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日中いぶこみ百景

顔のいい夫婦から生まれた子

中国語は,歯に衣を着せぬ言い方をすることがある。

 われわれがパラリンピックというところを“残疾人奥运会”と言う。訳せば「身体障害者五輪」である。

 身障者のことを昔は“残废人”と言っていた。訳せば「身体に障害があり,役に立たない人」の意味合いがある。そうかも知れないが,“废”=「廃用」とはあまりにひどい。今は改められ,“残疾人”となった。それでも“残”の一字は残った。“残”とは「残月」の残である。欠けているの意である。機能が欠落しているのを,

そう言って何処が悪い,という考え方である。やわらかく包むのはむしろ事の真相を隠蔽するものだ,そう彼らは思う一面がある。

 

 逆に,褒めるほうもズバリほめあげる。“颜值高”という言葉がある。これは顔の値が高い。知能指数が高いように,顔の美的指数が高いことを言う。

 あるところに夫妻がいた。どちらも大変な美男,美女である。周りは早く子供を作って欲しいと期待する。どんなにか「顔の美的指数」の高い赤ちゃんができるかワクワクして子供の誕生を待ち望んでいる。

 

 ところが生まれた子供は,夫妻の美しさとは縁もゆかりもない“颜值低”な“丑宝宝”(醜い赤ちゃん)。周りからは“亲子鉴定”(親子鑑定)をすべきだという声まで上がる。あれこれ一騒動あって,結局妻のほうが“整容手术”(整形手術)をしていたことが明るみになり,それでは仕方ないかと落ち着いた,という話。これを中国のウエブで読んだ。

 両親の写真もあり,赤ちゃんの写真も堂々と出ていた。いやあ,ズバリ言うもんだね。

 

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著者略歴

  1. 相原 茂

    中国語コミュニケーション協会代表
    1948年生まれ。東京教育大学修士課程修了。中国語学,中国語教育専攻。80~82年,北京にて研修。
    明治大学助教授,お茶の水女子大学教授等を経て,現在中国語コミュニケーション協会代表としてTECCの普及に努める。
    NHKラジオ・テレビでも長年中国語講座を担当。編著書に,『はじめての中国語』(講談社現代新書)『雨がホワホワ』『ちくわを食う女』『中国語未知との遭遇』(ともに現代書館)『ときめきの上海』『発音の基礎から学ぶ中国語 新装版』(ともに朝日出版社)『「感謝」と「謝罪」はじめて聞く日中“異文化”の話』(講談社)『講談社中日辞典<第三版>』『講談社日中辞典』(講談社)など。

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