むことで、リズム感よくimpressed+ surprised +speechlessを表現することができそうです!
*「何てことだ」という意味の感嘆詞Oh, my God.の略語。Oh, my goodness. またはOh, my gosh.とも言う。
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