Q.119「ネイティブの細かい会話を聞き取るには?」
こんにちは。私は学生時代から英語が好きで、大学は経営学部だったので、英語を専門で勉強したわけではないですが、TOEICは800点を超えていて、比較的英語は得意な方だと思います。
今回、相談させて頂きたいのは、TOEICだと特にリスニングが得意で400点を超えているのですが、ネイティブの込み入った話がうまく聞き取ることができないことです。高校の友人の一人が国際教養学部を卒業していて、たまに彼女のアメリカ人の友達と遊んだりするのですか、ネイティブの話す英語を上手く聞き取れず苦労しています。
SVは理解できても、そのあとの微妙なニュアンスがわからない感じです。友人は留学経験があり、「英語はたくさん聞いていたら、いつか聞き取れるようになる」と言うのですが、やはり海外経験がないと難しいのでしょうか?海外に行かなくても、1日3時間くらい英語を聴いたり、音読をしていたら、聞き取る力は今以上に高まるのでしょうか?
よろしくお願いします。(みなこ、26歳、会社員)
聞き取れない原因を解明して対策を!
TOEICでは800点を超えていて、リスニングも400点以上ということは、相当努力されたのだと思います。しかも英語が専門ではないというところが本当に素晴らしいです。まず、その点についてはかなり自信を持っていただきたいですし、これまでの学習方法が合っていた証拠だと思います。
ここまでのレベルとなると、すでに色々試してきたとは思いますが、まだまだ上達する余地はありそうですし、今後の更なる学習のためにいくつかアドバイスさせてください。
英語を聞いた時に、脳が行う二つの処理
まずリスニングをしている際に脳の中で行っている二つの処理について紹介します。まずBottom-up処理です。これは音声情報を聞き取って、その情報を組み合わせて、個々の単語を認識するまでの処理のことを指します。初級者から中級者くらいまでの学習者は、このBottom-upに頼りすぎる傾向にあると言われています。音声情報とは言っても、子音、母音、イントネーション、リズムなど、大量の情報が短時間に耳に入ってくるので、この処理に頼り過ぎていると、聞き取りを上手く理解に繋げることは、それほど簡単なことではありません。
そこで重要なのは、もう一方のTop-down処理です。これは、すでに知っている知識や情報を基に、音声情報の意味を推測していく処理スキルです。これによって、会話の場面に応じてどのような内容のことが話されるかという可能性を絞って、耳から入った音声情報と組み合わせたり、聞こえない部分を知識で補ったりして、意味を理解することができます。上級者になると、このTop-down処理が上手く使えるようになります。
この二つの処理を踏まえて、何が聞き取れないのか、そしてどうして聞き取れないのかを突き止める必要がありそうです。まず、一語一語の単語は正確に聞き取れているのに、その意味が理解できていないパターンが考えられます。この場合、Bottom-up処理のうち、音声情報を単語に変換するところまでは出来ているのに、単語の意味が分からない、つまり語彙力が不足していることが分かります。個々の単語を理解していても、熟語などになっていれば理解できないこともあるので、どのような文脈で、それぞれの単語や熟語がどういう意味で使用されているのか理解できるように練習することが重要です。
また、実際にネイティブと話しているときに理解出来なくなることがあれば、その単語や熟語の意味を聞いてみるといいでしょう。私自身も聞き取れたのに単語や熟語表現の意味が分からない場合には、よく本人に意味を聞いて確認していましたし、それがとても役に立ったと実感しています。
聞き取れない音は、文法知識で補おう!
一方、何と言っているのか分からないパターンもあります。これは、個々の子音や母音の聞き取りが難しいことや、子音や母音が連続で発音されると音が繋がってしまい、単語と単語の区切れ目が分かっていないのが原因です。また、基本的な音の繋がりは理解できていても、スピードについて行けなくて処理仕切れないということも考えられます。この場合はBottom-up処理スキルを磨く必要があります。ディクテーションやシャドーイングなどで、すべての単語が聞き取れているかどうか確認できる練習をすると少しずつ上達していきます。
ただし、英語には弱勢で弱く曖昧に発音される部分が多くあります。簡単な例を使うと、The important information can be found ( ) the paper. の空欄部分は弱勢であまりはっきりと聞こえないと思いますが、文法知識を使えばここにはinが入ると分かります。ナチュラルな英語を聞くとき、すべての単語やすべての子音や母音を聞き取るのはほぼ不可能です。聞き取りの力に頼るのではなく、文法知識などを使って曖昧に聞こえてくる部分を補っていく、つまりTop-down処理スキルを身につける必要があります。
「セリフ」でない英語教材で、実践力を磨こう!
これらのリスニングの際に使う二つの処理以外にも、実際にネイティブが話す英語が上手く理解できない場合もあります。それもいくつか原因が考えられます。まず、実際にネイティブが話す英語が、テキストや問題集で登場するようないわゆる綺麗な英語でないことが原因です。これまで英語学習で利用してきた教材のほとんどは、予めセリフが書かれていて、文法的にも語彙的にも適切なもののみが使用されています。日本人が普段話している日本語を想像すると分かりやすいかも知れませんが、外国人が使用する日本語の教科書に載っているような日本語を話しているのは、原稿を読んでいるアナウンサーなどであって、休憩時間や会食の場で同僚が話す日本語はもう少し砕けた表現だと想像出来ると思います。全く同じことが英語の教材でも言えます。したがって、通常書店などで手に入れられる教材やニュース番組などではなく、たとえばドキュメンタリーやトーク番組、報道番組内のインタビューなど、セリフが準備されていないトークを教材としてリスニングの練習をすることをオススメします。
確かに現地に行っていわゆる一般人と交流をすれば、そのような生の英語に触れる機会が増えますので、上達するのは早いと思いますが、現在では、全くの素人が準備なしに話している映像や音声がインターネット上で簡単に手に入ります。それらを利用して、テキストにあるようなお手本のような英語ではない英語に触れる機会を増やしてみて実践力を磨いてください。応援しています!
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