朝日出版社メルマガ 第5号(2018/06/13発行)
朝日出版社メルマガ 第5号(2018/06/13発行)
今号のコンテンツはこちらです。
■新刊のお知らせ
■これから出る本のお知らせ
■重版出来!
■今号のイチオシ電子版
■編集部リレーコラム(第五編集部)
■編集部イベントレポート(第二編集部)
■書評掲載情報
■書店フェア、好評開催中!
■イベント情報
■あとがき(編集後記)
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■新刊のお知らせ
『神様の住所』
九螺ささら 著(6月13日発売/電子版近日配信予定)
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255010519/
『TOEIC(R)L&Rテスト YBM超実戦模試 リーディング1000問』
YBM TOEIC研究所 著(6月13日発売)
https://www.asahipress.com/bookdetail_lang/9784255010649/
■これから出る本のお知らせ
『赤毛のアン』
ルーシイ=モード=モンゴメリ 作/岸田衿子 訳/安野光雅 絵(6月20日発売予定)
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255010687/
『日・英・中 三方攻読 中国語文法ワールド 改訂版』
相原茂 監修/大茂利充 著(6月20日発売予定)
https://www.asahipress.com/bookdetail_lang/9784255010656/
■重版出来!
『小さな家のローラ』 ☆5刷!
ローラ・インガルス・ワイルダー 作/安野光雅 絵・監訳
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255009827/
『ファッションは魔法』 ☆2刷!
山縣良和+坂部三樹郎 著
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255007533/
■今号のイチオシ電子版
1年間で最も売れた「電子版」第1位の発表、その前に……。今号では次点の2作品を紹介します。
・第4位『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』
加藤陽子 著(2015年8月11日配信開始)
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255004853/
書籍発売から9年。小林秀雄賞を受賞した本書は、日清戦争から太平洋戦争まで明治以降の4つの対外戦争を通じて、日本だけでなく世界の人々がなにを考え、どのような道を選択したのか――膨大な史料の中に残されたさまざまな人の言葉をたどりながら、日本近現代史を詳しく鮮やかにひも解いていく中高生に向けた5日間の講義録です。
歴史の面白さ・迫力に圧倒されること間違いなし。終戦から73年目を迎えるこの夏の前に、ぜひ読んでおきたい超ロングセラー。文庫並みのお求めやすい価格になりました。
・第5位『[音声DL付き]カズオ・イシグロ 創作の秘密を語る(CNNEE ベスト・セレクションインタビュー19)』
CNN ENGLISH EXPRESS編集部 編(2016年10月27日配信開始)
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/25550095800000000000/
昨年10月、ノーベル文学賞を受賞し一躍時の人となった、カズオ・イシグロ氏。綾瀬はるか主演で日本でもドラマ化された『わたしを離さないで』はイギリス最高の文学賞であるブッカー賞の最終候補に選ばれ、その後10年ぶりとなった長編小説『忘れられた巨人』の邦訳刊行を期に2015年に来日した際のインタビュー記事です。
受賞と同時にアマゾンkindleのランキングも一気に上昇。生声が聴ける貴重なインタビューとして、現在も人気です。
■編集部リレーコラム(第五編集部)
第五編集部の藤川です。
今回は今年刊行予定の『おウチで俳句』についてお伝えしようと思います。
