余寒に響き渡る50篇の詩 前編(25年2月)
引き続き冷たい風が吹き荒れる日々が続いているこの頃ですが、2月分の投稿作品を「余寒に響き渡る50篇の詩 」としてお届けいたします。
今回は若い方からの投稿が非常に多い回となりました。作品を読ませていただいていると、どんな人も誰しもかつては詩人だったのではないかと感じます。作品だけでなくペンネームも多種多様。なんとはなしに、「こんな名前にしたほうが良いのでは?」と思ってしまうこともありましたが、これはきっと老婆心に違いありません。
改稿作品を含む全50篇、前後編で掲載いたします。ご一読ください。
余寒に響き渡る50篇の詩 前編 ・雪のひとひら ・脳が嘘をついた ・オレンジ気分 ・2月の雪 ・人生 ・空虚 ・夕焼けの空に ・ありがとう ・ゴッホのひまわり ・自由の重さ ・ヒマワリ ・灰色の生活、かすかな希望 ・私色 ・めんどうくさい ・つながりの音 ・デジタルの窓 ・近鉄 ・無力な私 ・レスロンリー ・不安と孤独 ・自然の音 ・ときめき ・本当にたいせつなもの ・空気 ・地球地球 ・消えた温もり |
雪のひとひら 草笛螢夢
公園のベンチに 淋しく舞い落ちる 雪のひとひら
山深い紅葉の葉っぱが 落ち切った木の枝に 雪のひとひら
滝に水が流れ 水が落ちる滝つぼに 雪のひとひら
小川の潺に 積もった紅葉に 雪のひとひら
春を迎えるために 暖かい紅葉の絨毯の上に 雪のひとひら
見上げた空は雲に覆われ あなたのことを思いながら 雪のひとひら |
南野 すみれ 脳が嘘をついた
心はいやだと言っているのに 良い人のふりをして あなたが希む返事をした 脳が嘘をついた
心は正直者だから 嘘つき脳を 棄てた ひと晩かけて空にした 目覚めると 体が空っぽになっている 皮膚だけが残って「私」を形作っている
掌で頬をさわる 膨らんだ風船のようで 肉も感じなければ熱もない 歩くと足は地面にふれるが 重さがないので 少し浮いて進んでいく スイッと蹴ると 風に乗って空に上がった 久しぶりの青空が山の稜線をくっきり見せている
自由になった と叫んだが 唇だけが動いて 声がない 脳がないので 驚かない 泣いているのに 涙がない
|
オレンジ気分 鏡文志
大丈夫だよ 辛かったんだね 寂しかったんだね たんぽぽの綿毛舞う、日曜 悲しみも喜びも、幾歳月 暗がりの中にいる心配も、光の中の安心も 迷わず全部受け止めて、大丈夫だから 大丈夫だよ 雑踏の中一人、助けを求めていたんだね アイスクリーム頬張る 午後の散歩時 誘惑も微睡も、幾十夜 幻想の中の昂りも 現実という、冷たいシャワーも 全部『あした』という海に呑まれていく 大丈夫だから 大丈夫だよ 残酷な思い胸に抱え、不埒と真剣の間で思い悩んでいたんだね 人はいつか死ぬというこの現実 愛情も憎しみも 幾年月 人混みの中で消えていく自分も 主人公としての葛藤と、後ろめたさも 歴史が作ったフィクションの中に包み込まれていく 大丈夫だから |
2月の雪 倉橋 謙介
あとほんの少し 届かなかった右手を こたつの上から戻しながら そのまま寝っ転がって 膨れっ面な大雪が 窓の外で降るのを ただみていた テレビのリモコンは 起き上がりさえすれば すぐに取れるんだけど 遠ざかった春はね" |
人生 赤くないポスト
朝の時の流れははやい 文明の発達ははやい 夏雲の動きははやい
机の上にたまっていくタスク せまりくる切迫感の中 私たちは生きている
せっかちに進む時に 合わせる必要なんかない たまには自分らしく時を進めよう
時は金なり あなたはどう生きる いまこの瞬間を |
空虚 栃木の塩化水素
家族がいる 友達がいる 親戚がいる
けれど何かが足りない 探しても見つからないナニカ 何を得ても埋まらない
優越感、劣等感、嫌悪感 どれも埋まらない くだらない
スクリーン越しに伝える偽りの愛 建前 思ってもいない無感情のコトバ
