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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.120「必見!thatを正しく見分ける方法」

My parents will be happy to hear that you will.の中のthatは何の役割でしょうか。接続詞だとおもうのですが、教えて下さい。(Genki、50歳、主婦)


 

thatの基本的な用法を抑えて、内容理解に役立てましょう!

文中のthatは、形容詞、代名詞、副詞、接続詞というように様々な品詞になり得るので、区別をするのはなかなか難しいと思います。しかも、それぞれの品詞にも複数の用法があって、かなり複雑です。それらを細かく分類して、言語学的に学習するのは言語学者には必要ですが、実用的な使用の場合には不要です。基本的な用法を理解して、意味を正しく解釈したり、表現できたりすれば良いので、ここでは実用的なコミュニケーションに必要な内容、つまりthatの基本的な構造や意味について簡単に紹介させてください。

 

名詞節を導くthatの見分け方

まずご質問いただいた英文です。

My parents will be happy to hear that you will.

この文中のthatの前後を見てみましょう。まずthatの前には動詞hearがあります。このhearは自動詞にも他動詞にもなりますが、hearの後に、目的語となる名詞になりそうなものがあるので、他動詞です。つまり、「何かを」聞くことになる訳です。その「何か」の位置にthatがあります。そして、thatの後には主語と述語を含むyou willがありますから、「あなたがしようとすること」がその「何か」に当たることが分かります。

つまり、このthatは接続詞で、that節を導き、that you will全体で名詞の役割をしています。この英文ではyou willの後に続く内容の記載がないので、その判断が難しかったかもしれませんが、you willの代わりにyou will help them.のような完全な節があればもう少し分かりやすかったと思います。

このように名詞節を導くthat節は、文中の名詞の代わりに使われるので、他動詞の目的語の位置以外にも、主語の位置(例文1)や補語の位置(例文2)で使われることもありますし、また、the factやthe proofなどの後ろに続いて、それぞれの事実や証拠の内容を表す同格節(例文3)としての役割があります。

例文1:That Michael is doing well makes us happy.

   (マイケルが元気でいることは私たちを幸せにする。)

例文2:The reason is that this shirt is pretty.

   (その理由はこのシャツが可愛らしいからだ。)

例文3:Everybody should know the fact that Kim is popular.

   (キムが人気者だという事実をみんな知るべきだ。)

これ以外に非常によく使われる名詞節としてのthat節があります。そのうちの一つが例文4のように形式主語のitを使った構文です。

例文4:It is important that we make every effort.

   (我々が全力を尽くすことが重要だ。)

これはthat we make every effortの内容をitが先に言い換えていて、is importantの主語となっています。

 

副詞節を導くthat

また、接続詞thatは副詞節を導くこともよくあります。

例文5:Sara was so happy that she could cry.

   (サラは泣けるほど嬉しかった。)

例文6:Sara was so happy that she found a great job.

   (サラは良い仕事を見つけてとても喜んだ。)

例文5はso happyの程度を表す副詞節を導くthatですが、例文6はso happyの理由を表す副詞節を導くthatとなっています。構造は同じですが、thatが導く節の内容によって、程度、目的、理由などを表現することができます。

 

節中の何かが足りてない関係代名詞のthat

次に接続詞のthatとよく混同してしまう関係代名詞のthatについてです。関係代名詞のthatが導く節は、節として不十分です。これまで紹介してきた例文1から6のthatが導く節は文の構成要素を必要最低限持っていて、単独で節として成り立つものばかりです。しかし、関係代名詞のthatが導く節は、文の構成要素の何かが欠落しています。

例文7:I saw the cloud that was moving so fast.

   (私はとても速く動いている雲を見た。)

例文7のようにwas moving so fastは主語の部分が欠落しています。その部分となるのが関係代名詞thatで、そのthatは先行詞のthe cloudを言い換えています。

 

接続詞のthatと関係代名詞のthatの見分け方!

この接続詞のthatと関係代名詞のthatを構造上で見分けるのにとても良い例が強調するときに使う構文です。

例文8:It was last Saturday that I lost my wallet.

   (私が財布を紛失したのは先週の土曜日だった。)

例文9:It was my wallet that I lost last Saturday.

   (私が先週の土曜日に紛失したのは財布だった。)

例文8では、last Saturdayという時を表す副詞句を強調していて、thatが導く節は主語、動詞、目的語をすべて持つ独立した節です。この場合、thatは接続詞です。

一方、例文9では、強調しているのがmy walletという名詞句で、thatが導く節I lost last Saturdayにはlostの目的語(my wallet)が欠落しています。従って、このthatは関係代名詞と見分けることができます。

 

代名詞のthatとその他の用法

そして代名詞としてのthatの用法としては、例文10のような単純に離れたものを指して、「それ」とか「あれ」を表すthatもありますし、例文11や例文12のように、何か二つのものを比べている場合などに、前述の名詞の繰り返しを避けるためにthatを用いることがよくあります。

例文10:That’s my sister.

    (あれは私の妹だ。)

例文11:The taste is just like that of beef.

    (その味はちょうど牛肉のようだ。)

例文12:The population of Yokohama City is larger than that of Osaka City.

    (横浜市の人口は大阪市の人口より多い。)

さらに形容詞や副詞としての用法がありますが、これらは単純に後に続く単語が名詞であれば形容詞で、後に続く単語が形容詞なら副詞と考えていいでしょう。

例文13:Can you see that car?

    (あの車が見えますか。)

例文14:This ice cream wasn’t that sweet.

    (このアイスクリームはそれほど甘くなかった。)

例文13では、離れたところにある車を指して、「あの車」というように、車を特定するための形容詞としてthatが使われています。例文14ではsweetがどの程度の甘さなのかを表しているので、形容詞を修飾する副詞として使われています。

thatに関してはこれですべての用法を説明した訳ではありませんが、実用的にコミュニケーション上で理解する、あるいは使用するためなら、今回紹介した用法は抑えておくと後の英語学習にも役立つと思います。また、どの品詞か分からなくても意味を正確に理解できていれば十分なので、それほど心配せずに学習を進めてください。

 


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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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