著者はバラエティ番組『プレバト!!』の俳句コーナーでおなじみの夏井いつき先生。
テレビでの「毒舌先生」による劇的添削が大人気で、俳句ブームを巻き起こしましたね。
その夏井先生が、先日、放送文化基金賞を受賞されました。
http://www.hbf.or.jp/awards/article/44_hbfprize
「『プレバト!!』にレギュラー出演し、全国的な俳句ブームを牽引」が受賞理由です。
俳句素人の私は、どうしても俳句というと、「5・7・5」で「季語」を入れなければ、とか、季節感や情緒、風流を詠うもの、とか、勝手な思い込みがありました。
もちろん、できもしないのですが……
が、現在制作中の本書のテーマは、「家から一歩も出なくても俳句は作ることができる」ということを実証する、知識ゼロから楽しめる俳句入門書。
そう、どこに居ても、いつでも、俳句はできるのです。
五感と想像力さえあれば。
本書は先生の公式ブログで一般の方から募集した句をもとに解説していくスタイルなのですが、一句一句、詠んでみると、句者の生活を覗いているかのような感覚です。
まさに、俳句は生活の詩なのだと実感しました。
「食材」「調理器具」「家事」「トイレ」「家族」「眠れぬ夜」など……
あらゆるモノ・ヒト・コトが俳句のタネになり、ありふれた日常を俳句で切り取ると、見るもの、聞くもの、触れるものが、新鮮な喜びにつながります。
たった17音の表現の中から、見い出すことができます。
家の中、同じ空間で同じ時を過ごしている家族でさえ、見える景色や思っていることはそれぞれ違っているのだと、ついつい忘れがちなことを気づかせてくれます。
ただ俳句を作って終わり、ではなく、その先、俳句を通して見える世界や、俳句の使い方や使い道までを伝える、人生の友として、傍らに置いていただけるような、1冊になることと思います。
■編集部イベントレポート(第二編集部)
こんにちは。梅雨の合間の晴れ間、いかがお過ごしでしょう。第二編集部の鈴木久仁子です。
本日は、私の編集室便りではなく、5月25日にジュンク堂書店池袋本店さんで行われた「本棚会議」の様子をお届けいたします。
本棚会議とは、ジュンク堂書店池袋本店4Fの人文書フロアで開催しているイベントで、本棚のあいだで本についての話を聞き、時には棚をまわってたくさんの本を眺めながら、著者の方とそぞろ歩くという会です。
今回は第2回の本棚会議とのこと、『先史学者プラトン』を翻訳された山本貴光さん・吉川浩満さんと、ジュンク堂書店池袋本店・人文書ご担当の井手ゆみこさんが、本棚をご案内してくださいました。
冒頭、井手さんが『先史学者プラトン』のことを、ちょっと謎につつまれた本だとおっしゃいますが、さて、どんな本棚めぐりになるのか、そのさわり部分を、ぜひどうぞ。
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255010496/
☆ ☆
井手:「本棚会議」は、いつも、当店の喫茶でやっているトークイベントとは違って、もうちょっと先生たちと近い距離で、しかも棚を見ながら、気軽にお話を聞けるというイベントです。
今回は、実際に棚をまわりながらお話いただけるということで、一般のお客様もいらっしゃるので、ゆずりあって見ていただけたらと思います。
吉川:営業時間内なので、本もご購入可能ですので。たくさん本を買いたい人はかごをお持ちになると、楽かもしれないですね。
まず、『先史学者プラトン』のことをちょっとご説明すると、プラトンという古代ギリシアの哲学者の著作を実際の考古学のいろんな案件と付き合わせていったらどんなことが見えてくるのか、っていう感じの本です。若干……なんていうか、ちょっとやばいところにも踏み込んだ、面白い本です。
山本:うん、ポイントとしては、プラトンの時代から見て、数千年前の歴史の話をプラトンが描いているということがある。それはアトランティスという帝国が出てくるお話なんですが、そのプラトンの対話篇自体が、与太話なのか、ほんとに歴史を書いてあるのか。そうした解釈もいろいろあるわけです。
この著者のメアリー・セットガストさんは、いったん、プラトンは歴史を書いてるという立場に立って検証してみましょうと提案しているのですね。で、そのときの材料は、先史時代なので、文字資料じゃなくて、考古学による物的資料なんです。それをいっぱい付き合わせて、さあ、プラトンが書いたことは物語なのか事実なのか、それを検証しようっていう内容です。