本音も言えないこの世界で 嘘だらけのこの世界で 無感情のこの世界で
忘れているのは人の情 いつか来るから よみがえるとき" |
夕暮れの空に 槻結糸
冬の夕暮れの あの重い空 容赦のない日の終わり方 私を今日に置いてきぼりにし 明日への繋ぎを無情に断つ 私は蹲る
それでも明日は今日となり姿を現す 又 あの夕暮れの時がくる 繰り返されるうち 夕暮れの空が山際に長く残り 一日がゆっくりと終えるようになる
空は今日を明日へと繋ぐ
私は空を見る 明日に私が居なくても
私は大丈夫 |
ありがとう 小村咲
着地点が見つからないまま 言葉のチェーンを繋げてゆく 時をひとつふたつ 塊にして 何処かへ置き忘れてきたような つま先で曲がり角を探るような 行き先を一カ所2カ所 思い出にして 振り出しに戻れないまま いつかの私を夢見ている
星は流れたのだったか 人は煌めくものを探す時 天を仰ぐ癖を持つ 小さな星の 小さな国の 小さな都市の 小さな窓辺で 大きく口を開けても 少しばかり空気を吸い込むだけで 身体を駆け巡ったオキシジェンは さりげなく脳に届くはずで 伸びをしてこうべを垂れたら 静かに耳に届いた 魔法の言葉が ひとつぽつんと 師走の終わりに |
ゴッホのひまわり 古畑いずみ
ゴッホの絵に描いてあるひまわりをみて、自分の自画像じゃないかと思った 壊れて粉砕されて色までになった自分の分子が変色して全部 黄色になってひまわりになった それはとてつもないエネルギーになって私のまわりにあり無意味に蒸発していく 黄色をまとって自分は生きている 全ては蒸発してやがて自分は消えていく そしてゴッホのひまわりの絵だけが残る |
自由の重さ 草の根
自由とは航海だ。 急にこの世という海に放られて、 自分で舵を取らなければならない。
ある程度決まったルートはある。 そこを通ればつまらないが、間違いない。
自由とは責任だ。 航路から外れるのはリスクが伴う。 難破しても自分のせいだ。
誰が好き好んで責任なんてもつもんか。
でも彼らは言う。 「自由に生きろ」と。
航海とは不自由だ。 |
ヒマワリ いずみ
ヒマワリはまっすぐと立つ 私は前向きな人間になりたい 太陽にあいさつをするヒマワリのように
ヒマワリは長く咲く 私はいつまでも笑顔でいたい いつでも笑顔なヒマワリのように
ヒマワリは元気をくれる 私は人を元気にさせたい 黄色く光るヒマワリのように
ヒマワリは枯れる 私は満足のいく人生にしたい 笑顔で終わったヒマワリのように |
灰色の生活、かすかな希望 ふじい
濡れる街、ビルの影 鉄に沈む夕焼けに 聞こえてこない鳥の声
流れるゴミ、漂う魚たち 霞んで見える川の水 昔のようには透き通らず
枯れる木、消えてく緑 かつて楽しんだこの場所も 今では足跡すらなき場所に
歩く人々、コツコツ足音 「未来はあるのか」 灰色の生活で募る不安
コンクリートの隙間、小さな芽生え 「きっとまだ間に合う」 静かに未来を信じる花
|
私色 norma
私を知らないのに その空白を なぜ 勝手に埋めてしまうの
私の黒さを見たことがあるか 私の青さを感じたことはあるか それなのにそこに期待の色をぬらないで
私がそれをぬりなおしたら 私がきみに色をぬったら きみはいったいどんな顔をするの
きみがぬった色をぬりなおすなら 私はきみのぬった色も すこし私の色にしたくなる
私を知らないなら その空白は いつか 私がカラフルにする |
めんどうくさい Kaz
めんどうくさいめんどうくさい 動くことがめんどうくさい ずっと楽してごろごろ過ごしていたい
めんどうくさいめんどうくさい 考えるのもめんどうくさい 難しいことは考えずに生きていきたい
頭の中ではもう知っているのに わかっていてもなかなか一歩が踏み出せない 土に根を張る木みたいに
だけれど私は知っている その先に晴れ渡った景色があることを 陽は上り進んだ私を照らしてくれる
