薫風の詩たち(21年6月)
先月から投稿を開始しました「あさひてらすの詩のてらす」、今月より投稿作品を掲載いたします。
今月はご投稿いただいた中から、5作品をご掲載。粒揃いの作品たちです。
皆さまからの作品のご投稿もお待ちしております。詳しくはこちらから。
|薫風の詩たち
残り
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詩情の定め
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空の向こうへ
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今を⽣きよ 年寄りよ
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空中で
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|世話人からの講評
・千石英世より
残り
タイトルと第3連の4,5行目の関連がくっきりとしてしていて、印象的です。何か重いものを担った二人がいて、互いに声がでない情況、しかし、声にならない「誓い」は共有されいる、共有された、「誓い」が「残った」。ここに救いを感じます。身を切る思いも、情況も感じます。しみて来ます。
詩情の定め
前作と連作的な一編ですね。「あの日 洗濯機は音をたてて/急に黙りこんだ/シャツや靴下を濡らしたまま」この具体性、素晴らしいと思いました。「冷たい桃には/齧った跡が残っていた」本作ではここに救いを感じます。「齧った」が前作の「誓った」に通じるのだと解しました。タイトルを、具体的な方面に探るのもありでは? これは私の好みを言っているにすぎないですが、、、。
空の向こうへ
第1連、第2連、好きです。第5連、「⻘は虹の向こうでさらに⻘くなると言う」ここも美しい行と思います。「さらに青くなる」と言い切るのはどうですか。でも、これ、私の勝手な間違った感想かもしれません。このままでかえってこの作の思弁性がそなわり、十分伝わってくるのですから。
今を生きよ 年寄りよ
良い詩だというしかない。真っ直ぐで率直で、比喩も効いている。題材もイキが良い。1行目、自分の内面に向かって真っすぐ微苦笑させていただきました。タイトル、「今を生きよ」か「年寄りよ」のどっちか単独ではどうでしょう。いや、余計な感想です。これでいいのだと思います。朗読に適した作ではないかと思いました。そう思うとこのタイトルでいいのだ、と。
空中で
軽々としていて、しかし、悲しい詩。「春」なんだ、春なんだ、春はこのようにカルミを帯びて「空中で」残酷なんだ、と思わせられました。外部世界の捉え方が冴え冴えとしていて「枕草子」的風味を連想します。素晴らしい!
・平石貴樹より
読ませていただきました。「残り」「空の向こうへ」「空中で」が印象に残りました。言葉もととのっていると思います。今の若い人たちは鳥になりたいのだなあ、ということがわかって悲しい後味も残りました。
・渡辺信二より
5篇、拝見。昨今、環境問題が喧しいですが、空はいつまで青いのでしょうか。それでも、上田敏訳「山のあなた」を出すまでもなく、自然の一つである空は、今回の投稿作品でも、彼方であり、気象であり、空気であり、景色であり、なお、冀うべき対象として詩的想像力を刺激します。願わくば、人間のためにも、空は、月や星を擁して、なお、希望でありますように。
挿画:鈴木順三(@pop.suzuki)