朝日出版社メルマガ 第15号(2018/11/14発行)
朝日出版社メルマガ 第15号(2018/11/14発行)
今号のコンテンツはこちらです。
■新刊のお知らせ
■これから出る本のお知らせ
■重版出来!
■今号のイチオシ電子版
■編集部リレーコラム1(第二編集部)
■イベント情報
■編集部リレーコラム2(第五編集部)
■書評掲載・受賞情報
■あとがき(編集後記)
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■新刊のお知らせ
『夏井いつきのおウチde俳句』
夏井いつき 著(11月8日発売)
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255010878/
『好古家』
ウォルター・スコット 著/貝瀬英夫 訳(11月8日発売)
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255010861/
『予感の帝国 風間サチコ作品集』
風間サチコ 著(11月17日発売)
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255010892/
■これから出る本のお知らせ
『あしながおじさん』
谷川俊太郎 訳/安野光雅 絵/ジーン・ウェブスター 原作(12月8日発売)
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784255010908
『本の未来を探す旅 台北』
内沼晋太郎+綾女欣伸 編著/山本佳代子 写真(12月8日発売)
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784255010847
『働き、悩み、生きる 君への返信 心の?を!に変える処方箋』
鈴木一正 著(12月8日発売)
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255010915/
■重版出来!
『超辛口先生の赤ペン俳句教室』 ☆17刷!
夏井いつき 著
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255008097/
■今号のイチオシ電子版
『絵画の準備を!』
松浦寿夫/岡崎乾二郎 著(2014年8月27日配信開始)
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255003535/
芸術の秋です。フェルメール展からムンク展まで、全国各地で見どころいっぱいの美術展覧会が開催されています。
本書は、セゾン現代美術館セゾンアートプログラムから、機関誌『セゾンアートプログラム・ジャーナル SAP JOURNAL』の別冊として
2002年に刊行されたものをもとに、改訂を施し増補した決定版。
新たに対談5万字の第9章を新設、500の新注釈、掲載図版は300点を超え、ルネサンスから現代、
西洋美術から日本美術に至る広い範囲にわたり絵画の問題系を網羅した、濃厚で緻密な対談の記録となっています。
跳躍的かつ縦横無尽に語る岡崎氏に対し、冷静に着地点を探る松浦氏。
ともに実作者であり理論家であるお二人の、絵画についてのスリリングな対話集は、絵画について考えるための必携書。
美術館に行く前に読んでよし、鑑賞を終えてから読むもよし!の一冊です。
■編集部リレーコラム1(第二編集部)
こんにちは。第二編集部の鈴木久仁子です。
この間、ちょっと仕事が差し迫っていて、あまり行けていませんが、前回のメルマガからこの間、
観た映画は『焼肉ドラゴン』『グレイテスト・ショーマン』『リメンバー・ミー』です。
前回観たものとあわせて、印象的なシーンが多かったのは『ナチュラルウーマン』で、いちばん好きだったのは、
実は、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』でした。
『SUNNY』は、あの、物語や内容や展開がどうということではなくて(それは消えているかもしれません)
高校生たちを演じているみなさんを見ていると、なぜか胸にせまるものがありました。
(私より1、2年下の世代ですが)こんなだったけ…という気持ち、こんなふうに楽しかったなという気持ちと、
まぶしさみたいなものと、まあ、とにかく、みなさんがそこにいて、愛おしいなという気持ちと、
不思議な感覚を味わいました。
私が好きな池田エライザさんも、新しい魅力と迫力が身体から出ていて大活躍していました。
11月最終週の早稲田松竹には行けるといいな…。
*
11月から、ちょっとバタバタしていますが、うれしく、たのしい毎日で、
それは、やり取りしていた原稿がゲラ(本のページの状態に原稿が組み上がったもの)になったからです。
