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あさひてらすの詩のてらす

寒菊の咲く頃に届いた11篇の詩(24年1月)

言葉の世界には、現実とは異なる空間があり、時にそれが居場所になったりすること多いと感じています。早々に大きな出来事があった今年、そうした場所を必要とする方もいると思います。ここに掲載する「寒菊の咲く頃に届いた11篇の詩」が、その扉になりますように。


 

 寒菊の咲く頃に届いた11篇の詩

・苺

・不動のダルマ

・三日月

・詩人の仕事は、生きていること

・もしも会えたら

・恋

・つかみどころのない話

・リフレイン

・獏

・公民千益

・希望

 

 

湯村りす

 

愛おしい日々に別れを告げようとしている

遠いいつかのことに感じていたこの日を前に

ようやく母の思いを考えるようになった

生まれる前から今まで ずっとありがとう

 

夜に時々

砂糖と牛乳に浸した苺を持ってきてくれた

哀しみ 苛立ち 自信のなさ

過ぎ去った風景を懐かしむ気持ち

どんな感情も甘く包まれて

胸の奥にストンと降りていった

 

その あなたが今頬張った果実は

先端にいくほど甘味が増すらしい

そういう生き方をしようと思うのだ

芽を出し 実を結び 熟するまで

草かんむりに母と書いて

 

不動のダルマ

草笛螢夢

 

いつも人の意見を聞いて左右に揺れています

時には風で揺らぎ

また地震があると 不安になったりします

大きなため息を

吹きかけられても動いてしまいます

 

私と皆にとって 何がためになり

一番良いかを揺れながら

考えて判断をしています

だからと云って

自らは動けませんし動きません

 

頑固者と思われても仕方ないでしょう

でも、私には私の意見を持って

頑固に反対だけしている訳ではありません

但し 他人の意見を

否定している訳ではありません

揺れながら消化して比較してみんなにとって

何が良いか比べて 意見を言います

見つめて貰えると

その人の心の中を察して 応えています

 

そんな思いで 毎日ここに居ます

 

 

三日月

花 詩

 

ささやかな眩しさに

気付いた心が

見上げた空に

細い三日月

 

陽のあたらない暗闇も

陽を映し輝く光も

月は月

 

私らしくはいられない

そんな日でも

私は私

 

満月の夜があるように

 

笑顔の日もあるように

 

詩人の仕事は、生きていること

鏡文志

 

僕がなにを求め、なにをやりたいか?

具体的には、作品制作をしている瞬間が楽しいんです。

発表して成果を得る。それは、後なんです。

漫画だったら、アイデアを話し合ったり、それを具現化する過程。

歌だったら、詞を書いて、それを肉付けして、完成までいく過程。

結果じゃないです。

詩の制作過程は、特殊です。

それは、生きていることです。

生きてさえいれば、詩は書ける。

それを、仕事にしますかね?

詩人を仕事にしている人は、他の雑多なことをこなした上での

詩人だと思うのですが、一番は生きていることなんじゃないかな? 

と思うのです。 

  

もしも会えたら

網谷優司

 

同害報復なんて野蛮だ。

痛むのは左胸。

走って逃げるあなたを追いかけるなんてさすがにできやしない。大人の追いかけっこは恥ずかしい。

刃物は横に寝かして刺す。そうしないと肋骨にハートが守られてしまう。

それでもイメージに具体性が欠けている。その再会はどういう状況なんだ。

愛憎と恐怖。それ以外に何が要ろう?

