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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.134「一人でできる!発信力を高める練習!」

去年TOEICテストのスコアが900点を超えました。ですが、発信が苦手で一向に英語ができるようになった気がしません。今まではTOEIC対策の勉強ばかりしてきて、話したり書いたりは正直なところ疎かにしてきた自覚があります。ですが、勉強方法がよくわかりません。大学生であれば授業の課題をこなして先生に見てもらったり、同級生と会話したりできるのだと思いますが、一人ではどのように勉強していけば良いでしょうか。(まいまい、会社員)


 

スピーキング力向上には、会話とモノローグで別の練習が必要!

昨年、TOEIC Listening & Reading Testのスコアが900点を超えたとのこと、おめでとうございます。900点越えは高得点ですから、これまでやってきた英語学習が実った証だと思います。一方、ご自身でも自覚されていらっしゃるように、TOEIC Listening & Readingの対策だけにフォーカスすると、やはり、スピーキングやライティングなど発信する方の英語の練習は疎かになりがちです。せっかく高得点を得たわけですから、それに見合ったスピーキング力とライティング力を身につけたいですよね。ここでは、それぞれ一人でもできる練習方法を紹介させていただきたいと思います。

 

毎日のほんの数分の練習がスピーキング力を上げる!

まずはスピーキングの練習方法です。スピーキングと言っても、2人以上でやり取りする会話と1人で話すモノローグの2種類に分けられます。どちらのスピーキング力も身に付けたいので、それぞれ違ったアプローチで練習することをおすすめします。

会話の練習に関しては、言うまでもなく会話する相手がいることがベストです。ただし、日本に住んでいて、友人や同僚に英語を話す人がいない場合、話し相手を見つけるのは容易ではありません。もちろん、英会話教室やオンライン英会話といった有料のレッスンもたくさんあるので、習い事として英会話を始めるのも悪くはないと思います。

ただ、英会話レッスンとなると、講師の質が必ずしも良くないことがあります。そして、週に1時間だけのレッスンといったような、非常に限られた時間の練習になることも少なくありません。授業中はその場でわからないことを講師に質問することができますし、グループレッスンであれば同じ目標を持つ仲間に出会えることもあり、英会話レッスンならではのメリットはあります。ですが、費用と学習の自由度を考慮すると、それほどの効果を期待できない可能性もあります。

一方、ある程度のリスクはありますが、現在では同じような目的を持った学習者とオンライン上で知り合うことができます。SNSやアプリを使って、同じように英語会話の上達を目標にしている人と知り合って、SNS上で会話することもできます。これは目標が同じであれば、相手は日本人である必要はないので、たとえば、日本に興味を持ってくれているタイ人と英語で会話をしたりすることもできます。

個人情報を流出しないように注意する必要がありますが、英会話を練習したい人は世界中にいるので、オンラインで会話の相手を探すのも悪くはない方法です。特に、TOEIC900点という基礎的な高度な知識を持つ学習者の場合、これまでの学習で相当量の語彙表現や文法知識が蓄積されています。会話練習はそれを引き出すきっかけになるでしょう。

ほんの数分でもいいので、とにかく毎日英語を話す時間を作るのが最優先です。研究では、話す相手がネイティブスピーカーであってもなくても、同様に上達することが分かっていますから、どこの国の人でも構わないので、とにかく毎日話す練習をすることを強くおすすめします。

※メッセージをやり取りするアプリでは、本来の用途とは異なる目的で利用する人もいます。実際のやり取りには、くれぐれも気を付けましょう!(編集部より)

 

モノローグを録音して、素早く話す練習を!

次に、モノローグの練習方法を紹介します。モノローグの練習には録音がおススメです。最初は、例えば、昨日朝起きてから寝るまでの1日を3分間で話すなどのタスクを自分で決めて、それを録音しましょう。録音したら、1度それを聞いて、修正すべき箇所はないか考えてから、また同じ内容について話しましょう。ただし、2回目は1回目より早く話せるよう2分間で話すようにし、同じように録音します。そして、同様に再度聞き修正点を探して、3回目の録音をしましょう。3回目はできるだけ、すべての内容を1分間で言い切れることを目標に頑張ってみてください。

