朝日出版社ウェブマガジン

MENU

教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.104「憧れだけで語学留学をしようとしている友人がいるのですが...」

友人が会社を辞めて3ヶ月カルフォルニアに語学留学をしに行くと言っています。

彼女は疑問文の作り方も知らないような子なのですが、なんとか勢いで乗り切ろうと思っているようです。このままでは、せっかく3ヶ月行っても何も身に付かないと思うので、せめて基本的な文法や語彙は身につけた方がいいと言っているのですが、聞く耳を持ちません。

先生のご経験で、英語が出来ないのに留学して失敗した例などあれば、彼女に戒めとして聞かせてあげたいです。加えて、どうしたら彼女に勉強してもらえるようになるのか、良い方法があれば教えていただけますでしょうか?

よろしくお願いします。(みり、27歳、会社員)


 

留学する目的を見直し、渡航前に準備を!

留学をしたいと考えている方は少なくありません。とはいえ、留学は時間も費用もかかりますから、それなりの覚悟と決心が必要です。留学体験を成功へと導くのは、それほど簡単なことではなさそうです。ご友人の方は語学留学を考えていらっしゃるそうなので、ここでは語学留学に焦点を当てて私なりの考えを述べさせてください。

 

まず、語学留学の目的についてです。人によって語学留学の目的は異なるような印象があります。極端な例かもしれませんが、中には真剣に言語習得を目的としていて、留学先でも話す相手が現地の人だろうが日本人だろうが、徹底して英語しか話さないという方もいます。このような方は、日本人以外の留学生や現地の人との交流の機会が多くあり、言語習得という目的もある程度達成できる傾向があります。

逆に、留学先の学校が始まったらすぐに、そこで出会った日本人たちと仲良くなり、学校でもそれ以外でも日本人同士で生活をして、日本に住んでいるのと大差ない生活を送る方もいます。このような方々の場合は、語学習得という点で考えると大した結果を期待できませんが、留学先で知り合った日本人との交流は帰国後も続くことも多く、それなりに充実した留学体験を得られます。

 

本気なら日本人のいない都市に!

次に、留学先選びです。留学の目的によっては、留学先選びも重要になってきます。言語習得を真剣に考える場合には、留学先に日本人が多くいるようでは、学習の妨げになってしまいますから、日本人があまりいない都市を選ぶことが成功の秘訣です。現在の英語のレベルにもよりますが、留学先で日本語に頼らず生活することがやはり言語習得を成功させる近道となります。それに反して、言語習得は二の次でとにかく海外での生活を楽しみたいという場合には、困った時にすぐに頼れる日本人がいる大都市に留学するのが無難です。大都市ですと、学校以外に楽しめる場所が多くありますし、観光地へのアクセスも便利なことが多いので留学先での生活を大いに楽しめると思います。ご友人の場合は、カリフォルニア州への留学を考えていらっしゃるようですが、カリフォルニアは留学先としては人気のある場所になります。ロサンゼルス、サンディエゴ、サンフランシスコのような大都市は言うまでもなく、他の中型都市でも相当数の日本人がいます。言語習得という点では、日本人と話すときにも一切日本語を話さないという強い意志がないと、なかなか思うような結果は望めないかもしれません。

 

短い期間で習得できるものは多くない。

さらに、留学期間も重要なポイントです。3ヵ月間という限られた時間で習得できる英語には限りがあります。極端な例でイメージしてみるといいと思いますが、一般的に言語習得が早いと言われている子どもが、基礎知識なしに英語圏の学校に転校して3ヵ月通学するとします。現地の学校なので、もちろん日本語を話せる友達もいないですし、少なくとも学校では毎日英語漬けの生活を送ったとしても、3ヵ月では習得できる英語はかなり限られます。日常会話もままならないレベルで終えてしまうどころか、言葉が通じないストレスで早く日本に帰りたいと思う可能性も高いです。日本にいる日本人の子どもの日本語の習得に置き換えて想像するとさらに分かりやすいかもしれません。小学校に入学して6月の終わりまでの3ヵ月間の間に、どれくらい日本語が上達するでしょう。言語習得が早いとされる子どもですら、3ヵ月間では習得する語学力は限られています。ましてや成人が、英語の基礎知識なしに英語圏に留学して3ヵ月で学べる英語となると、わずかだということが想像できると思います。

 

基礎知識を付けてから、いざ留学へ!

それでは、留学準備としてどれくらいの英語基礎知識を身につけるべきなのでしょうか。一般的に、英語で授業を行う場合、基本単語500を覚えてからでないと、大した効果が期待できないと言われています。授業で扱う教材を理解するのはもちろんですが、先生やクラスメートが話す英語も理解できないのでは、教室にいる意味が無くなってしまいます。英語学習は英語で書かれたもの、あるいは話されたものを理解することから始まります。理解しないと言語学習は起こりません。したがって、学校で使用するテキスト、教師が話す英語、クラスメートが話す英語を理解するのに必要な基本語彙は、日本語を介してでも身につけることを強くオススメします。ここでいう基本単語500というのは、派生語を含めて1語と数えるので、たとえば、strong, strength, stronglyを1語と数えます。このようにして基本単語500語が登場した際に、日本語に訳さず、英語のままスラスラ意味が理解できるようなレベルになっておくことが留学準備として必要となります。

 

ご友人の留学の目的を今一度見直して、留学がご自身の目的に合っているかどうか、そして、留学するならその準備が出来ているかどうか、改めてお話されてみてはいかがでしょうか。

 


●担当編集より:英語学習に質問やお悩みのある方は、ぜひ横本先生にご質問をお寄せください。一人で考えて答えが出る悩みもあれば、悩み続けて時間が経ってしまうことも多いと思います。ご質問はこちらから。ぜひお気軽にお聞かせください!
英語お悩み相談室 質問受付フォーム  

バックナンバー

著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

ジャンル

お知らせ

ランキング

閉じる