吉川:そもそも、副題の紀元前1万年―5千年っていうのが、まず、インパクトありますよね。
山本:うん。
吉川:もちろん、紀元前1万年っていう時代があったであろうことは、われわれも薄々知ってはいるんですけれども、でも、まあ、その時代にどんな文化があったのかっていうのは、じつのところわれわれはよく知らなかったりする。
なんとなくの常識だと、紀元前4千年とか、だいたい四大文明(メソポタミア文明・エジプト文明・インダス文明・黄河文明)と呼ばれるようなものが出てきたあたりから人間は人間っぽくなったみたいなイメージあると思うんですけど、じつはぜんぜん違っているという。
山本:そうね。もうひとつつけ加えるなら、先史とは歴史以前ですね。で、なにが有史で、なにが先史かという区別は、先ほども少し述べたように文字が使われていたかどうかです。これも、いろんな意見や説があるものの、一応、いまのところ、最初期の文字は、紀元前3千年ぐらいの古代メソポタミアの楔形文字ということになります。
さっき吉川くんがいった、副題の1万年から5千年とは、それより前の話です。ただし、その時代にも、なんだか文字っぽいものはあったという見解もあります。そこは今後揺れ動くかもしれません。今日のところは、とりあえず紀元前3千年ぐらいで先史と有史が区切れると仮に置いておきましょう。
吉川:あともう一個、また雑談。哲学にご興味ある方にも、プラトンっていうのはちょっと特別な哲学者です。さっき、文字以前・以降っていうのは先史時代と歴史時代を分けるメルクマールだっていう話がありましたけれど、哲学においてはプラトンが、まあ、思考における文字以前と文字以降のメルクマールといえるわけで。プラトンの師匠のソクラテスは、有名なことですけれども、文字を書き残さなかった。
山本:自分では作品を残さずに、弟子のプラトンがぜんぶ、「先生はこう言いました」というかたちで、対話篇で書き残しているんですね。といっても、その対話自体、ソクラテス先生が文字通りそう述べたのか、プラトンの創作なのかは分からないわけですけれど。
吉川:そういう意味ではけっこう、複数のレイヤーというか視点から、文字の以前と文字以降っていうのを、見られるかもしれない。
山本:そうだね。
井手:棚をまわるまえに、もうちょっとだけいいですか。ちょっと気になっていたんですけど、『先史学者プラトン』の原著というか、この本自体がどういう位置にあるのか、あとは、これを出すことになったきっかけなどを教えていただければ。ちょっと謎につつまれた本なので。
山本:そうですね。今回、訳者あとがきを入れてないので、けっこうお叱りをいただいていることもあるので、ここで弁明してから進みましょうか。著者のメアリー・セットガストさんという方は、ご自身で、なんと自称してたっけ。
吉川:インディペンデント・スカラーだね。
山本:うん、独立研究者という肩書で、つまりアカデミアなどに所属しないかたちで研究をして、ものを書いて発表するっていう方です。著作としては、今回私たちが訳した『先史学者プラトン』と、それから『ザラスシュトラが語った時代』(“When Zarathustra Spoke”)という、続編みたいなものがもう一冊。
さらに、マルセル・デュシャンがモナリザにひげを書いた、いたずらみたいな絵があるんですけど、その絵を書名に冠したモダンアートの話をした本(“Mona Lisa's Moustache: Making Sense of a Dissolving World”)がもう一冊あります。著作としては、その3冊です。翻訳はこれが初めてですね。
吉川:いいとこ突いてるっていうか、どれもおもしろそう。ザラスシュトラについての本は、ニーチェの有名な『ツァラトストラかく語りき』と対比させたうえで、『ザラスシュトラが語った時代』と、ちょっとずらしたタイトルにしてある。
山本:つまり、ザラスシュトラがいつごろの人かということを、同じように考古学的に追い詰める。この本の最後のほうも、実はそういう議論をしている。
で、『先史学者プラトン』については、私が調べた狭い範囲だけれど、専門家からも好意的な書評が複数出ていました。まあ、その……そんなに変な本ではない(笑)。
