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日中いぶこみ百景

スタバで怒られた話から

以前,といっても大分むかしの話だが,中国のスタバでメニューを写真にとろうとした。カフェラテとか,カプチ−ノとか,中国語でどう言うのか興味があった。その頃は,珈琲の中国名が珍しかった。語学者としては当然だろう。

 ところが店員に制止された。禁止されているわけでもないのに,腑に落ちなかった。

 これが私がその店員と知り合いならきっと許されるのに。自分の持ち場では「職権」を振るう。中国では個人が職権の範囲内で小さな「権力」を持つ,そんな感想を抱いた。

 スタバの店内,今は撮影禁止になったという。そうかも知れない。私の経験は十年ぐらい前のだ。ただ言いたいことは,どんな仕事であれ,「自分の職権をフルに利用する」ということ。典型は公務員などで,それは今も変わらないだろう。

 公務員が日本にくらべ威張っている。これは日本にいる中国人は誰もが感じていることのようだ。在留資格の手続きとか,どうしても日本の役所に出向く機会が多い。そうすると故国にくらべて日本の公務員の腰の低さ,丁寧さをあらためて実感するようだ。異国で味わう“为人民服务”だ。

 

 日本で長年暮らしている中国人,日々,日中の違いをいやでも感じる。

それを「日中異文化15景」といったタイトルでウエブ上に発表する中国人は少なくない。

 最近も中国メディア・網易(NETEASE)で次のような記事をみつけた。「中国人にとって適応しにくい日本の15の習慣」を挙げている。3番目に上で言及した公務員の話題もある。
    *     *     *       *
1)財布や携帯電話を尻ポケットに入れる。外からは丸見え。(中国ではスリに「盗ってください」と言っているようなもの)
2)野菜や肉などの食材をろくに洗わず調理する。中にはまったく洗わない人も。(中国では市場で買ってきた食材は洗わずして調理することなどできない。そこまで洗浄されていない)
3)公務員が一般市民に対して腰が低いのは常識。(中国のお役所対応は、完全に職員の立場が上)
4)ごみを家まで持ち帰って捨てる。(中国では街頭のごみ箱が非常に少ないが、だからといって家まで持ち帰ることはしない)

5)携帯灰皿を使う。(中国では、たとえ灰皿がない場所でも、なんとか“処分”してしまうだろう)
6)たとえ通過車両がなくても、赤信号では道路を横断せず、青信号まで待つ。(中国人にとって、ルールを守る必然性のないTPOでルール遵守を優先するのは意味のないこと)
7)ティッシュを持たずに外出しても、ほとんどの公衆トイレに備え付けのペーパーがある。(中国での外出にはトイレットペーパーなどの携帯は必須)
8)買い物をする時、その場で包装を開けて商品の状態を確認しない。たとえそれがノートPCのような高価なものであっても。(中国では展示サンプルだけ見て現物を確認しなければ不良品をつかまされる可能性が高い)
9)青信号の時は安心しきって横断する。(中国では信号無視で突っ込んでくる車両は少なくないので、必ず左右を確認)
10)室内では素足で、サンダルすら履かない。(中国では床に座って過ごす習慣などがないため、そこまで床がきれいではない。室内も土足に近い感覚)
11)ドアをノックする者がいたら、誰かも確認せずにすぐ開ける。(中国では安全意識に欠ける行為)
12)ごみはその種類によって、捨てていい日が決まっている。(中国にはまだごみ分別の習慣は根付いていない)
13)肉に対する執着心が低く、野菜ばかり食べている。(中国でも食事事情がかなり改善する近年まで、大都市以外では野菜中心の食生活を送らざるを得なかったように見受けられるが…)
14)海賊版が買えなくても誰も苦痛に思っていないようだ。(中国ではCDでもDVDでも正規版を見つける方が難しいような印象だが)
15)誰もが飲食店に対する好奇心が薄い。大小の飲食店がそこら中にあふれ返っているからか。(中国は日本以上に気軽に外食を選択する環境が整っている)      

              (翻訳・編集/愛玉。( )内のコメントも含む)

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著者略歴

  1. 相原 茂

    中国語コミュニケーション協会代表
    1948年生まれ。東京教育大学修士課程修了。中国語学,中国語教育専攻。80~82年,北京にて研修。
    明治大学助教授,お茶の水女子大学教授等を経て,現在中国語コミュニケーション協会代表としてTECCの普及に努める。
    NHKラジオ・テレビでも長年中国語講座を担当。編著書に,『はじめての中国語』(講談社現代新書)『雨がホワホワ』『ちくわを食う女』『中国語未知との遭遇』(ともに現代書館)『ときめきの上海』『発音の基礎から学ぶ中国語 新装版』(ともに朝日出版社)『「感謝」と「謝罪」はじめて聞く日中“異文化”の話』(講談社)『講談社中日辞典<第三版>』『講談社日中辞典』(講談社)など。

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