反実仮想? ムナシイネ。

痛い。出会わなければよかった。

  

長谷川哲士

 

散り散り青春恋の華

それは敗北して融けて行く

拳闘家の背中に見える涙汗

もう勝利の見込みなど

無いのだ絶対に無い

しかし生命有る限りは

助平な欲望の炎

燃やし続けめらめら

骨砕ける迄挑むのみの馬ッ鹿ッ

 

そうだそうだそうなのだ

どうせそうなのだから

 

殴れ走れ蹴り尽くせ呪え吸え

叩け組み合え唾を吐け登れ吸え

滑り落ちろ飛べ逃げろそして吸え

締め落とせ踏め突け捨てろなお吸え

まだ行け行け行け行け

だがしかし敗ける敗け続ける

だがしかし全てを抱き締めろ

そう、空っぽで、立ち尽くす、始まり

 

つかみどころのない話

鏡文志

 

死んだ後に評価されたいのに

生きているとそれがまだ分からない。

 

消えて心配されたいのに、消えてしまうと

心配されていることがわからない。

 

どうしよう。困った。

 

 

リフレイン

網谷優司

 

良かったね、おめでとうございます、と言われることが最近増えたよ。君が世界から僕を消去してからも、僕にはコツコツと積み上げてきたものがあるんだ。

 

でも、それが何らかの確たる拠り所になるかというと、どうにも底が抜けてしまっているような感じがして、頼りない。結局いつも最後には、君への怒りのあまりの強度に、めまいと吐き気がして僕はくずおれてしまう。

 

消去される寸前に僕が叫んだ呪詛の声は、君の世界にまだこだましているかい? 

 

 

湯村りす

 

ただの雨さ

そこに動力がある限りは

何度でも風が回るように 

何度でも落ちてくるんだ

それをパレードだとか夢だとか言うのなら

こんなに不味いものはないね

体が大きいのは欲を張るからさ

だから目に入れたくないものまで見てしまう

だけどその美味しさが分かるんだ

誰かの苦しんでいる姿が見たい

それは誰だって考えていることだろう?

少しだけ 舐めるだけで構わないから

僕にくれないか?

 

そうやって虚勢を張ってはみたものの

ああ、僕は

なんてこと言うんだ

 

公民千益

鏡文志

 

私民の愛は、語るるに足らず。

私民の命は、察するに及ばず。

ただ、公のために生きるものにこそ、希望の光あり。

 

察することなければ、律することもなく。

律することなければ、立することもなく。

立することなければ、志することもなく。

志することなければ、叶することもなく。

叶することなければ、終することもなく。

終することなければ、余することもなく。

余することなければ、安らぎは生まれず。

安らぐることなければ、天に昇ることも、ないであろう。

 

想像力。それは、愛だ

 

希望

野木まさみ

 

凍る月

霜を降らせ

 

波のように

夜は更ける

 

青い闇

とばりを降ろし

 

雲の上で

星も眠る

 

凍える野草たちも

古巣の小鳥たちも

冷たい夜気の中

夜が見せる夢に揺られ

待っている白い朝

 

きらきらと霜に注ぐ

光の粒が踊る

明けてゆく

日の始まり

 

 

 

|世話人たちからの講評 

・千石英世より

きれいな詩ですね。ふくよかなこの思い、母に届けば、苺に届けば。 ゆるやかな詩の運びが届けてくれるのではないでしょうか。

不動のダルマ

タイトルと最終行のあいだに、ピッとした呼応があって、微笑のうちになにかメッセージをつかみました。なにかうまくはいえないが、かるいがたしかな確信がめばえました。ユーモアのうちに。

三日月

面白い詩ですね。2連目以後は三日月が語っていると読めばいいですね。三日月がやさしく語りかけてくれてよかったです。

詩人の仕事は、生きていること

激しく同感です! 

思い出させてくれて、サンクス!  

もしも会えたら

愛は煉獄、それは天国と地獄の結婚。それはさすらいのつむじ風。「それ以外に何が要ろう?」 でも、ツライは辛い。そこの所がよく出ていて目がはなせない感じです。

ドラムセットの響きとリズムが聞こえてきます。だがしかし! だがしかし!と。 筋肉から汗が飛び散る声の汗! ですね。

つかみどころのない話

至言と存じます。コツコツと七転八倒するのでしょうね。人をうらやみおのれを責め、瞑目し深呼吸し、気を取り直し、書き直し、慌てて名作読書百遍、粘って書き損じ書き捨て万編、どきどきしながら友人に見せるのは一つだけ、仲間ボメでもいいから褒めてくれと祈ります。祈りは。かなえられないと知っているから祈るのだというのがホンマの祈り、「どうしよう。困った。」 ⇔ここに詩がある! と言いたいです。