ただし、プラトンが書いた古代の戦争の話が、彼女が同書で仮説として言っているようなマドレーヌ文化(後期旧石器時代末、西ヨーロッパに広がった文化。ラスコーほか多くの洞窟芸術が作られた)の時代に起きた戦争のことなのか否かは確認のしようがない。今日の最後にもうひとつのテーマとしてその話になると思いますが、ある意味、知の限界を探るこころみでもある。
それについてせっかくなので一冊だけご紹介しますと、マーカス・デュ・ソートイという数学者が『知の果てへの旅』という本を書いておりまして、この翻訳が、新潮クレストブックスから出たばかりです。
http://www.shinchosha.co.jp/book/590146/
吉川:この階にはないですかね。あとで探してみてください。文学の棚にあるので。
山本:『知の果てへの旅』は、自然科学における知の果ての話をしています。たとえば、サイコロをふったとき、これは偶然の出来事なので、人間にはどの目が出るか、完全に当てることはできない。どうしてそうなのか、なぜこんな簡単なことを人間が予測できないのか。
この疑問に対して物理、量子論、確率統計、複雑系の理論など、いろんな角度から自然科学における知の限界をたどる。そういう旅に連れていってくれるのが、ソートイさんの本。
で、セットガストさんのこの本は、いうなれば人間の歴史についてやっている。過去、人間はいろんなことをやってきたけれど、どこまでその実像に迫れるか。過去の出来事という、知の果てに迫ろうという、そういう旅です。この2冊を並べると、またさらに面白いんじゃないかなと思います。
吉川:この本は翻訳が今年出たので、新しい本だとお考えの方もいらっしゃるかもしれなくて、そうだとしたら申し訳ないんですけど、原著の刊行は1987年です。底本にしたのは1990年の版ですけど。なので、まあ、けっこう古いっちゃあ、古い。だからそのあいだに、考古学上のいろんな発見もあったかもしれない。そこはまた、個別にキャッチアップする必要があるかな。
井手:じゃあ、さっそく棚をまわりましょう。
山本:今日は、ざっくばらんに行きましょう。もし、途中でなにかあったら、いつでもおっしゃってください。
吉川:もし購入をご検討されている本とかあったら、尋ねていただければ。「あり」とか「ありとは言えない」、とか「やれたかも委員会」みたいにお答えしますので(笑)。
https://note.mu/yoshidatakashi3/m/meb18e27a76d0
●哲学・思想棚(古代哲学/中世哲学):プラトン棚
吉川:みなさんの大好きなプラトンの棚が、こちらになります。
山本:プラトンの邦訳は、これまで角川書店と岩波書店から出ていますけれど、両方とも品切れで、古書でしか手に入らない(後で確認したら、ジュンク堂書店池袋本店には在庫稀少書の棚に岩波版『プラトン全集』が一部ありました)。近年、新しく水崎博明さんが訳した『プラトーン著作集』(櫂歌書房)が刊行されましたね。これ、ぜんぶ訳したのかな。
吉川:完結したって、月曜社の小林浩さんがおっしゃっていたよね。
https://urag.exblog.jp/d2018-04-15/
山本:いま、プラトンの著作を読もうと思ったら、この翻訳か、あとは……。
吉川:これだね。岸見一郎さん訳のプラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)。『先史学者プラトン』のいちばんのソースになっているのが、『ティマイオス』と『クリティアス』の2作品なんですよね。これをですね、大ベストセラー『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)の岸見一郎さんが翻訳された。
岸見さんは、一般読者にはアドラー心理学で有名になりましたけれど、もともとは西洋の古典ギリシア思想の研究者で、この翻訳は2015年の秋に出たばっかり。しかも、狙い澄ましたように、なぜか『ティマイオス』と『クリティアス』を翻訳した。
http://d.hatena.ne.jp/hakutakusha/20151021/1445414979
