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朝日出版社メルマガ 第37号(2019/10/16発行)

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朝日出版メルマガ 第37号(2019/10/16発行)


今号のコンテンツはこちらです。

■新刊のお知らせ
■今号のイチオシ電子版
■編集部リレーコラム1(第二編集部)
■イベント情報
■編集部リレーコラム2(第五編集部)
■Webマガジン「あさひてらす」
■あとがき(編集後記)

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■新刊のお知らせ

『公の時代』
卯城竜太(Chim↑Pom)+松田修 著
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255011356/

『CNNニュース・リスニング 2019[秋冬]』
「CNN ENGLISH EXPRESS」編集部 編
https://www.asahipress.com/bookdetail_lang/9784255011370/


■今号のイチオシ電子版

『銀の匙』
中勘助・作 / 安野光雅・絵(2019年10月3日配信開始)
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255011271/

灘校で50年間国語を教えた橋本武氏(1912~2013)は、
中勘助の『銀の匙』を中学校3年間かけて読み解くというユニークな授業で一躍有名となった人物。

文部省検定の教科書は一度も使用しなかったという。
彼はなぜ『銀の匙』を教材に選んだのか――。

その理由は、主人公が十代の少年であり、生徒たちが自分を重ね合わせて読みやすいこと、
夏目漱石が激賞したほど日本語が美しいこと、明治期の日本を緻密に描いており、
時代や風俗考証の対象になりやすいからだったという。

橋本自身が中学生だったとき国語の授業で何を教わったのだろうかと自問したときに、
何も答えられないことに愕然とし、何か一つでもいいから子どもたちの心に生涯残るような授業をしたいと思ったのがきっかけだった

『銀の匙』は、古い茶箪笥の抽匣から銀の匙を見つけたことから始まる、
伯母の愛情に包まれて過ごした幼少期の日々を綴った中勘助の自伝的作品。

本書は、『中勘助全集 第一巻』(岩波書店、1989年)、および岩波文庫を底本として
「本だけは子どものころの続きだった。はるかむかしのことになった今でも、おもいだすのはきのうのことではなく、少年時代のことである」
と言わしめた安野光雅氏が、自らの幼少期の思い出と少年の目でとらえた美しい世界を絵で表現し、日本文学の不朽の名作に彩りを与えた一冊。

情感豊かに描きだされた子どもの内面世界は、誰しもの心にある郷愁、幼き日のさまざまな感情を思い起こさせるにちがいない。


■編集部リレーコラム1(第二編集部)

こんにちは。第二編集部の大槻です。
台風、ほんとに大変でしたね。私の実家は荒川から歩いて10分ぐらいのところにあります。
母が翌日見に行ったらゴルフ場とか野球場とかみんな沈んでいたみたいです。

金曜日に、稲葉振一郎さんと吉川浩満さんの対談イベントに行き、台風のあいだ、
NHKの中継を聞きながら、ずっと 稲葉振一郎さんの『AI時代の労働の哲学』を読んでました。
そのことをちょっと書こうかなと思ったのですが、時間がないので次回にします。
今回は、さいきん読んで面白かった本を2冊紹介します。

(1)『窓ぎわのトットちゃん』ほか、黒柳徹子さんの本

『窓ぎわのトットちゃん』は、大ベストセラーですので、いまさら
説明するまでもないと思いますが、まぁ、びっくりするので読んでみてください。
小学1年生のときのできごとを、よくこんなに細かく、鮮やかに、心の動きまで一緒に、
覚えているなぁって舌を巻きます。
ふつうは忘れてしまうような子供時代の感受性が、
イントリンシックに(=内側から)描かれているのです。

昔、大島弓子の漫画で、「この思い出だけで生きていけるわ」っていうセリフが
あったのを覚えてるんですけど(どの話でしたっけ? 失念)、
そこに通った子供にとって、「この思い出があるだけで生きていける」ような、
そんな学校が、第二次大戦のおわり間際まで自由が丘に実在した。

「アメリカ人は、鬼!」と教えられていた時代に、
「美しいは、ビューティフル!」と叫んでいた小さな学校。
そのかけがえのなさを知っている、大人の視点も同時に書いてあるのが、一層すごい。
つまり、子供の眼で見ると同時に、ちょっと外からトットちゃんを見てるところに、
ユーモアや、せつなさが宿っているのです。

その後、黒柳さんがNHKの専属テレビ俳優一期生になって活躍するまでを描いた
『トットチャンネル』、芸能界での交流をつづった『トットひとり』なども、

☆「徹子の部屋」25周年でゲストに呼んだ、88歳の森繁さん、もう、
耳もよく聞こえないし、集中ももたない、 森繁さんが、黒柳さんの言葉に応じて、
ろうろうと萩原朔太郎の詩を暗唱しはじめるところーー

