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日中いぶこみ百景

葬儀のイメージ

葬儀のイメージ

 このあいだ,「死ぬ」を表す語を調べたことがあった。

 どこの国でも,あからさまに「死ぬ」とは言わず,「亡くなられた」とか「永遠の眠りについた」「お隠れになった」などなど,色々な表現がある。

 中でよく使われるのが,中国語では“他走了”や“去了”だ。

あまりに良く使われる日常語なので,うっかりしていると,「どこかへ出かけた」のかとか「どこかに行ったんだ」ぐらいに思ってしまうことがある。

 その後に葬儀の様子などが出てくると,ああ亡くなったのだと分かる。まったく油断がならない。

 お葬式も日本とは,だいぶイメージがちがう。 こんな比喩にぶつかったことがある。

 

  我睁开眼,雪花漫天,像一场缤纷的葬礼。(眼を開けると,空には一面の雪片が舞っていた,あたかも何か白いものが入り乱れる葬儀のように)

 

 空に舞う無数の雪片,それが「葬式のようだ」という。我々にはない連想だ。

 これは“撒纸钱”(紙銭をまく)のイメージだろう。中国人は人はあの世に行っても,住む家や着るもの、車などが要ると考える。もちろんお金も。これらを紙で造り,墓前で燃やしたり、葬儀で撒いたりする。その様が空に舞う雪のようだと言うのだ。都市ではもう見られない光景だが,葬儀の中核的イメージとして人々の脳裏に残る。

 二枚目の写真は,老舎の《茶馆》の最後の場面。舞台効果を出すための演出も入っているだろうが,雰囲気がよくでているので出してみた。

 

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著者略歴

  1. 相原 茂

    中国語コミュニケーション協会代表
    1948年生まれ。東京教育大学修士課程修了。中国語学,中国語教育専攻。80~82年,北京にて研修。
    明治大学助教授,お茶の水女子大学教授等を経て,現在中国語コミュニケーション協会代表としてTECCの普及に努める。
    NHKラジオ・テレビでも長年中国語講座を担当。編著書に,『はじめての中国語』(講談社現代新書)『雨がホワホワ』『ちくわを食う女』『中国語未知との遭遇』(ともに現代書館)『ときめきの上海』『発音の基礎から学ぶ中国語 新装版』(ともに朝日出版社)『「感謝」と「謝罪」はじめて聞く日中“異文化”の話』(講談社)『講談社中日辞典<第三版>』『講談社日中辞典』(講談社)など。

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