山本:そう。しかも、その2作品は、私が知る範囲では文庫版がないんだよね。プラトンの著作は、岩波文庫、ちくま学芸文庫、講談社学術文庫、光文社古典新訳文庫にけっこう入っているのに、この2作品はなぜだか入らない。まあ、中身も、他の対話編に比べると特殊なんだけれども。
吉川:ひょっとしたらアトランティスなどに対する学術系の人たちの偏見があるのかもしれない。まあ、それを打ち破ろうというのが、この『先史学者プラトン』であり、『ティマイオス/クリティアス』の翻訳だね。
山本:なにしろ宇宙開闢から、世界がどうやってできたかという天地創造の話をしちゃっている。読みようによっては、かなりオカルトな感じの内容でもある。まあ、だから、逆に面白いんだけれどね。
吉川:今日ね、ちょっと予習のために、『クリティアス/ティマイオス』版元の白澤社ブログを見てみたの。はてなブログにあってね。じつは2012年にはもう翻訳の原稿ができていたらしい。ただ、出そうとしたんだけれど、アトランティスの話は、まさに、大地震と大津波の話でしょう。
ちょっとだけ見送ろうかといっているあいだに、こんどは岸見さんが『嫌われる勇気』で大ベストセラー作家になって……みたいな感じで、二度の延期のすえにようやく出たとのこと。ほんとにお勧めですよ。『嫌われる勇気』をお読みになった方は、たぶん、このなかに5人ぐらいはいらっしゃるんじゃないかと思うんですけど、これもいいと思います。
山本:ただ、いま在庫が……。
吉川:1冊しかない。みなさんもちょっとね、ガツガツいくのはどうかなとか思っても、ここはひとつ、嫌われる勇気を発揮して、手に取っていただきたいですね。
山本:誰がうまいこと言えと(笑)。ひょっとしたら、いきなりプラトンを読むのは、ちょっと大変かなっていう方もいるかもしれない。
吉川:そうだね。
山本:なにを一緒に読むといいだろうね。
吉川:こんなこと言っちゃなんですけど、まあ、なんでもいいんですよね。ホワイトヘッド(アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド)という哲学者がですね、西洋のすべての哲学はプラトンへの脚注にすぎない、と言ったくらいで。ただ、それだとアレなんで、ちょっと絞ると。……個人的に好きなのはですね。
山本:うん、ある?
吉川:あのね、エリック・ハヴロックっていう人の『プラトン序説』(新書館)が好きで。
https://shinshokan.co.jp/book/4-403-12001-6/
山本:ああ、あれはいいね。
吉川:あるかと思ったんですけど、何年も前に品切れになってるようです。さっき山本くんが話した、先史時代と歴史時代は書きものがあるかないかで分かれるっていう話と関係するんですけど、『プラトン序説』は、まさにプラトンの時代に思考のメディアが話し言葉から書き言葉に移行したという具合に、一種のメディア論としてプラトンを読む本ですね。
山本:そうだね。
吉川:じゃあ、あれって、もうない? 岩波文庫のブラックの『プラトン入門』って、もうない?
https://www.iwanami.co.jp/book/b246885.html
山本:ああ、どうだろう。品切れになってるかな。あれは確かに入り口としてはいいよね。
吉川:まあ、……というわけで、文庫がいいかもしれないですね。
山本:そういう意味では、後で岩波文庫の棚をご覧になるといいですね。あと、ついでながら、京都大学学術出版会から出ている「西洋古典叢書」という翻訳シリーズがあります。これは古典ギリシア語とラテン語の名著を端から全部訳しましょうという、途轍もない企て。
http://www.kyoto-up.or.jp/jp/seiyokoten1.html
吉川:頭のおかしい。
山本:うん、ちょっと頭のおかしい感じの叢書ですが(笑)、既に百数十巻出ていて、全部読むのは大変なんですけど、なかには……あ、そうそう、思い出した。『プラトン哲学入門』っていう巻があって、これはけっこうお勧めの本でもあります。
http://www.kyoto-up.or.jp/book.php?isbn=9784876981809
吉川:ただね、山本くんの言うことにはちょっと気をつけないといけないところがあって、話を聞いて、お、ふつうの入門書か、なんて思って読むと痛い目に遭うかもしれませんよ。なにしろ2千年ちかく前の本だからね。