本文の組みのフォーマット(どんな書体で、何行で、何文字で、というページの設計)を、
装丁をお願いしている方につくっていただいて、それをDTPの方に組んでいただき、ゲラが出来上がります。
今回の本の装丁は、鈴木成一さんの事務所にお願いしています。
いま、作っている本は、著者が、あるテーマで、たくさんの人とお話ししている本で、文字数が多いので、
1ページにこのくらいの文字を入れたい、でも、文字の大きさはこのくらいは欲しい、
読んでいる人が一緒に話を聞いているような、話に入っていきたい気持ちになるものにしたい、
対話と、地の文が混ざっていて、その差別化をどうこう…、など、デザイナーさんにお伝えし、
本文フォーマットというものを、つくってもらいます。
デザイナーの方によっては、もちろん、こちらの希望のままではなく、
たとえば文字の級数を、希望とは違うものをご提案いただくこともあるのですが(それはそれで嬉しいです)
鈴木成一さん、事務所の岩田和美さんは、こちらの希望を完全に受けとめてくださったうえで、
予想を超えて、きれいで、すっと本の中に入っていけるような本文組みをつくってくださいます。
魔法みたいですごいなぁと、いつも思うのです。
今回の本は、自分の力不足など、原因はいろいろあるのですが、どうもスムーズに進められず、
現在も難航中ではありますが、ここがクリアできるといいな…と私は感じていることを
最後まであきらめずに、つくっていけるといいなと、心の中でお祈りしながら、著者と相談しています。
作業的なことでは、私はページ圧縮の刑を自ら受けている最中で○○○行を削っていて、でも結果的にはちょうどよくなるはず。
DTPの方に迷惑をかけてしまっていますが、DTPの越海さんという方が、100人力といいますか、すごく頼りになり心強いのです。
いま、つくっている本は、末井昭さんの『自殺会議』という本です。
先週決まった帯のコピーは、
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生きてることに意味はないかもしれないけど、
あなたが生きているだけで意味が生まれるのです。
ろくでもない世間に目を向けるより、この本に目を向けて、
バカなことを言ってると笑ってください。
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というものです。
「まえがき」から、わたしが抜粋したものを
大先輩編集者でもある、著者の末井昭さんが改訂してくれました(すみません&ありがたいです)。
それでは、また。最近はようやく天気がいいですね。あと少しの残りの秋を、気持ちよくお過ごしください。
■イベント情報
○第一回「おウチde俳句大賞」、投句募集中です。
家の中で感じたことや思ったことを、五・七・五のリズムにのせて自由に表現いただき、ふるってご応募ください。
https://www.asahipress.com/special/ouchidehaiku/
◯風間サチコ作品集『予感の帝国』刊行記念展、恵比寿「NADiff a/p/a/r/t」にて開催中です。
ドローイング作品や生原稿の展示ほか、オリジナルグッズ販売、12月1日(土)にはトークショーが予定されています。
http://www.nadiff.com/?p=11872
○「太平洋戦争開戦日に考える 天皇と戦争、歴史と文学」
奥泉光さん×加藤 陽子さんトークイベント、12月8日(土)にジュンク堂書店池袋本店さんにて開催されます。
https://honto.jp/store/news/detail_041000029365.html?shgcd=HB300
○「本をつくるしごと、本を届けるしごと」『本を贈る』(三輪舎刊)発売記念
夏葉社・島田潤一郎さん×朝日出版社・橋本亮二トークイベント、11月27日(火)にHMV&BOOKS SHIBUYAさんにて開催されます。
https://www.hmv.co.jp/store/event/35774/
■編集部リレーコラム2(第五編集部)
第五編集部の仁藤です。前回、中上健次氏との読書会のことを書いたが、
もう少し詳しくその経緯を綴ってみたい。
1983年10月、東京堂書店が文化サロン開設一周年を記念して企画した『エスパース・デポック』の講師として中上氏が起用された。
講座は後に『現代小説の方法』という本に収められる。
最終講義の日、氏は「この講座の後は希望者がいれば読書会をやる」。
そして、第1回目はフォークナーの「エミリーに薔薇を」するとも宣言された。
ほぼ1月後、中野区役所にあった教室を借り、読書会がスタートした。
氏は、バリからスケジュールを一日早め、教室にやってきた。
集まった全員分のバンダナをバリ土産だといってみんなに買ってきてくださった。
2回目以降は、新宿の沖縄料理屋『西武門(にしんじょう)』で行われた。
