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日中いぶこみ百景

外へ出る 中国人

このごろ「ひきこもり」が話題だ。ひきこもり,中国語でどう言うか,知らない。曾て「お宅」が話題になったころは,いち早く中国でもとりあげられ,“宅男”と“宅女”という二つの語として中国語になった。「お宅」は中国にも居るらしい。

 「ひきこもり」は中国ではあまり居ないのではないか。少なくとも社会問題にはなっていない。

 日本ではもっぱら屋内でやるが,中国人はよく外でやるものがある。たとえば公園でやっているマージャンやトランプ,中国将棋に京劇の練習。ダンスもそうだし太極拳もそうだ。家に籠もらず外に出て人に見せる。そうすると人と知りあえ,友だちの輪も広がる。体にも心にもよい。

 もっとも,中国語で「公園」というと,何千何万人が入れる広大なそれを指す。北京の景山公園や北海公園,天壇公園などを思い出してみればよい。こういう公園が各都市,街にいくつもある。これらにくらべれば日本のそれはまるで「空き地」である。

 近くに大きな公園がなくても,もともと人なつっこさがある中国人,何もすることがなくても家に籠もるよりは玄関先に椅子を二三おき,そこにちょこんと座り,往来の人をながめていたりする。知り合いが通れば声をかけ,ひとしきり話を交わす。

 昔は日本にも縁台将棋があった。このごろはまったく見かけない。

 縁もゆかりもない人が脇から口を出す。それが迷惑でもあり,面白い。

 中国人は知らない人にもよく話しかける。相手と親しいかどうかで言葉遣いが基本的には変わらないのもいい。

 また,集団の中の自分の位置によって言葉が変わることも少ない。さらに日本のように女性ことばがあるわけでもない。やっかいな敬語もない。男女同権も日本よりはすすんでいる。こうしてみると中国は気分的にフリーだ。日本だといろいろ細かなことに気を使い,仕事をしているとだんだん「煮詰まってくる」が,そんな時は中国とか東南アジアに旅行するという女性を知っている。

 中国社会のほうが「呼吸が楽」と感じている日本人も多いようだ。

 

 

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著者略歴

  1. 相原 茂

    中国語コミュニケーション協会代表
    1948年生まれ。東京教育大学修士課程修了。中国語学,中国語教育専攻。80~82年,北京にて研修。
    明治大学助教授,お茶の水女子大学教授等を経て,現在中国語コミュニケーション協会代表としてTECCの普及に努める。
    NHKラジオ・テレビでも長年中国語講座を担当。編著書に,『はじめての中国語』(講談社現代新書)『雨がホワホワ』『ちくわを食う女』『中国語未知との遭遇』(ともに現代書館)『ときめきの上海』『発音の基礎から学ぶ中国語 新装版』(ともに朝日出版社)『「感謝」と「謝罪」はじめて聞く日中“異文化”の話』(講談社)『講談社中日辞典<第三版>』『講談社日中辞典』(講談社)など。

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