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日中いぶこみ百景

あなたに言われたくない

中国人がひどく嫌うことがある。それは「家の恥を外部の人にあげつらわれる」ことだ。中国人の家庭で,自分で我が子の欠点などを言うのは許される。しかし,同席している他人に言われると嫌な気持ちになる。たとえば、自分の子供に怒るときに、

 

 “你整天不学习,光知道玩,还跟同学打架, 我真不想要你了。”

(お前は一日中遊びほうけていて,ちっとも勉強をしない。そのうえ同級生と喧嘩はするし,お母さんお前のような子供は要らないからね)

 

 この時,そばにいる他人がもし、お母さんを加勢するつもりで、次のような発言したら、それが好意からのものであっても、嫌われると言う。

 

 “就是,你再这样下去,你妈可不要你了。”

 (そうだよ,こんなふうだと,お母さんあんたなんか要らないってよ)

 

 これは国の恥についても同じだ。たとえば最近のPM.2.5でも,交通渋滞でも,なんでもよいが,中国人同士であれこれ文句を言うのは良いのだが,そこに外国の人が口をはさもうものならとたんに機嫌がわるくなる。「あんたにそう言われたくない!」という感情が非常に強いのだ。

 だから中国人同士では結構自分の国の悪口を言い合っているのだが,それではと日本人が中国非難をはじめると,とたんに虫の居所がわるくなる。中国には“家家都有本难念的经”(どこの家にも人には言えないことがある)とか“家丑不可外扬”(家の恥は外には出せない)という諺まである。

 

  どこの国でも自国の悪口を言われるのを嫌うが中国では特にその傾向があるようだ。

 

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著者略歴

  1. 相原 茂

    中国語コミュニケーション協会代表
    1948年生まれ。東京教育大学修士課程修了。中国語学,中国語教育専攻。80~82年,北京にて研修。
    明治大学助教授,お茶の水女子大学教授等を経て,現在中国語コミュニケーション協会代表としてTECCの普及に努める。
    NHKラジオ・テレビでも長年中国語講座を担当。編著書に,『はじめての中国語』(講談社現代新書)『雨がホワホワ』『ちくわを食う女』『中国語未知との遭遇』(ともに現代書館)『ときめきの上海』『発音の基礎から学ぶ中国語 新装版』(ともに朝日出版社)『「感謝」と「謝罪」はじめて聞く日中“異文化”の話』(講談社)『講談社中日辞典<第三版>』『講談社日中辞典』(講談社)など。

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