ゲストとしては、柄谷行人氏、つかこうへい氏、野谷文昭氏、リービ英雄氏などがいらした。
その後、読書会の仲間と紀州に行った時など、海沿いの中上氏の住いに泊めていただいたこともあった。
暴走族の連中を集めバーベキューパーティをし、その足で山奥まで氏のムスタングと
かなりの台数の車で行き、真っ暗な川でアユ突きをしたこともあった。
この時はさすがに命の危険を感じた。
また、中上氏から突然、ファクシミリが自宅に送られてきたことがあった。
フランスの出版社が自分の本をフランスで出したいといっている。
原文を送るから、訳はおまえがしろというものだった。その時は必死で訳して氏のところに送った。
また、熊野大学をやるから、おまえが東京の広報部長になれとも言われた。
読書会の『ゴドーを待ちながら』の時は、ヴィトシュタインの言語哲学でベケットを
読み解いたら、おまえは評論を書けと言われたこともあった。
佐藤春夫の時は、いきなり「この詩をお前が読め」と言われた。
感傷風景
あなたとわたしは向ひあって腰をかけ、
あなたはまぶしげに西の方の山をのぞみ、
わたしはうっとりと東の方の海をうかがひ、
然しふたりはにこにこして同じ思ひを樂しむ。
とありし日のとある家の明るいバルコン。
何も知らない家の主人にはよき風景をほめ、
ふたりはちらちらとお互の目のなかを樂しむ。
戀人の目よそれはまあ何といふ美しい宇宙だろう。
全くあなたのその目ほどの眺めも花もどこにあろう…
おお、思ひ出すまい。ふたりは庭のコスモスより弱く、
幸福は卓上につと消えた鳥かげよりも淡く儚く、
嘆きは永く心に建てられた。あの新築の山荘のやうに
朝日出版社には、中上健次氏の本では『都はるみに捧げる―芸能原論』(週刊本16)
と
『君は弥生人か縄文人か―梅原日本学講義』(LECTURE BOOKS 4期2)があった。
紀州で泊めていただいた際、何か面白い本がないかと言われ、
たまたま読んでいたミシェル・ビュトールの『中心と不在のあいだ―都市と世界と』(エピステーメー叢書)を
差し上げたことがあった。その時、朝日出版社は私にとっての憧れの出版社だった。
1984年の東京堂書店の『エスパース・デポック図書館vol.1』
「中上健次氏の本棚―物語/反物語をめぐる150冊」に、
中上氏はドゥルーズ=ガタリ『リゾーム』(「エピステーメー」1977年10月臨時増刊)を入れてくださっている。
先日、ライゾマティクスの齋藤精一氏にお目にかかった際、氏も『リゾーム』にとても影響を受けたとおっしゃっておられた。
1976年、『千のプラトー』の序文となる前に、素晴らしいテキストとして織り上げられた『リゾーム』を、
あらたに編集し刊行できないものかと考えている。
■書評掲載・受賞情報
○『神様の住所』(九螺ささら 著)
第28回 Bunkamuraドゥマゴ文学賞授賞式が11月12日に開催されました。
http://www.bunkamura.co.jp/bungaku/winners/28.html
○「本屋さんのブックレビュー」
MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店・河野瑠璃さんに『自殺』(末井昭 著)をレビューいただきました。
http://blog.asahipress.com/bookreview/2018/10/ma-b3b8.html
■あとがき(編集後記)
営業部の橋本です。
一昨日、第28回Bunkamuraドゥマゴ文学賞授賞式が開催され、受賞版元として、まばゆい場に居合わせることができました。
受賞作は『神様の住所』、歌人・九螺ささらさんの初の著作です。
授賞式に先立ち、選考委員の大竹昭子さんとの対談が行われ、とても強く心に残る言葉がいくつも交わされました。
なかでも印象的だったのが、「言葉にならない、というのは敗北宣言になるのであらゆる手段で、方法で、言葉にしてみせる」
という大意をおふたりがおっしゃったこと。
まさに、そうだよなと唇をかみしめながら、ひとつの作品のことを思っていました。
『新潮』12月号に掲載された、岸政彦さん著「図書室」のことです。
「ビニール傘」「背中の月」以来、三作目となる小説。
夢中で頁をめくって、読了してからしばらく、短くない時間、茫然としてしまいました。
読み終えた瞬間は、ほんとうに言葉にならなかった。
言葉にしたくなかった、陳腐化したくなかったというのが正確かもしれません。
でも、少しずつでも言葉にしたい。この作品から自分が受け取ったものを、自分なりの言葉にしたいと強く思っています。
九螺さんと大竹さんのお話を聞きながら、ずっと頭の中をめぐっていました。
* * *
朝日出版社メルマガ第15号、最後まで読んでくださりありがとうございました。
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