騒がしい夏のはじまりに届いた詩 後編(22年8月)
「騒がしい夏のはじまりに届いた詩」の後編です。前編はこちらから。
騒がしい夏のはじまりに届いた詩 後編 ・「つながり」 ・ 「洗濯機」 ・僕の旅 |
「つながり」 葉っぱ
うまくいかないことばかり 時が戻ればと願ったり いつ終わるのかな……。 暗いニュースや悲しいニュース、 先がまったく見えない不安な時代 誰のせいにもできなくて どうやったら抜け出せるのだろう この無限ループから
きっとね ほんの小さなきっかけ 道端の花がかわいかったり アイスがおいしかったり 好きなものを見たり聴いたり
それを思いっきり抱きしめて 大切に大事になでて守って 小さな幸せを積み重ねていくんだ 逆境があればあるほど強くなってやる
だけど疲れたら休んでね 心は壊れやすいから プチプチで包んで保護してあげよう
それでも、 ボロボロでも立ち向かわなくちゃいけない時は みんながいる みんな何かと戦っている そしたら背中を押してもらえる気がするんだ
みんなと生きていこう 一人じゃないよ みんな戦士 かっこいい
見えないけど会ったこともないけれど つながってる 確かに感じるんだ 一生懸命なみんなに勇気をもらったよ 私にはみんながついている 「大丈夫、歩き出してみるよ」 |
「洗濯機」 雪藤カイコ
できの悪い洗濯機 部屋の端でエラー音を出して泣いている 相手にされなくて寂しいようだ 優しくすると図に乗って 厳しくしても図に乗って どっちみち図に乗るなら楽しい方がいい
たまに向き合って話し合う ドラムの口調や瞳がクルクル回る 洗濯ネットといつも喧嘩して困らせる 仲裁に入るとすぐに機嫌がよくなる いつか仲良くできる日がくるといいな
実は大切な洗濯機 君がいなければ生活ができない コインランドリーに通えない体 エラー音を出しているのは私も同じ 回転する速度に落ちつきを感じるのは 機械だからかもしれない 離れてしまった 家族や友人といったものからこんなにも 離れてしまった いつか仲良くできる日がくるといいな |
僕の旅 そら
そうして僕は旅に出る どうしても、こうしても とにかく旅に出たいんだ 何が僕を突き動かしてるのか そのうちそれがわかるだろう いつまでもわからないかもしれないけれど 大事なのは、今このとき この気持ち 周りの心配 僕だって不安だ ここにいると、頭で考えるばかりで頭ん中ヒートアップしてしまう 兎にも角にも外に出て 誰も知らない場所に行って 見たことない景色 今までと違う空気 ワクワク ドキドキ ハラハラ とにかく居場所を変えたいんだ そんなこと君も思うかい? でも、きっと旅は一人がいいだろう 一人だから起きること 一人だから出会う人 そりゃあこわいけど、自分のことを自分で全部引き受けたいんだ 準備なんてもうそこそこにして とにかくここにいちゃダメだって、僕の身体が言ってる 行き先はわからない どれだけかかるかもわからない でも、いつかちゃんと帰ってくるよ 僕が僕に納得したら そして、また何度でも旅に出る |
|世話人からの講評
・千石英世より
「つながり」
いいですね。ソングになってますね。デュオでやるソングでしょうか。そんな気もします。サビのところで顔を見合わせてくちびる引き締めて、目チカラいれて、それでいて暑苦しくならないようにさらっとながしていくような。
「洗濯機」
良いと思います。とても。ストレートで、なのに比喩が迫ってきて、切実さがあって。
僕の旅
月日は百代の過客にして行き交う歳もまた旅人なり、松尾芭蕉の文句ですが(細かいところまちがっているかも、記憶で言ってます)、旅と詩は切っても切り離せない関係だと思います。旅にでて詩を書く旅に出て詩を書く。家から駅まで歩くのすら旅である、それを詩にすれば駅への往復も旅になる。その旅人にいつもついてきてくるものがいる。影だ。影がいつもついてくる。ということは詩とは、この影のことなのだ。
・平石貴樹より
「つながり」
ちょっと結論を急ぎすぎたかな。
「洗濯機」
いいですね。詩のことばの効用を感じます。
僕の旅
立派なフォークソングになっていると思います。
・渡辺信二より
「つながり」
★こういう気持ちは大事ですね。大事なのですが、答えを書いてしまうと、どうなんだろう。
「洗濯機」
★「私」と洗濯機の関係をどう読んでいいのか、読者は、戸惑うかもしれない。具体的には、第2連で「(洗濯機と)いつか仲良くできる日がくるといいな」と願っているので、最後の4行をもとにして、「洗濯機」=「離れてしまった家族や友人」なのだろうか、と思うが、しかしその反面、「エラー音を出しているのは私も同じ」なので、「洗濯機」=「私」なのかとも思う。
僕の旅
「旅」を題材に、連作できそうな可能性があります。
以下、質問でコメントに変えますが、回答を求めているわけではありません。次回の新作で応えてもらえると良い。
1)この作品における「旅」とは何か?
2)「とにかく居場所を変え」ることで、予測される学びは何か?
3)「僕が僕に納得したら」帰ってくるというが、何が納得なのだろうか。せめてこの作品の中に、ヒントはあるのか?
また、なぜ「また何度でも旅に出る」のか? 納得して戻ってきたのなら、出なくてもいいのではないのか?
なお、3-4行目の「そのうちそれがわかるだろう/いつまでもわからないかもしれないけれど」は、必要なのか? 何か、初めから、言い訳しているように思えるが。