山本:そうそう(笑)。あと、これはプラトンからずれますけど、このシリーズのアテナイオスの『食卓の賢人たち』というのは非常に面白いですね。テーブルトークというか、食卓を囲んで、いろんな食材のこととか、動物のこととか、お酒のことなんかをしゃべる。たとえば、キャベジンってあるでしょう。食べ過ぎに効くのはキャベツだという話はこの中に出てきたりする(笑)。
http://www.kyoto-up.or.jp/book.php?isbn=9784876981038
吉川:そこから来ているわけね。
山本:そうそう、面白エピソードがいっぱい出てくる本で、これはお薦め。まあ、岩波文庫にも抄訳があったと思うので、まずはそちらでお試しになるといいですね。
あと、これはただのついでなんですけど、ついこの前「書物復権」という、昔出ていた本の復刊企画で、白水社の『古典ギリシャ語入門』が出ました。プラトンや、ここに並んでいる古典ギリシア語の原典は、古代ギリシア語で書かれておりまして、それを勉強したい方にうってつけの一冊です。なんとCDもついております(笑)。これはけっこうお手頃で、まずこの一冊をやっておくと取り掛かりやすいかと。
https://www.hakusuisha.co.jp/book/b357609.html
ついでながら申し上げると、ローブ古典叢書(Loeb Classical Library)というシリーズ(ハーヴァード大学出版局)がありまして、この叢書にギリシア語と英語の対訳版が入っていますので、ご興味ある方はぜひ。
http://www.hup.harvard.edu/results-list.php?author=9797
『古典ギリシャ語入門』はそこに平積みになっています。私も1冊買って帰ろう。
吉川:ちなみに、素朴な疑問なんだけど、これに入っているCDは、いちおう、復元してしゃべっているわけ? 古代ギリシア語を。
山本:そう。そこが面白くって、古代ギリシア語って朗読者の母語によって発音がちょっと違ったりするの。あとでユーチューブで、たとえば「ホメロス」と「朗読」で検索して、イギリス人が朗読しているのと、フランス人が朗読してるのと、ドイツ人、イタリア人とくらべると、発音が微妙に違っておもしろいです。
吉川:これは日本人が。
山本:そうだね、吹込みは日本の人だね。
吉川:……ほんとだ。「吹込み者」っていうクレジットがある。すごい、生まれて初めて見た。
☆ ☆
本日は、「本棚会議」の冒頭部分をお届けいたしました。
続きは、近日中、朝日出版社第二編集部ブログにて公開いたします。 http://asahi2nd.blogspot.com/
お楽しみに(す)。
★山本貴光(やまもと・たかみつ)
文筆家・ゲーム作家。1971年生まれ。コーエーにてゲーム制作に従事後、2004年よりフリーランス。著書に『文学問題(F+f)+』『「百学連環」を読む』『文体の科学』『世界が変わるプログラム入門』『コンピュータのひみつ』など。共著に『高校生のためのゲームで考える人工知能』(三宅陽一郎との共著)、『脳がわかれば心がわかるか』(吉川浩満との共著)など。「季評 文態百版」(『文藝』)、「マルジナリアでつかまえて」(『本の雑誌』)、日本経済新聞夕刊のプロムナード欄(毎週火曜日)にエッセイを連載中。
★吉川浩満(よしかわ・ひろみつ)
文筆業。1972年生まれ。国書刊行会、ヤフーを経て、現職。関心領域は哲学・科学・芸術、犬・猫・鳥、卓球、ロック、単車、デジタルガジェットなど。著書に『理不尽な進化』、共著に『脳がわかれば心がわかるか』『問題がモンダイなのだ』(山本貴光との共著)、翻訳に『マインド 心の哲学』(J・R・サール著、山本との共訳)など。7月に新刊『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』を刊行予定。
■書評掲載情報
○『火星で生きる』(TEDブックス)スティーブン・ペトラネック 著/石塚政行 訳
WEB本の雑誌「横丁カフェ」にて、梅田蔦屋書店・三砂慶明さんに「何もかもを忘れてむさぼるように読むことのできる、究極の移住ガイドブック」とご高評いただきました。
http://www.webdoku.jp/cafe/misago/20180607101348.html
■書店フェア、好評開催中!