めんどうくさいを頑張ろう 明日の私はきっと強くなれる もう未来は私の方を向いている
|
つながりの音 ペンねーむ
言葉はまるで 心と心の間を吹き抜けていく 触れた心に響く音
言葉が届かないとき すれ違う心が冷たくなる けれど一言で世界が少し暖かくなる
触れるだけの画面の向こうで 本当の声を忘れそうになるけれど 言葉が心と心を繋ぐ架け橋になる
コミュニケーションはただの手段じゃない 人と人が生きるための 見えない生命線なんだ |
デジタルの窓 ちせき はなこ
通知が鳴っても心は静か 今日の笑顔はどこか嘘 画面にうつる自分が目をそらす
みんなといるのにひとりみたい 画面越しに手を伸ばして 触れない温度に泣きたくなる
未来が見えずに空を見上げる 青より白い光の中で 私の色はそこにあるの? |
近鉄 みみみーみみーみみ
七時四十三分京都発宮津行 今日もワインレッドの座席に腰かけて ぼんやり窓の外を眺めている
建物の間からかすかに見える知らない人の生活 走っている小学生やゴミ出ししてるサラリーマン 毎日おなじようで、少しちがう
木々の間からかすかに見える自然の生活 田んぼの稲の長さや野鳥の種類 毎日おなじようで、少しちがう
複雑な現代社会の平和なひとコマが 線路の上を静かに走り続ける 目的地までの幸せな十八分間
七時四十三分京都発宮津行 今日もワインレッドの座席に腰かけて ぼんやり窓の外を眺めている |
無力な私 福野巧朗
私にはできない かわいた心を 潤すことも
私にはできない くずれた関係を 再建することも
私にはできない ゆがんだ社会を 整備することも
私にはできない あれはてた世の中を 変えることも
私にはできない きずついたあなたを 助けることさえ
無力な私 それでも生きる これが私 |
レスロンリー 永田佐与
人と会話していても心はまるで遠くの星のように 近くにいても何かが足りない気がする でもふとした瞬間に差し込む温かい笑顔
スマホの画面に映る友達や家族の名前 その名前が心に届く孤独が消える瞬間 それはまるで冷たい空気が温かくなるように
多忙な毎日を過ごすでも会いたいときは いつでも手を伸ばせば誰かがそこにいる ただそれがうれしいそれだけで少し楽になる
ひとりで過ごす夜誰にも会えず寂しいと思うとき でも明日どこかできっと誰かが笑っていると考える それを心の中で感じるその温もりが力になる |
不安と孤独 上野麻瑚
教えてよ 私の黒色の種 ずっと成長してるんだ 教えてよ 私の時計 ずっと止まってるんだ 教えてよ 私の視界 ずっと暗いんだ 教えてよ 私の頭 ずっと下を向いてるんだ 教えてよ 地球が丸いのなら 世の中は丸くならないの? |
自然の音 えのき
長い時間をかけて 山の奥からやってくる 流れる川の声を
様々な旅をして 遥か彼方を知っている 木を揺らす風の声を
自分を表現するために 雑木の中を駆け巡る 小さくも大きい虫の声を
雲の隙間から落ちてくる 空を舞台に踊っている 絶え間ない雨の音を
様々な瞬間を聞いてみて その時に発した声は もう残っていないから |
ときめき 37,
街角の小さな店で買った駄菓子で 当たりがでたあのとき 少しばかりのしあわせで満ちた心
教室を飛び出して出かけた先で 水面のきらめきが目の前に広がっていたあのとき きらきらと照らされた 私の未来
日に日に当日が迫る 涼しげなブルーの教室で できないところを支え合ったあのとき 準備だけ顔を出すふわふわとした青春の空気
ひとけのない がらんとしたあの教室で まっすぐな眼差しを感じたあのとき 揺らいで しまいには奪われた心
きみが来てくれていた頃のホームルームで ともに笑い合えたあのとき 私は知った この世界の共通言語は笑顔
忘れたくないこの時間が 戻ってくることはない タイムカプセルは もどかしさを覚えた人間が生きた証 ときめきは 儚くて世の中で一番きれいなもの |
