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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.103「英語で話す力をつけるには?」

英語を勉強する者です。受験生の頃から英文を読むのは比較的得意で、大学では英語の論文も読んだりしていました。読むのには苦労しないのですが、話すのは苦手で、ネイティブの人の前だとだいたい固まってしまいます。機会があって話す時があると、英語を組み立てるのにいちいち時間がかかり、うまく話すことができません。やはり、上手く話せるようなるには、留学しないと難しいのでしょうか。自力で上手く話せるようになる方法はないものでしょうか。(チャック、会社員、34歳)


 

音声の真似と流暢さのトレーニング

日本人英語学習者の中には、英文を読むことが得意でも、話すのは得意ではない方も少なくありません。受験では、話す力よりも読む力や英語に関する知識を必要とされるため、多くの学習者は、長文を正確に読み取るための練習に慣れているようです。

一方、受験対策としてはあまり必要でない、話す練習にあまり時間を割くことがない学習者も多いと思います。しかも、英語が得意な学習者の中には、長文で読み取っている英文が比較的高度な英文である場合が多く、それらの難しい表現を理解できることが、話すときに障害となることもあります。つまり、話す際にもそのような高度な表現を使おうとして、語彙表現を選ぶのに時間がかかり、どうしても流暢に話せないというケースです。

 

まずはよく使われる3000語に習熟する

実際に、ネイティブが使用する単語はどれくらいなのでしょうか。語彙に関する研究によると、頻繁に使用される単語3,000語だけで、全体の90%以上を占めています。すなわち、その3,000語を使えれば、語彙表現を無理に探すこともなく、スムーズに話すことができるようになります。つまり、受験英語の長文や論文などに含まれている高度な語彙は、話すときには不要ということです。

話すときに使用する単語数が3,000語に限られたとはいえ、それでも練習は不可欠です。たしかに留学すると、留学先の学校だけではなく、教室の外でも英語を話す機会や環境が揃っているので、それを利用して英語を話す練習ができ、必然的に話す力が伸びていきます。しかし、留学するには、仕事を辞める、休学するなど、今ある生活を中断する必要があり、そう簡単にはいかないものです。

 

練習量が話す力につながる

そこで、留学しなくても話す力を伸ばす方法を考えてみましょう。まず、最初にしなければならないのは、練習時間の確保です。これまでの英語学習で、英文を正しく読み理解することに費やした練習時間と同じ量の時間を話す練習に使えば、読み取る力と同レベル以上の話す力がつくと考えても間違いないでしょう。読む力と同様、話す力も練習量に比例して伸びていきます。しかも、読む力がすでに備わっているのであれば、語彙も3,000語はすでに身についているので、改めて語彙や文法の学習に時間をかけなくても良さそうです。とにかく、短くても良いので毎日練習する時間を作ることを心掛けましょう。

 

話し方のモデルを見つけてコピーしよう

次に、話すときに参考にするモデルを探しましょう。モデルになるのは、やはりリスニング教材です。ご自身の目的に合った題材を選ぶのが、学習を継続するモチベーションにもなるので、たとえば、ビジネスシーンで英語を使うことを想定しているのなら、ビジネス英語の教材を使用するのがいいと思います。それらのモデルとスクリプトを使用して、モデルと同じスピードと抑揚を再現できるようになるまで繰り返し真似してみましょう。繰り返し練習していくと、やがて音声教材無しでも再現できるようになり、そして、スクリプトも音声教材も無しに再現できるようになります。そうなるまで繰り返し練習しましょう。

音声教材を使用した練習では、発音の練習もできます。子音や母音を全部正確に発音する必要はありません。ですが、全体的なリズムやイントネーションはしっかり完全にコピーできるように、繰り返し練習しましょう。自分の声を録音して、音声教材と同時に再生してみるといいでしょう。リズムやイントネーションが異なる部分は再度しっかり音声教材を聞いて、強くてはっきり発音されているところと、弱くて曖昧な発音のところを確認したり、どの部分で声が高くなり、低くなるのかも再現できるように練習しましょう。

 

自由発話練習で、アドリブに強くなる!

また、モデルのない自由発話の練習も不可欠です。話し相手がいることに超したことはないですが、いなくても練習はできます。ポイントは、同じ内容を、スピードを上げながら繰り返し話す練習をすることです。この繰り返しとスピードアップで流暢さを伸ばすことが可能です。

たとえば、今までで一番楽しかった旅行の思い出を3分間で話し、それを録音します。次に、全く同じ内容を2分間で話し、それを録音します。そして、3回目は同じ内容を1分間で話し、それを録音します。次の日には、別のトピックで同様に3回録音します。また、数日後にこの録音を聞いてみると、ご自身の英語の間違いに気づくこともよくあります。この練習を繰り返すと、英文を作る時間が少しずつ早くなり、流暢さが身につきます。

 

このように、すでに身につけている英語を話す力へと活かす練習を繰り返すことで、留学しなくても話す力は十分に発達していきます。読む力を身につけたときのように、できれば毎日練習する時間を確保し、継続的な練習を心がけてください。モデルを使用した表現と発音の練習、そして、徐々にスピードを上げていく流暢さのトレーニングをして、英語でも物怖じせず、しっかり話せるように頑張りましょう!

 


●担当編集より:英語学習に質問やお悩みのある方は、ぜひ横本先生にご質問をお寄せください。一人で考えて答えが出る悩みもあれば、悩み続けて時間が経ってしまうことも多いと思います。ご質問はこちらから。ぜひお気軽にお聞かせください!
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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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