この練習は、流暢さを向上させる練習方法であり、重要なポイントが3つあります。まず、辞書などを使わなくても自分自身の持つ英語力で表現できるような簡単な内容について話すこと。そして、必ず同じ内容を繰り返し練習すること。そして、最後に、時間を測って早く話すためのプレッシャーを課すこと。この3つを取り入れたスピーキング練習方法によって、英語を話す流暢さが向上していきます。

ただし、スピーキングのときに洗練された表現を使いたい場合もあります。たとえば、フォーマルな場面でのスピーチやプレゼンテーションなどの場合には、皆さん予め準備をしていく場合も多いですし、使用される表現も多少レベルの高い表現を使うこともあります。そうした場面を想定する場合には、たとえば、「フードロスを削減するにはどのような方法が考えられるか」といったように、比較的真面目なトピックに関するモノローグを練習しましょう。こちらは流暢さが目的とは限りませんから、徐々に早く話す先ほどの練習とは異なり、3回とも3分間といったような同じ制限時間で行いましょう。自身の意見をまとめながら話し、最初の3分間の録音を終えたら、それを聞いて、表現の見直しをし、2回目も3分間で録音し、さらに表現を見直し、3回目も3分間で録音をするという練習方法がいいでしょう。できれば、1回目の録音を聞き直した際に、内容を書き取り、生成AIなどを使って添削してもらうといいでしょう。その際に、たとえば、「TOEIC900点以上のレベルの人のスピーキングとして相応しい表現で校正する」というような細かい指示が出せるので、色々試してみるといいでしょう。TOEIC900点あれば、校正された文章をどの程度受け入れるかどうかの判断ができるはずなので、有効な練習方法だと思います。

とにかく、上達の最大のコツは毎日続けることです。短時間の練習でもいいのでとにかく毎日練習してみてください。

 

生成系AIを手本に、自分でカスタマイズする!

ライティングの練習方法としては、もちろん、英文添削などのサービスがありますし、担当の添削者によって、言いたいことをうまく伝える方法だけでなく、ライティングの種類や書き手と読み手の関係なども含め、ちょっとしたニュアンスなどを指導してくれたりするサービスもありますが、英文添削は時間がかかりますし、添削費用もそれなりに必要になってきます。

作文を書いてから添削が返却されるまでの時間と費用を考慮すると、生成AIを利用しないというのはもったいないと思います。昨今の生成系AIの発展は目覚ましく、とくに英文であれば、高いレベルで文法チェックや語彙の使い方などのチェックができます。

さて、英語のライティングとは言っても、読み手がいない想定の日記、SNSへの投稿、ビジネス上のEメール、論文など様々なジャンルがあります。ジャンルが異なれば、そこで使用する語彙表現も異なるので、目的に合わせて表現を変えていく必要があります。

また、英文の構成は、和文の構成と異なることもあります。そのため、どのように文章を組み立てていくのかについても学習する必要があります。これらの異なる語彙表現や文章構成に関する知識は、これまで学習で相当量行ってきたリーディングによって、すでにある程度知識があるはずですが、ライティングの学習では、それらにフォーカスして学ぶといいでしょう。たとえば、仕事上のメールであれば、件名の書き方、書き出しのあいさつ文、自己紹介文、要件のまとめ方、依頼文の書き方などに加え、またそれぞれの要素をメール文中のどこに配置するのが自然なのかなどを学習するといいでしょう。

ここで実際に生成系AIに手本を書いてもらいましょう。架空のシチュエーションで構わないので、具体的な社名、担当者名、要件、会社の業務内容などを考えてみましょう。

ここでは、取引先の会社が、環境に優しいオーガニック石鹸や洗剤を製造している会社で、自分は、製品が環境に及ぼす影響について研究している組織の研究者だと仮定します。そして、メールを書くのに必要な情報を以下のように箇条書きにし、それを生成AIに入力して、英文メールを書くように指示します。

...................................................................

取引先の会社名:Asahi Soap Factory

担当者:Chris Schneider

担当者の部署:Product Development Department

自身の所属:The Environmental Protection Agency

自身の名前:Hanako Tanaka

職位:Senior Researcher

要件:先月依頼された新しいオーガニック台所用洗剤の研究が完了したので、その結果を添付で送るので内容を確認してほしい。

何か不明な点などがあれば、2週間以内に連絡が欲しい。

...................................................................

