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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.99「洋書を読むなら、小説?それともビジネス書?」

読解力と単語力をつけようと、洋書を読もうかと考えています。洋書というと、小説を読むのが一般的な気がしていて、書店でも多く見かけます。私は、普段あまり小説を読まないのですが、洋書にチャレンジする場合、小説を読んだほうがいいのでしょうか?普段どちらかと言えば、ビジネス書を読むことが多いので、一度読んだことのある本の原著にチャレンジしようかなとも思っています。小説とビジネス書、それぞれメリットなどあれば、教えて頂きたいです。(タカハシ、27歳、会社員)


 

|内容理解を目的とした読みものの勧め!

洋書を読むということはとても素晴らしいアイデアだと思います。確かに、書店の洋書セクションで多く見かけるのも小説で、なかなか実用的な一般書やビジネス書などを数多く取り揃えた書店は日本にはないかも知れません。

結論から言いますと、洋書にチャレンジするには小説のほうが良いというわけではなく、興味がある分野であれば、ビジネス書でも論文でも何でも構わないと思います。小説とビジネス書のそれぞれのメリットを知りたいとのことですので、ここに私なりの考えをまとめさせていただきました。参考にしてみてください。

 

|物語を楽しめる人に

まず、小説を読むメリットです。小説を読む最大のメリットは、ストーリーを純粋に楽しめるという点だと思います。小説を手にする方は、元々小説を読むのが好きな方が多く、ジャンルにかかわらず、主人公がどのような出来事に巻き込まれるのか、人間関係がどうなるのか、どのような結末になるのかなどを、ストーリーに入り込んで読み進めることができます。このような方には、やはり小説を読むことそのものが楽しいので、継続に繋がり、目にする英文量が相当量になり英語学習に繋がります。

 

次に、小説では様々な語彙表現が使用されている点も魅力です。それはそれぞれの作家が、自分の語彙力を発揮して、登場人物の人物像や、それぞれの人物の心情、また、各場面の描写などに相応しい最も適切な語彙を選択して、表現するからです。言語で表現する芸術作品なので、使用されている言語表現にもこだわりがあると考えられます。その影響もあり、ひとつひとつの単語表現を理解しようとすると、少し難しいかもしれません。しかし、それにより知らない単語があったとしても、全体的なストーリーを理解したり、あるいは何が起こったのかを理解する上では、それほど苦労しないことが多いと思います。小説は、一語一句を辞書などで調べて、全文を100%理解することを目的とする必要はないので、あまり立ち止まらずに読み進められる点もメリットです。

 

いくつか作品か読んでいくうちに、自分の好きな作家ができることも少なくありません。一部の作家に偏らず様々な作品を読む方も多くいらっしゃいますが、好きな作家ができると、その作家の作品を次々に読みたくなることも多いです。これも継続学習に繋がります。純粋に、ストーリーを楽しみながら、次の作品を読みたくなるというのが、小説好きの方の特徴だといえますし、継続学習は英語学習にとっては非常に重要なので、洋書の小説を読むことに没頭してしまえば、長い目でみるととても素晴らしい英語学習になります。

 

|洋書の効果は、一石二鳥

一方、ビジネス書を読むことにももちろん多くのメリットがあります。まず、ビジネス書を読むということは、ビジネス書に書かれているような実用的な内容にすでに興味があるということです。たとえば、上手く人に自分の考えを伝える方法に関するビジネス書を選んだとします。その本を選んだ理由は、人に自分の意見を上手く伝えるコミュニケーション力を身につけたいことであって、小説のような本の内容を楽しむ目的とは違います。この、内容そのものの学習に具体的な目標があることによって、英語を言語として使用して内容を学習できる、内容言語統合型学習(CLIL)が実現できます。このCLILというのは言語学習では効果的で、英語という言語を使ってコンテンツを学習することで英語学習にも繋がるという、いわば一石二鳥のような英語学習になります。

 

|頻出語彙の習熟に

さらに、興味のある分野の文献を読んでいくと、やはり似たような表現に何度も出くわします。しかも、ビジネス書は一度読んで終わりというよりは、繰り返し読んで内容をしっかり理解して自分のものにするという方も多いと思います。反復することにより、最初のうちは使っていた辞書も、いずれあまり使わなくなり、それでも理解できることが多くなります。また、多くの語彙表現が理解できるようになると、同じ分野の別の文献を読んだ際、たとえ知らない語彙表現が出てきても、その意味を理解できるようになります。同じ分野の文献を多く読むと、このような現象が起こりますが、これは、母国語の言語習得に近い方法で学習していることになります。よく目にする表現を理解できるだけでなく、実際に使えるようになることも多々あります。

 

そして、ビジネス書で登場する英語表現は説明文が多いので、実際に英文でメールを書いたり、企画書を書いたり、あるいは英語で会話する際に実際に使える表現に多く触れられるのも大きなメリットです。実際に読んで理解を深めるうちに、知らず知らずのうちに使える表現も増えているはずなので、ビジネス書のように、実用的な表現が多く含まれている文献も積極的に読んでいただきたいと思います。是非、チャレンジしてみてください。


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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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