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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.130「英語のニュースやWikipediaをすらすら読みたい!どんな学習方法が良い?」

海外のニュース記事やウィキペディアをすらすら読めるようになりたいと思うのですが、今の段階ではなかなか難しくて、1つの記事を読み終えることができません。単語力が足りないとは感じるのですが、単語帳で1つ1つ覚えるのは苦手で、何か他の方法がないかなと 思っています。読むのが早くなる練習法や、学習方法にはどのようなものがありますか?ちなみにTOEICのスコアは、500点台後半です


 

記事を使ってリーディングも語彙も学習しましょう。

海外のニュースやWikipediaの記事は、もともと学習者用に書かれたものではないので、これまで読んできたテキストや試験問題とは違って難しいと感じる印象があると思います。その難しさの理由について少し説明させていただいて、これらを読むことを目標としたリーディングの練習方法について紹介させていただきます。

まずニュース記事が難しいと感じるのは、語彙が難しいとも考えられます。これはテキストでも同様です。ただ、決定的に違うのがニュース記事に書かれている内容です。海外のニュースは日本のニュースではないので、そもそも書かれている記事の背景についての知識が不足しています。人名や地名なども、すんなり理解できないことも少なくありませんし、ある事件のこれまでの経緯について知らないと理解するのは簡単ではありません。このように、語彙力や文法力だけでなく、ニュースに書かれている内容に関する予備知識がないとスラスラ読めるようにはなりません。

 

Wikipediaの記事は難しい?

また、Wikipediaの記事が難しい理由もいくつか考えられます。まず、Wikipediaの記事は誰でも書けるという点です。これは、書くことで正確に情報や内容を伝えることを本業としていない方が書いていることもよくあり、書かれている文章が、必ずしも優れているとは言えないので、内容理解が簡単ではないことがあります。また、Wikipediaの記事を読むときには、単に英文を理解するというよりは、知らない概念などについて英語で学ぶことになります。これは、たとえば、イギリスの学校で心理学のクラスをとって、その教科書を読んで、心理学の概念を英語で学んでいるのと同様の運用能力が要求されているということです。Wikipediaで読むものを選ぶ際には、全く知らない事象についての記事を読むのではなく、知っていることについて書かれている記事を選ぶと、比較的理解しやすく、読みやすいと思います。それでも、Wikipediaは英語学習者用に書かれた教材ではないので、英語表現の学習や語彙の学習のために役立つ読み物になりますので、是非チャレンジしてみてください。

 

基礎ができたら、読み物から語彙学習を!

さて、ここからはリーディングの学習方法について紹介させてください。語彙力アップはどのような記事を読むのにも必要です。ただ、市販の単語帳などでの学習は初級者用の基礎単語ではある程度の効果はあると思いますが、ある程度読めるものが増えてくると、語彙学習も読み物から学んだ方がいいと思います。それは、語彙を単体で覚えるという学び方より、文章の中で実際に使われている単語や表現を学んで理解した方が、後にその単語や表現を使うための土台となってくれるためです。とはいえ、反復、とくに多少の時間を空けた反復がないと語彙学習はうまく進まないので、そのための方法を紹介します。

 

語彙学習用のノートを作り、反復学習を!

まず、語彙学習用にノートを一冊準備します。シンプルに罫線の入ったどこにでもあるノートがいいと思います。ノートの各ページの左端から5cmほどのところに縦に線を引き、単語を書き込むスペースを作ります。それができたら、読みたい記事を一つ選びます。せっかくなのでニュース記事でもWikipediaの記事でも構いませんが、オンラインのものは同じ記事を後で探すのが大変だったり、修正が加えられたりすることがあるので、プリントアウトして使用するのがいいでしょう。記事を印刷したら、それを読み進めながら、知らない単語や表現が出るたび、それをノートの左端にリストのように書いていきましょう。ここで重要なのは、記事に直接書き込みをしないことです。後に、この記事を英語だけで読めるかどうか確認する必要があるので、その時に書き込みが学習の最大の邪魔になります。何も書き込みをしないきれいな状態で記事を読み進めていき、単語の意味などは、単語ノートに書き込むようにしましょう。そして、単語ノートに書いたそれぞれの単語の意味、発音を知らなければ発音も調べて書いておきましょう。この単語ノートは1週間に1~2回ほど見るようにして、すでに覚えた単語、まだ覚えていない単語をチェックしながら何度も見るようにしましょう。一つの記事を最後まで読み終わったら、記事を最初から読んで、ちゃんと理解できるかどうか確認してみてください。調べた単語などが必ずしも定着しているわけではないので、すべての記事を理解できず、単語ノートを参照することも何度かあると思いますが、目標は何も見ずに記事が理解できるようになることです。書き込みのない記事をちゃんと最初から最後まで理解できるようになるまで繰り返してください。それができるようになったら次の記事を探して、同様に学習を進めてください。

このようにして、理解のできる記事を積み重ねていくと、すらすら読めるようになる記事が増えていきます。新しい記事に挑戦するお同時に、前に読んだ記事を復習がてら読み返してみると、読むスピードも上がりますし、語彙や表現の理解の定着にも効果的なので、是非試してみてください。いずれの方法も継続が難しくない分量で続けるのが重要です。毎日少しずつ進めていきましょう。

 


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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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