リフレイン

1連目、ふかき響きあり。2連目、虚空に筋雲あり。瑞兆の雲ではないが。3連目、ぶ厚い雨雲。雨雲の割れ目から雷鳴が。それは「呪詛の声」。この「呪詛の声」を、放つ、あるいは受け止める具体物がほしいところか。呪詛の依り代だ。客観的相関物だ。錆びた自転車、燃えるパトカー、床に散らばるマックポテト。飛び散るマスタード。自動改札に拒否される照ノ富士、など。

僕は獏だ。獏が語れば、僕は語る。ピリカラの味わいふかい言葉たち、刺さってくる軽さ、軽快さ、いいなあ。 

公民千益

リズミカルです。心地よい厳しさ、激しく同意。最終行、とくに。

希望

メロディーを感じます。弱音で奏でられるチェロかヴィオラか。それにそって流れるように舞う名詞たち。みごとに完結した世界。ここにモーツアルト的転調がくれば、詩は真昼へ!

 

・平石貴樹より

 すっきりまとまって好印象です。 

不動のダルマ

 ダルマは本当に意見を言うのでしょうか。その「思い」だけなのかな?

三日月

 よくわかります。ただ、三日月に「眩しさ」や「輝く光」が似合うかどうか。

詩人の仕事は、生きていること

 おっしゃる通りと思います。

もしも会えたら

 タイトルがすでに1行目ですね。ほとばしる短詩です。 

 ロック調の歌詞のような。

つかみどころのない話

 人生の皮肉でしょうか。

リフレイン

 ストレートないい詩だと思います。

 ちょっとわかりにくいです。獏の言い伝えを踏まえている?

公民千益

 ちょっと断言しすぎかもしれません。 

希望

 静かな観察ですね。

 

・渡辺信二より

「先端にいくほど甘味が増す」ような生き方とは、いい表現です。

2行目「遠いいつかのこと」とか、7行目「過ぎ去った風景」など、もうすこし、具体的なヒントがあれば、更に読者に響くでしょう。

不動のダルマ

「不動のダルマ」と言いながら、「揺れて」(1行目)いるのですね。「揺れて」いながら、なぜ、「不動」なのかが分かるともっと良いでしょう。また、言った「意見」(17行目)の内容や、どう「応えた」(19行目)のかも、知りたい。

三日月

いい着想です。「三日月」のときの「私」がどんな様子なのかが分かると。もっと良い。 

詩人の仕事は、生きていること

タイトル「詩人の仕事は、生きていること」と、「詩の制作過程は、特殊です。/それは、生きていることです。」(7−8行目)の、「生きていること」は、同じ意味なのだろうか。

もしも会えたら

タイトル<もしも会えたら>は、<もしも再会できたら>という意味なのだろうか?

5行目の<その再会はどういう状況なんだ>への回答が、6〜8行目だとすれば、

6行目<恐怖>の内実が分かればさらに良い。また、<「要ろう」?>がふしぎです。

7行目<ムナシイネ。>と書くことで、虚しさが消えるか?

タイトル「恋」と、「拳闘家」(3行目)のイメージがうまくコラボしているかどうかがポイントでしょうね。「恋」は勝ち負け、ということでしょうか。

つかみどころのない話

確かに「つかみどころのない話」だが、掴みどころはある。第一連と第2連の「分からなさ」が違いますね。

リフレイン

タイトル「リフレイン」が内容とうまくあえば面白いのだが、このままだと、何が「リフレイン」なのか、戸惑う。

タイトルが「獏」ですか。「獏」と本文の内容をどう絡めて理解すれば良いのか、不明のままです。第一行目や第四行目など、主語がないからなのかな?

公民千益

「市民」ではなくて「私民」である点に、クリティカルなものを感じるが、それを更に活かすには、「公民」へもクリティカルである必要があろう。 

希望

まとまりのある作品です。凍てつく夜を徹して、冬の景色を見続けたのか?「希望」が見えてくるようです。

 


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