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日中いぶこみ百景

中国と卓球,京劇,将棋 ————あなたの中国語達人度(その2)

中国大陸では卓球が人気のスポーツだ。卓球から日常生活に入った言葉に“擦边球”cābiānqiúという言い方がある。「エッジボール」のことだが,これが「法律すれすれセーフ」といった意味で使われる。

 

“变相涨价”实为涨价的一种特别方式,这种打法律擦边球的做法并不高明。

“Biànxiàng zhǎngjià” shíwéi zhǎnjià de yìzhǒng tèbié fāngshì, zhè zhǒng dǎ fǎlǜ cābiānqiú de zuòfǎ bìng bù gāomíng.  

(「(定価はそのままで内容量を減らす)手を変えた値上げ」は実際のところ値上げの一方式であり,このような法律すれすれのやり方は決して聡明とは言いかねる)

 

 また京劇に関係するものとしては“亮相”liàngxiàng(見栄を切る,そこからデビューする,公に態度を明らかにする)や“跑龙套”pǎo lóngtào(一兵卒役,そこから通行人やその他大勢のちょい役),さらに“唱红脸唱白脸”chàng hóngliǎn chàng báiliǎnなどがある。最初の“红脸”hóngliǎnとは顔を赤く塗る正面人物,つまりよい役,“白脸”báiliǎnのほうは顔を白く塗る悪役である。つまり“唱红脸唱白脸”でよい役を演ずるか悪役を演ずるかを例えている。

 

 夫妻俩做到一个唱红脸,一个唱白脸。

  Fūqī liǎ zuòdào yí ge chàng hóngliǎn ,yí ge chàng báiliǎn.

(夫婦は子供に対して一人がいい役を演じ,一人が悪役になるということがある)

 

これは例えば父親が厳しく子供に接し,母親のほうはやさしく愛情あふれる育て方をするとよい,といった文脈で使われる。

 

 このほか,庶民に親しまれている中国将棋からきたものでは“马后炮”mǎ hòu pào(事後になってとられた無用の措置)などという言い方もある。面白いものでは,“举棋不定”jǔ qí bú dìngという四字熟語がある。「駒を手にしたはよいが,打つ手が決まらず迷っている様」を表す。 

 京劇にしろ,将棋にしろ中国の伝統ある遊びで,日常の言葉の中に比喩として登場するにはやはりこういった長い歴史に培われたものに限られるようだ。それゆえ,われわれ外国人には難しい。上であげた表現のすべてを知っていると豪語する人は中国語の達人にちがいない。

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著者略歴

  1. 相原 茂

    中国語コミュニケーション協会代表
    1948年生まれ。東京教育大学修士課程修了。中国語学,中国語教育専攻。80~82年,北京にて研修。
    明治大学助教授,お茶の水女子大学教授等を経て,現在中国語コミュニケーション協会代表としてTECCの普及に努める。
    NHKラジオ・テレビでも長年中国語講座を担当。編著書に,『はじめての中国語』(講談社現代新書)『雨がホワホワ』『ちくわを食う女』『中国語未知との遭遇』(ともに現代書館)『ときめきの上海』『発音の基礎から学ぶ中国語 新装版』(ともに朝日出版社)『「感謝」と「謝罪」はじめて聞く日中“異文化”の話』(講談社)『講談社中日辞典<第三版>』『講談社日中辞典』(講談社)など。

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