☆テレビをお休みして38歳でアメリカにわたった黒柳さんが、演劇のクラスに通う中で、
「修練と勇気」さえあればいいんだ、と吹っ切れるところーー
(マリア・カラスは「人生は修練と勇気、あとは全部ゴミ!」と言った、と書いてある。)

など、一度聞いたら忘れられない話がたくさん出てきます。

それで、はじめて知ったけど、黒柳徹子さんのタマネギヘアの中には、
飴玉が入っていて、ときどき通りがかりの子供にあげたりしてるらしいです。
すごい。

***

(2)カルロ・ロヴェッリ『時間は存在しない』

これも、世界的ベストセラーとのことなので、説明不要だとは思うのですが、
なにしろみじかくて読みやすいのがいい。

個人的に面白かった点(※文系ド素人の感想です):

・エントロピーが低い状態が「特別だ」と感じるのは、宇宙を近似的なぼんやりした
 目線で眺めたときだけ。過去と未来が違うのは、私たちの目がぼんやりしてるせいだ。
 (マクスウェルの悪魔はすごく目がいいので、エントロピー低くできるし
 過去と未来が同じってことですか?)

・「存在」はやっかいな言葉であり、この世の原理に含まれないが“存在”するもの
 (=ただ「生じる」にすぎないもの)はたくさんある。時間はその一つ。
 同様の例として、「猫は宇宙の基本的な素材に含まれていない」
 「サッカーの試合の“チーム”は手続きによって生じるもの」「大理石のテーブルも
 私たちが原子レベルに縮めば雲のように見えるはず」など挙げられる例が秀逸。

・量子力学の「ぼやけ」も、私たちにとって時間が生じる所以。
 「時とは、無知なり」。
 (たしかに「観測」って、過去未来がはっきりする感じがする…。
  えっ、じゃあマクスウェルの悪魔にとっても、時間はやっぱりあるということ…?)

・私たちが過去を認識するのは過去の痕跡が残るからだが、
 「痕跡が残る」のは、何かが止まり、エネルギーが熱へと劣化するときに限って起こる。
 コンピュータは熱をもち、エンピツと消しゴムは摩擦で紙の温度を少し上げる。
 熱が存在しない世界では、すべてがしなやかにはずみ、なんの痕跡も残らない。

カルロ・ロヴェッリさんの本は、ときどき、エモいことが書いてあるところが好きです。

「喉がからからだったわたしは、二人のアイデアのなかに、新鮮な水、
 澄んだ新しい飲み水を見つけた。ありがとう、ジョン、ありがとう、プライス。
 人間は、感情と考えを糧に生きている。(…)
 わたしたちは、一生のうちの数日といった時間や、自分たちが歩き回る
 数平方メートルの空間をはるかに超えた広大なネットワークの一部であり、
 この本も、そのネットワークに織り込まれた一本の糸なのだ。」(p.212)

というところとか。

全卓樹先生の「南国科学通信」の連載が、本になります。
(現在の仮タイトルは、『銀河の片隅で科学夜話』というものです。いかがでしょうか)
そこに、エントロピーのお話も一つ、入るので、どうぞお楽しみに! 


■イベント情報

○「BOOK MARKET in きたもと」(埼玉)
10月20日(日)、埼玉・北本にて開催! 朝日出版も出店します!
https://www.anonima-studio.com/events/news-20191001/

○「円頓寺 本のさんぽみち」(名古屋)
10月26日(土)・27日(日)、名古屋で最も古い商店街の一つ、円頓寺商店街が「本の商店街」になります。
昨年に続き、朝日出版も両日ブース出店します!
https://hon3pomichi.localinfo.jp/


■編集部リレーコラム2(第五編集部)

5編の平野です。

最近、ネット記事の下などに表示される広告で鶏の頭とか蛙の脚(どちらも生肉)とか、
視界に入ると無視しきれない商品がレコメンドされるようになってしまいました…。
別に珍味食材を購入したこともないのにです。

新卒で入した会社で一時期、広告営業をしていたことがあり、そのときのトラウマで
広告というものがあまり好きではないというのもあるんですが、関係ないオススメは
気が散りすぎるので、心からやめてほしいです。
(かなり関係ありませんが、世界最古の広告はエジプトの遺跡から発見された売春宿のありかを示したものらしいです)

台風で日本中がゆれた12日(土)は赤木和重研究室が主催してくださり、
神戸大学で『まともがゆれる』の木ノ戸さんトークが行われる予定だったので、
メルマガではそのことを報告しようっと!と思っていたのですが
「延期」という英断が下り東京で過ごしました。
(イベントは2月8日に行われるそうなので、そのときまで明石焼と神戸牛は封印しておきます。みなさん神戸でお会いしましょう・・!)

