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Q.93「疑問文の作り方をわかりやすく教えるには?」

この連載では、英語学習に悩みを抱える読者の方のご質問に、横本先生が懇切丁寧にお答えしていきます。先生へのご質問はこちらから。お気軽にご応募ください。
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Q.93「疑問文の作り方をわかりやすく教えるには?」

初めまして。 私は大学生で、個別指導塾で中学1年生に英語を教えています。先日、生徒に以下の並べ替えの問題を解かせました。

 (the/popular/is/restaurant)?

正答は“Is the restaurant popular?”なのですが、生徒は“is the popular restaurant?”と並べ替えていました。このような解答を作る生徒へは、形容詞の限定的用法、叙述的用法から教えるとわかりやすいでしょうか。または、5文型と併せて説明してあげれば良いでしょうか?

私が中学生の時は、はじめ文法用語はそこまで使われずに教えられた記憶があります。説明は丁寧で、授業でも何回も同じパターンの問題に触れることで解けるようになりました。個人的にもなんとなく英語の語順が分かってきてその時に5文型などの説明を塾のテキストで見て、改めて理解したという感じでした。しかし、教えている生徒の学年は学習指導要領が変更され、小学校の時から英語を学んでいるためか自分が学習していた頃に比べて新しい文を習うのが早く、文法は簡潔に説明されているのかなという印象があります。ただ、小学校でどのようなことをやったのか聞いてみると、私たちが経験した英会話と同じような内容で、文法などは習っていなかったようです。

このような状態の生徒には、どのように教えると理解してもらえやすいのでしょうか。高校の参考書にのっているような説明の仕方をすると、逆にわかりにくいかもしれないとも思っています。

長々とすみません。よろしくお願いします。(ととろ、18歳、学生)

 

 

近頃の文法指導の変化 -知識重視から実践重視へ-

文法指導については色々な方法があり、どのように教えるのか悩みます。私自身の学習経験は、現代の英語教育で推奨されているようなものとはかけ離れていて、結局は英語に関する知識ばかりが充実して、文法説明は出来ても、英語で話したり書いたりするところまでは習得できませんでした。その経験に鑑みて、教える立場になった今では学習した英語を使えるように教えたいと常に試行錯誤しています。

私のような経験をしてきた学習者は、日本中に大勢いると思います。実際に話したり書いたりするための英語を教えるため、学習指導要領は何度も改善されてきました。現在では、英語を使えるようになることを学習目標としているので、以前の文法説明ができるようになるための宣言的知識を習得するような教育はあまり行われていないかもしれません。学習指導要領に沿って、実践的な英語を身につけるようにカリキュラムも改善されてきているので、学校教育では明示的に文法を説明して教えるというよりは、Inputを通して、暗示的に文法ルールに気づかせるという手法も多く取り入れられているようです。これはどちらの方がいいという議論ではなく、学習者や教師のスタイルによって臨機応変に変えていくほうが重要だと思います。

 

疑問文の作り方はまず平叙文の確認から教えましょう!

さて、問題の生徒さんは、中学1年ですから、一般的には難しい文法説明をしてもなかなかピンとこないことが多いと思います。

Be動詞を使った文のYes/No疑問文を作成するには、主語とBe動詞を入れ替えるという指導方法をされる先生方も大勢いらっしゃいます。出題例にある(the/poluar/restaurant/is)?ですと、この中からthe popular restaurantが作れることに気づいた生徒さんは、この3語を一つの名詞句として捉えてしまい、他の見方が上手くできなくなってしまうかもしれません。これを名詞句と捉えてしまった場合、指導されている主語とBe動詞を入れ替えるという作業を行うと、この生徒さんの解答のようにIs the popular restaurant?となってしまいます。ここでおそらく違和感を感じるような直感はまだ芽生えていないので、これが不自然だと思わないこともあると思います。

この生徒さんに、疑問符を省いた形で、並べ替えをしてみてもらってください。つまり(the/popular/restaurant/is). の並べ替えです。これで、The restaurant is popular.という文が作成できない場合、形容詞の叙述的用法を指導するべきです。まず、この叙述的用法の平叙文を作成してから、主語と動詞を入れ替えるということにすれば、おそらく間違えないと思います。

 

文法は実践の中で身に付けさせる!

ただ、現在では、文法説明を聞いて理解することよりも、実際に言語活動として使いながら覚えていくことが求められています。並べ替えやドリルのような文法上の形を重んじた従来の英語指導方法だけではなく、文法説明はするものの、実際に読んだり、聞いたり、話したり、書いたりする中で新出の文法事項、語彙を使用することを目的とし、重視されています。

5文型や叙述的用法、限定的用法などという文法の説明上に使われるような専門用語はもちろん必要ないですし、中学一年生レベルの学習者であれば、なおさらパターン化したものに多く触れさせるほうが効果的かもしれません。短時間で多くの形の練習をするのはドリルが効果的だと思いますが、例えば、以下のような表で教えてみるのはいかがでしょうか。

 

Is

the restaurant

popular

?

the church

beautiful

the car

big

the bag

red

the flower

 

 

最初は上から順番、下から順番など、生徒さんが予測しやすい順で文を完成させていきます。たとえば、Is the restaurant popular? Is the restaurant beautiful? Is the restaurant big? というようにthe restaurantを固定して、形容詞の部分のみを変えて文を作ってみたり、Is the restaurant popular? Is the church popular? Is the car popular?のように主語の部分のみを変えて文を作ったります。予測しやすい順で、スムーズに英文が作れるようになったら、今度はランダムに単語を選んで挙げてそれを使って英文を作る練習をしましょう。Is the church red? Is the bag beautiful? のようにランダムに選ばれた単語を使ってもスムーズに文が作れるように練習しましょう。

ランダムな順番でもスムーズに文が作れるようになったら、これらの疑問文を使用しないと達成できないようなタスクをさせましょう。形容詞がメインで考えるなら、たとえば、カードを10枚用意します(画像のコピーなどでも構いませんが、裏からは見えない状態でカード程度の大きさだとやりやすいと思います)。その10枚のカードには、たとえば、大きくて黒い車、小さくて黒い車、大きくて赤い車、というように、様々な大きさと色の車が描いておきます。全カードを裏返しにして、その中から一枚引いて、生徒は、Yes/No疑問を使って質問して、そのカードを言い当てていくというような単純な遊びです。Is the car big? Is the car pink? Is the car red? のように、カードが言い当てられるまで質問を続けます。この際、文法が間違っている場合には必ず訂正してください。

このように明示的な文法説明はできるようにならなくても、反復によって身につけることもできます。試してみてください。

 

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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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