本当にたいせつなもの 小栗沙久良
Eライン 忘れ鼻 色白
外見の美しさをはかるものさしの種類は カメレオンの色変化のように次々と変わってゆく
優しい 面白い 我慢強い 内面の尊さをはかるものさしの種類は カブトエビの姿のようにずっと変わらない
変わるものより、かわらないものを大切にしよう
ありのままの君が一番美しい |
空気 村西泰旗
空気を読むのはいつも窮屈 読みすぎると自分がしんどくなる 読まないと周りに迷惑がかかる
そんな毎日がいつも憂鬱 でもそれが現代社会 でもこのままじゃ何も変わらない
だからこれからは 空気は適度に読む 空気は読むものじゃなくて呼吸するもの
空気を読めない自分のことを 認める同じ空気間の人とだけ つるんだほうが幸せなんじゃないか
もし認められなかったらいくらでも 変わればいい変えればいい まるで空気のように |
地球地球 yusuke
昔は良かったなぁ 何もなくて静かな感じ 今はなんだか騒がしい
まだまだいいなぁ 自然豊かで気持ちいい 今はなんだか気持ち悪い
生命っていいなぁ 動物が楽しそうに遊んでいる 今はなんだかけんかしてる
悲しくなっちゃったなぁ 石が当たって誰もいない 今はなんだかいっぱいいる
最近はしんどいなぁ 息がどんどんしにくくなる 今もなんだか体が変
息がしにくいなぁ 体が熱いなぁ 昔は健康だったのに |
消えた温もり 川本美海
いつからだろう そばにいるのに 感じない君の温もり
いつからだろう 画面の向こうの誰かに奪われ 消えた君との温かい時間
いつからだろう 心の中で叫んでいる 誰にも届かぬ私の声
いつからだろう 温もりが消えたことに気づかず ただ生きることだけに追われて
どこに行ったのだろう 冷たい風に変わってしまった 君と私から消えた温もり |
|世話人たちの講評
・千石英世より
雪のひとひら
きれいな光景です。各「雪のひとひら」の直前の各フレーズ内に言葉が多いのと少ないのとがありますが、少ないほうに揃えてみるのはどうでしょう。きっちり揃える必要はないにしても。
脳が嘘をついた
いいですね。タイトルもいいし、詩の運びもいいし、ユーモアが辛辣で、とてもいいし。爽快です。作者ご自身もこれを書けて気分がととのっただろうなと想像しました。傑作だと思います。
オレンジ気分
タイトルがいいですね。といって後続の詩の流れと微妙に離れているのですが。後続はダークな感じで、オレンジじゃないのですが。でも、人生の重さ、複雑さ、自意識の粘度が書かれていて、いいなとおもいました。
2月の雪
書かれているシチュエイションはよくわかり、面白いなとおもいます。さらにつづく詩興があるのでは? そこをもうひと押し!
赤くないポスト
出だし、快調。結論3行まで、もう少し、声を聴かせてほしいなと思います。それで結論に達すると、説得力増すだろうと思う次第です。
空虚
出だし2行、いいなあと思います。「くだらない」という判断を強いてくる状況やことばをもっとアイテム多く数え上げていけば、キツクて面白い展開になるぞと思いました。遠慮するなかれ!
夕暮れの空に
ふかい、にがい心模様がよくつたわってきます。終わりから3行目「空」に見えたものを一つ書き足すとすれば…。「私」=世界になるのでは?
ありがとう
複雑な展開ですが、つたわってきます。「魔性の言葉」は主人公(作者とはかぎらないし、作中の「私」でもないかもしれない)が「口」を開けたから、「空気」を吸ったから、「伸び」をしたから、「静かに耳に届いた」のだと考えました。そしたら感動がありました。ありがとう。
ゴッホのひまわり
いいえ、この詩も残ります。
草の根
「航海とは不自由だ。」たしかに! でもこうして詩をかくのは「自由」だ!「ある程度決まったルート」なんてものもない。「誰が好き好んで責任なんてもつもんか。」と書くのも自由だ。ようこそ自由の天地へ!