わが家の台風対策は、土嚢とか窓ダンボールとかではなく、外に出られない丸一日、
息子(2歳9ヶ月)とどうやって過ごすかというのがメインでした
ブロックも電車遊びも一通りやり尽くしたので、『昆虫図鑑』を頭からじっくり見ることにしました。

図鑑は原始的な昆虫から順に載っています。トンボ、カマキリ、カブト虫。蝶のページに到達すると、多種多様な卵。
ゴルフボール型だったり扁平だったり、たくさんあるねと見ていると「なんでー?」と息子。
たしかに…なんでだろ? ネットで調べてみても、ちゃんとした答えが見つかりません。

近いかなという答えはこちら。「石川県ふれあい昆虫館」のQ&Aコーナーに
「なんでチョウのしゅるいがいっぱいあるの?」という子どもからの質問があり、
職員が「地球には暑い寒い、山、草地、など、いろいろな環境があります。
チョウだけではなく生物は、いろいろな環境で生活できるように、姿を変えました。
そのため、いろいろな環境に合ったたくさんの種類の生物がいます
種類が多いのは、地球にいろいろな環境があるからです。」と回答しています。
http://www.furekon.jp/faq.html

それでも、それぞれの卵がなぜこの形になったのかという質問の回答にはなっていない気がするので、
もう少し調べてみたいと思います。

まだ自分で物を調べられない幼児の素朴な疑問を解決するのはけっこう大変、という学びを得た一日でした。

ちなみにダンゴムシは丸まるが、ゾウリムシは丸まらない。
この違いは足の速さにあるそうです。ダンゴムシは足が遅いので、敵から身を守るために丸まる必要がある。
それを知ってダンゴムシかわいい守りたいわ、という気持ちになってしまっています。

このメルマガ、一体誰が読んでるんだろう?と思いながらやっていたのですが、
なんと友人(1人)が読んでいることが発覚!(ゆりあ様、見てる~?)
身近に読者を発見したので、これからその感想を試金石に頑張ります。


■Webマガジン「あさひてらす」

朝日出版の Web マガジン「あさひてらす」は、 いま話題のテーマ、エッセイ、小説などをお届けします。
https://webzine.asahipress.com/

・出張版 桒原駿の備忘録 昇段を決めた一局(2)
https://webzine.asahipress.com/posts/2531
・同時通訳者 橋本美穂の英語にないなら作っちゃえ!/「逆ギレ」はどう表現する?
https://webzine.asahipress.com/posts/2631
・中国文字謎 入門講座/ボクになくてキミにある
https://webzine.asahipress.com/posts/2484
・16の書店主たちのはなし/ビジネス 専門書店「つばめブックセラーズ」の店主のはなし
https://webzine.asahipress.com/posts/2548


■あとがき(編集後記)

営業部の橋本です。

先日、『つつんで、ひらいて』という映画の試写を観てきました。
文芸書を中心に、1万5千冊以上のブックデザインを手掛けてきた
まさしく稀代の装幀家・菊地信義さんのドキュメンタリーです。

開始前に監督の広瀬奈々子さんがあいさつをしていたのですが、
とても小柄で凛とした印象を受けました。
本年1月に公開された『夜明け』(柳楽優弥さんと小林薫さんが主演)で
デビューを果たした、注目の映画監督。

『つつんで、ひらいて』は菊地さんの仕事場から編集者との打ち合わせ、余暇の時間、
印刷・製本現場の立ち会いまで、よくぞここまでと思うほどの密着取材で
あっという間の90分超でした。

「拵える」「こしらえる」「こさえる」
「他者があってのデザイン」「他者がないと人は存在しない」

など、心に深く刻まれる言葉や、菊地さんの眼差しが強烈な印象を残しました。

本に携わる人はもちろん、ものづくりや小売り関連の人たち、ドキュメンタリー好きまで
広くお勧めしたいです。
12月上旬より東京のシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開されるようなので、
皆さまぜひ。
https://natalie.mu/eiga/news/349265

 * * *

朝日出版メルマガ第37号、最後まで読んでくださりありがとうございました。
ご意見やご感想などお寄せいただけると励みになりますので、よろしければ以下アドレスまでお願いいたします。
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