 

実際に出力された英文メールは以下の通りでした。

 

Subject: Research Results for New Organic Kitchen Detergent

 

Dear Mr. Schneider,

I hope this email finds you well. As requested, I am pleased to inform you that the research on the new organic kitchen detergent, which you commissioned last month, has been successfully completed. The results are attached to this email for your review.

Should you have any questions or require further clarification, please do not hesitate to reach out within the next two weeks. I would be more than happy to provide any additional information you may need.

Thank you for your attention, and I look forward to hearing from you soon.

Best regards,

 

Hanako Tanaka

Senior Researcher

The Environmental Protection Agency

 

【和訳】

件名:新しいオーガニック台所用洗剤の研究結果について

 

シュナイダー様、

ご健康をお祈り申し上げます。ご依頼いただいた通り、先月発注していただいた新しいオーガニック台所用洗剤の研究が無事完了いたしました。結果は本メールに添付しておりますので、ご確認いただければ幸いです。

何かご質問やさらなる説明が必要な場合には、2週間以内にお知らせいただければ幸いです。追加の情報を提供させていただきます。

ご対応いただきありがとうございます。ご連絡をお待ちしております。

 

敬具

 

田中花子

主任研究員

環境保護庁

 

このようにかなり高い精度でメール作成をしてくれるので、手本として参考にできます。従来の学習では、自分が書きたい内容とは異なるメールなどを参考に学習することしかできませんでしたが、この方法を利用すると、書きたい内容を反映した手本が作成されるという点が大きな利点だと言えます。そして、出来上がった手本をそのまま参考に学習するのもいいのですが、さらに条件を加えることも可能です。例えば、この相手ははじめて依頼されたクライアントなので、印象をよくするために「少しフォーマルな表現に変える」ように指示すると、以下のように書き換えてくれました。

 

【すこしフォーマルに書き換えられた英文】

Dear Mr. Chris Schneider,

 

I trust this email finds you in good health. As per your request, I am pleased to inform you that the research on the recently commissioned organic kitchen detergent has been successfully completed. The results are enclosed herewith for your perusal.

Should you have any queries or require further clarification, please feel free to reach out within the next two weeks. I am at your disposal to provide any additional information you may need.

Thank you for your attention, and I look forward to hearing from you soon.

 

Best regards,

 

Hanako Tanaka

Senior Researcher

The Environmental Protection Agency

 

このように、シチュエーションに応じて語調などを変えるという指示にも対応してくれるので、同じ内容の英文でも、別の表現を使用して印象の異なる英文を作成することができます。これは上級者にはとても便利な学習ツールだといえます。もちろん、ご自身で書いたものを添削してくれるので、手本などを見なくてもある程度書ける文章の場合、自力で書いてそれを添削するように指示すると、修正案を出力してくれる上に、指示を出せば、どこをどう修正したか、それぞれの修正の理由なども聞けるので、いわばチューターのような役割もしてくれます。

実際に出力された英文は必ずしも完璧なものではありませんが、上級者であれば、その英文が自分の意図した内容を反映しているものかどうか、自分の目的にあった語調で書かれているかどうかなどの判断ができると思います。生成AIを使用したライティングの学習はおススメです。是非試してみてください。

 

★編集部のおすすめアプリ★

・Hello Talk

英語を母国語とする学習者と手軽に会話ができるアプリです。テキストメッセージのやり取りはもちろんですが、アプリ内のボイスルームから自分に合ったレベルと内容の会話に参加することが可能です。メッセージを送る前に文法をチェックする機能もあるので、上手に使いこなせば、英語での表現力を向上させることができます。

※無料でも使用できますが、広告が流れます。Hello Talkに限らず、メッセージをやり取りするアプリでは、語学学習以外にも様々な目的で使う人がいます。メッセージに不審な点を感じたらすぐにやり取りをやめるなど、くれぐれも気を付けて使いましょう!

 


★編集部より★

英語学習に質問やお悩みのある方は、ぜひ横本先生にご質問を。一人で考えて答えが出る悩みもあれば、悩み続けて時間が経ってしまうことも多いと思います。ご質問はこちらから。ぜひお気軽にお聞かせください!


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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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