Q.80「英文のチェックにGoogle翻訳を使えるのか?」、Q,81「洋書にチャレンジするためのトレーニング法」
この連載は、英語学習に悩みを抱える読者の方のご質問に横本先生が懇切丁寧にお答えしていきます。先生へのご質問はこちらから。お気軽にご応募ください。 |
Q.80「英文のチェックにGoogle翻訳を使えるのか?」
英検の勉強をしているのですが、周りに英語のできる人がいないので、英作文問題で書いた英文をチェックするために、Google翻訳を使えないかと考えています。もちろん、機械なので完全には信頼できないかもしれませんが、たまに使ってみるとなるほどと思うこともあり、日本語で書いた英作文を英訳にするのに使えないでしょうか?
英訳しないで英文から学び英文で表現する
機械翻訳の精度は確かに改善されています。機械が読み取れる文脈の基となるデータが多ければ多い程その精度が増すと考えられるので、これまでの蓄積データのお陰で、ある程度日本語を英語に翻訳することが可能になりました。しかし、未だに、日本語特有の言い回しや比喩表現、そして省略されている主語を上手く解釈できないことも少なくありません。すべての文と節に主語や目的語などを省略しないで、英文を直訳した日本語のような文を書いてから、機械翻訳を通してみると上手くいくこともあるかも知れませんが、どれほどの精度で翻訳されるのかは未知数です。
課題を仕上げるのに十分な時間がなくて、機械翻訳に頼った学生の作文を読むと、明らかに機械翻訳を使って書いているとわかってしまう程です。私自身Google翻訳を使用したことはありませんが、正直にGoogle翻訳を使用して課題の作文を書いたと話してくれた学生は毎年若干名いますし、やはり英作文の課題として提出できるようなレベルではないので、結論から言えばGoogle翻訳で英文の添削をするのはオススメできません。
ここで、提案をさせてください。ライティングをする際には、日本語で考えて英訳するのを止めてみてはいかがでしょうか。先ほども言いましたが、日本語特有の表現を英訳するのは簡単ではありませんので、英文で見たことのある表現のみを使用して作文できることが望ましいです。そうすれば、英語らしい表現のみで作文が書けるようになります。英作文を書く際、使ったことのない単語が正しく使えるかどうか不安だと思います。最近では、実際に英単語が使用されている英文を大量にデータとして取り込み、それぞれの単語の使用方法を学ぶことが推奨されています。これを大量データのことをコーパスと言いますが、各英単語の共起表現を検索できるシステムがあります。このコーパス、共起表現を用いて新しく使う単語がどのような単語と共に使用されているか、複数の例文から学んで、自然なコローケーションを身につけることで、新しい単語の正しい使用方法が身につきます。
そして、作文を書いた後、どうしても周りに英文のチェックをしてもらえるような人がいない場合、最近ではオンラインでチェックできるものもあります。文法チェックの機能も、信頼できるものとそうでもないものがあるので、無料文法チェックなどのキーワードで検索してヒットするものの中で、レビューなどを読んで信頼できるものを利用するのはいかがでしょうか。翻訳に特化したものではなく、文法チェックに特化したサービスの方が英文をチェックするという目的に合っていると思います。
機械にしろ、ご自分で作文を書く際にしろ、翻訳という作業をしないで、できる限り英文で覚えた表現をそのまま英文で使用し、その表現を蓄積していくというのが理想的な学習方法だと思います。そして、無料文法チェックサービスも利用して、継続学習してみてください。応援しています!
Q,81「洋書にチャレンジするためのトレーニング法」
今人生で初めて洋書にチャレンジしています。読んでいるのは“Range”というビジネス書?なのですが、ページによっては15回くらい単語を調べないといけないこともあり、めげそうになります。自分は英語は割と得意なほうで、大学受験の時も英語を武器にしていましたし、T O E I Cのスコアも700点を超えてますが、リアルな英語に触れると、わからないことが多いです。あらためて学校の英語はやさしかったと思うのですが、リアルな英語を理解できるようになるにも、苦しくても1冊読み切ったほうがいいですか?それとも、単語帳とかで勉強してから読んだほうがいいですか?よろしくおねがいします。
多読でGraded Readersの最高レベルまで挑戦してみましょう
英語学習が進んでくると、いつか洋書にチャレンジしたいという気持ちになる方も少なくありません。洋書といっても様々ですが、専門的な内容になるものは比較的難しいと言えます。それはその分野について新しく学びたいという読者のニーズに応えている、つまり、英語を通して何かを新しく学ぶことを要求されているからです。小説などでは、文学的な描写など難しい表現も少なからず含まれていますが、読者が親しみやすくイメージしやすい内容で、読者が共感できるように書かれているので、理解しやすさという点では、同じ洋書でも専門書と小説では大きく違ってきます。
TOEIC700点を超えているので、確かに中級者以上のレベルではあるのですが、よく語学力を表す指標として用いられるCEFR(Common European Framework of Reference for Languages)のA1~C2で表すとまだまだB1レベルを逸脱できていません。これは身近な話題についての理解力があることを示すレベルで、ビジネス書など専門性のある読み物をスラスラ読むレベルにはまだ達していないことを表します。専門分野は様々ありますが、ご自身の専門分野の文章の内容を理解できるにはB2レベル、TOEICでいえば785点以上、が必要になってくると言われています。もちろんこれはあくまでもB1とB2の境界線レベルなので、さらに高いレベルであることが望ましいといえます。
確かに、学校で使用するテキストで使用できる単語は限られていますし、文構造もそれほど複雑なものを使用していないのは確かです。そのほうが英語を学ぶという目的を達成できるからです。テキストのように内容はあまり変えず、使用する単語や文構造を簡略化した本があります。Graded Readersというものですが、こちらで多読に挑戦してみるのはいかがでしょうか。知らない単語はいくつか登場するけれど、辞書等を使わずにスラスラ読み進められるレベルの本を選び、ひたすら内容を楽しみながら読んでいきます。すると辞書を使っていないので訳すことはできないかもしれませんが、知らなかった単語も意味が理解できるようになり、続ければ数ヶ月でB2には達成しそうです。Graded Readersとして出版されているものには小説が多いのですが、最近では有名人の自伝や実用書などもあります。また、出版社によってレベル設定が若干違いますが、最高レベルのものでは大体C1レベルとなっていて、かなり難しいレベルとなっています。現在はB1レベル程度だと思いますので、そのレベルにあったGraded Readersを読み進めて、最高レベルのものに挑戦し始めた頃に、今お読みのRangeなど、ご自身の興味のあるものを読んでみてはいかがでしょうか。それまで、目標を見失わないようにRangeを目立つところに飾っておいて、それを読む日が来るまでGraded Readersで多読学習をしてみてください。