ヒマワリ
「ヒマワリ」が書いた詩ですね。ヒマワリは日本語で詩を書くのでした!
灰色の生活、かすかな希望
詩作歴、何年になるのですか?とききたくなるような出来栄えですね。
一点、下から数えて3連目が、うっすらかしこまった語調になっているのですが、全体との関係でどういう効果をあげることになるのか、考えています。でもいいですね。世界観が強いですね。
私色
タイトル抜群ですね。詩の流れも軽快なのにつよくて、いいですね。
めんどうくさい
「めんどくさい」ブルースになるのかとおもっていたら、いや、なればいいのになどと不埒なことをおもっていました。というわけで下から3行目の大逆転、見事ですね。
つながりの音
タイトルがいいです。なんだろうと思わせます。で、「心と心を繋ぐ架け橋になる」のむずかしげな漢字をひらがなにすれば、そしてここが動詞になっていますが、タイトル同様の名詞、というか動詞の連用形転用の名詞ですが、それ的なものにすればタイトルがぐっと詩になるなと思いました。
デジタルの窓
2連目、グッときます。3連目「青より白い光の中で」、見事な1行です。この見事さが実現できたなら最後は「?」ではなく、断言、宣言でいいのでは!「私の色はそこにある」。読者も納得するとおもいます。
近鉄
このなにげなさ、この声のしづけさ、数詞が漢数字なのもいいとおもいます。小さな世界をみるふかいこころをかんじました。着実な描写は、いつも強い、だれにとっても強くひびくさという一般論はあるらしいのですが、一般論と関係なく強いです。
無力な私
「それでも生きる」とかくことはできる。「これが私」と書くこともできる。それがなんで「無力」なことがありましょうか。ここに書かれている無力の「私」の真逆は、たとえば、ミスタ・トランプですね。だが、かれには、この詩は書けない、その意味でかれは「無力」です。書く気もないでしょうがと、ここではいう必要はない。書く気もないということがもう「無力」なことなのだから。そういう意味でじんわりしみてくる詩ですね。
レスロンリー
正直で誠実な感性がながれていると感じました。素直さというのはあたたかさでもあるのですね。地球は良い星なのだとおもわせてくれます。
不安と孤独
最後、「私の頭」に話題がいったので、話題が「地球」と大きくなったのでしょうけど、そうしないで、「私」の内、外、周囲、とみっちりしたところを追って行けば、旋律おとリズムが鳴りだすのではないでしょうか。そしたら1行目がぐっと成長するのでは! とおもいました。むろん本作にかぎっての感想です。大きく詩を書くというのも面白いものです。
自然の音
声、音に敏感な感性。しかし声も音も、耳に届いたときには、生まれたばかりのとき音ではない。するどい世界観だとおもいました。
ときめき
1行目「しあわせで満ちた心」、そのゆえにそのとき何をしたか、小さくジャンプした? 小さく声を上げた? 隣の友達の肩を小さく叩いた? などと、具体的な動作やなにかを書くと、ときめきの可視化になるのでは? 他の連にも同様のことがいえるとおもいました。
本当にたいせつなもの
大事なメッセージが書けています。各連に書かれていることがどんな事件、波紋、葛藤を引きおこしそうなのか、引き起こしたのか、調べてでも周辺のうわさででも報告されて、そうした具体的な、とは、記録的なことばがでてくるとタイトルに説得力がつくのではないでしょうか。
空気
誠実なこころが書かれていると思います。空気をよめなかったときの齟齬感、よめたときの安堵感、そうした場面場面の具体的な紹介があれば最終連の教訓は切実になるようにおもいますが、どうでしょう。
地球地球
いつわらざる皮膚感覚の観察ですね。連の1行目にポジティブな感想がかかれている連がつづいたとおもうと、だんだん、後半になると1行目にネガティブな感覚感想がでてくる、この変換に目を見張りました。そこを自覚的に組み立てると面白い詩になりそう。
消えた温もり
悲しさ、物足りなさがリフレインされていてせつないです。君と私が一緒におなじ方向を見ていたとき、とは、温かさがあったときのことを、少し紹介すればせつなさがふかまるように思います。
・平石貴樹より
雪のひとひら
最終連からの展開がほしかったです。
脳が嘘をついた
気ままなSFですね。
オレンジ気分
カッコいい演歌のようでした。
2月の雪
微妙なディテールが詩になってますね。
人生
「時は金なり」と言っちゃうとせっかち主義に戻ってしまいます。
空虚
「人の情」はむずかしいものですね。
夕焼けの空に
「今日」と「明日」の形而上学ですね。
ありがとう
後半は傑作だと思いました。
自由の重さ
「自由」とは失ってはじめて気づく価値なのかもしれません。
ゴッホのひまわり
「ひまわり」へのコメントとして秀逸かと。
ヒマワリ
よく整っています。
灰色の生活、かすかな希望
タイトルがあまりにもそのままではありません?