○honto/ブックツリー~「わたし」という、実は不思議すぎる日常を文字から体感する五冊~
『神様の住所』がデビュー作となる歌人・九螺ささらさんによるお勧めの5冊。
https://honto.jp/booktree/detail_00006029.html
○『日本のヤバい女の子』(はらだ有彩 著/柏書房 刊)刊行記念ブックフェア〈役割とは何か――女性、そして男性の自由を考える〉。
くまざわ書店ペリエ千葉本店さんが企画した、出版界の有志6名による選書フェア。切り口や人の関わり方含めて、大注目です。
・くまざわ書店ペリエ千葉本店さんツイート
https://twitter.com/kumachiba0907/status/1000562847254917121
書店チェーンの枠を超えて、開催店舗が拡がっています。MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店さんでの棚展開。
https://twitter.com/asahipress_com/status/1006425352279769088
■イベント情報
○第10回「BOOK MARKET 2018」
7月28日(土)~29日(日)10時~17時
会場:台東館 6階北側会場 [〒111-0033 東京都台東区花川戸2-6-5]
日本全国の個性ゆたかな出展社が「本当に面白い本」を持ち寄る、本の産直市。10回目・10周年となる記念すべき二日間、朝日出版社もブースで皆さまのご来場をお待ちしています。
http://www.anonima-studio.com/bookmarket/index.html
○KITAKAGAYA FLEA 2018 SPRING & ASIA BOOK MARKET ★大盛況でした!
5月26日・27日と大阪で開催されたマーケットイベント。ソウルや台湾の本まわりの方々はじめ、たくさんの出会いがありました。tsugubooksさんによるレポートがとても詳細なので、ぜひご覧ください。
http://www.tsugubooks.com/entry/KITAKAGAYAFLEA2
■あとがき(編集後記)
営業部の橋本です。
ここ数週間、とても敬愛する書き手の新刊が立て続けに出て嬉しい悲鳴というか、ただただ嬉しいです。
『猫はしっぽでしゃべる』(ナナロク社刊)、著者・田尻久子さんは熊本で橙書店/orangeというお店を営みつつ、熊本発の文芸誌『アルテリ』の編集担当や随筆の新聞連載などもされています。
新刊では日々の話、お店でのさまざまな人へ本を手渡したエピソードなどが静謐な言葉で綴られていて、会話や本がめくられる情景が浮かんでくるようです。
橙書店さんには移転前・移転後と2回お伺いしたことがありますが、とっても、とっても心地のいい、それでいて刺激をたくさん受ける空間でした。熊本に行かれることがあれば、ぜひ。橙書店を目的に、熊本まで行くのもいいと思います。
昨日読み終えたのは、『市場のことば、本の声』(晶文社刊)。沖縄・那覇の公設市場向かいで「市場の古本屋ウララ」の店主を務める、宇田智子さんによるエッセイ集です。
宇田さんの文章はずっと前から大好きで、著作も、さまざまな媒体での連載も追っていました。
一番心に残っているのが、講談社PR誌『本』(末井昭さん著『自殺』が講談社エッセイ賞を受賞し、そのインタビュー記事が掲載された号でした。いま調べてみて、2014年10月号と判明)に記されていた言葉。
当時、ほんとうに感銘を受けて、いろんな人に紹介したり自分で書き写したりしていたのですが、時間が経つにつれて言葉の輪郭が薄くなってしまいもどかしく思っていました。
それが、今回の新刊156~157頁に掲載されていて、これだ、これだと旧友と再会したような気持ちに包まれました。
晶文社・担当編集の方にお許しいただいたので、3行を引用します。
“引用でも立ち読みでも、読んだ人にはいつでもいくらでも与えてくれる、言葉の気前のよさ。似合わないとも高いとも言わずに、誰にでも惜しみなくさし出されている。さびしいときもお金のないときも、本を開けばなにかを受けとれる”(「言葉のはぎれ」より)
読み終えてブックカバーを外したら、裏表紙の帯にこの文章が掲載されていて、それにも驚きました。(店頭で見つけて即レジへ持っていき、カバー掛けしてもらったので気づかなかった)
もう10年前になりますが、小社ホームページ連載「本屋さんのブックレビュー」で宇田さんに一冊の本を紹介していただいたことがありました。こちらもよろしければ、ご覧になってください。
・Vol.5『臨床瑣談』評者:ジュンク堂書店池袋本店/宇田智子さん(当時はジュンク堂さんへお勤めでした)
http://blog.asahipress.com/bookreview/2008/09/vol5-4273.html
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朝日出版社メルマガ第5号、最後まで読んでくださりありがとうございました。
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