私色
おとなですね。「オリビアを聴きながら」を思い出しました。
めんどうくさい
真面目でこのましいと思います。
つながりの音
おっしゃる通り! ことばの起源とか考えるとおもしろいですよ。
デジタルの窓
すばらしい感覚ですね。
近鉄
この「幸せ」、共感できます。
無力な私
でも「私」にできることもあるでしょう?
レスロンリー
いい子だなあ。
不安と孤独
針のような言葉ですね。
自然の音
終わり2行が難解でした。
ときめき
うらやましいほどの青春ですね。
本当にたいせつなもの
正しいと思います。
空気
その調子でがんばれ!と言いたくなります。
地球地球
地球の独白でしょうか。いいアイデアです。
消えた温もり
哀しいです。なんとかしましょう。
・渡辺信二より
雪のひとひら
リフレーンを使う作品は、完了感をどう確保するのかが難しい。最終連は、形式上、3行にしているが、内容上、「あなた」を生かしているだろうか。
脳が嘘をついた
奇妙な身体感覚が表現されています。
オレンジ気分
タイトルの意味内容が作品内で生かされているとさらに良い。
2月の雪
タイトルの「2月」と「遠ざかった春」の関係が、ちょっと分かりづらい。
人生
「自分らしく時を進める」ことが、いわゆるタイパ的発想の「時は金なり」と、どういう関係なのか。
空虚
「人の情」は、大事だが、時には、裏切ったりするかも。
夕焼けの空に
「夕暮れ」どきの思いがよく表現されています。
ありがとう
タイトルが、作品内で生きています。
ゴッホのひまわり
詩趣はとても良い。作中の「自分」は、ゴッホか、私か、それとも? 誰を指す?
自由の重さ
「航海」をめぐる「自由」が、意味を反転させる。面白い。
ヒマワリ
ヒマワリに人生を見る構成がしっかりしています。
灰色の生活、かすかな希望
問うことが、希望となるのでしょう。
私色
いいですね。「少し」とか「いつか」とかと言う言葉に、なぜか、躊躇や遠慮が見える。
めんどうくさい
「めんどうくさいを頑張ろう」と言うめんどうくさい言い方が面白い。
つながりの音
言葉の力を信じている様が、安心できる
デジタルの窓
デジタル世界での他者との関係、自己の確立、を問うている。
近鉄
繰り返す日常と、その中の小さい変化を大事に思う様子が伝わります。
無力な私
健気で前向きの姿勢に好感が持てる。
レスロンリー
想像力への信頼が感じられます。
不安と孤独
世間や人生に衝突、絶望、不安、…を感じる心情が、15行に凝縮しています。
自然の音
「声」をその由来にまで遡って想像する力を感じます。
ときめき
いい作品です。思い出は確かにときめいています。
本当にたいせつなもの
相手を諭すようでありながら、自分に言い聞かせているようでもある口調に聞こえる。
空気
いいですね。山本七平の『「空気」の研究』を思い出させます。
地球地球
タイトルが面白い。何かまだ、いい足りない感じを残している。
消えた温もり
「君」との関係の変化を上手に表現しています。
後編はこちらから