朝日出版社ウェブマガジン

MENU

教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.96「私たちはなぜネイティブの会話が聞き取れないのか?」

先日、エレベーターに乗るとネイティブの方2人と一緒になり、その会話が自然に耳に入ってきました。どうやら、仕事のことを話し合っていたようなのですが、細かい部分についてはほとんど理解することはできませんでした。TOEICなどの資格試験のリスニングはある程度理解できるのですが、どうしてこのような普通の会話は聞き取りにくいのでしょうか。また、こうした会話の英語を聞き取るにはどんな練習をしたら良いのでしょう?それと、リスニング力を上げるためには1日どれくらいの量の英語を聞いたら良いのかも、もし目安のようなものがあれば教えて頂きたいです。(かーすけ)


 

|なぜネイティブの会話が聞き取れないのか?

ネイティブ同士の普通の会話が聞き取れないという悩みを抱えている方は、大勢いらっしゃると思います。それにはいくつかの原因が考えられるので、原因についてまず述べさせていただいた後、どのようなリスニングをするとネイティブ同士の会話の聞き取りの練習になるのかについて述べさせていただきます。

 

|学習教材の弱点と机の上の学習だけでは学べないこと。

まず、ネイティブ同士の会話が聞き取れない原因についてです。

最も重要な原因は、英語学習で使用している教材にあります。ほぼすべての英語学習用教材に収録されている音声は、プロのスピーカーによって発音されています。したがって、教材の音声は、いわゆる標準語に近い英語を話すことが多く、しかもはっきり聞き取り易い英語で話しています。これは、語学用教材は、標準語を学ぶことを目的としているため、必然なのですが、実際に会社、店、街で出くわす人たちの英語とはかなり違うと言えます。実際には、ネイティブにも人それぞれのなまりがありますし、ネイティブ同士でも注意深く聞かないと上手くコミュニケーションが取れないことがあります。

 

次にネイティブ同士の会話の聞き取りにくい原因は、使用している表現にあります。ネイティブ同士となると、これまでの人生で得てきた経験に多くの共通があります。たとえば、日本人同士でしたら、「Misiaさんのような」というと、ある人の歌声を褒めていることが想像できたり、「銀座の店のような」というと高級な服や料理を想像したりすることができます。このようにネイティブが共通して持っている文化的背景が言語表現にも登場することは少なくありません。それに加えて、ネイティブ同士というだけでなく、同僚、同郷、同年代など、共通点が多ければ多いほど、言葉で表現しなくても理解し合える内容が多くなります。極端な例でいえば、同僚同士が、「今朝のあれ上手くいった?」というような会話をしていても、第三者にはなかなか会話内容は理解できないはずです。このように、通常の会話は誰が聞いても理解するのに十分な言語情報が含まれていないので、言語情報だけに頼って聞き取ろうとしても理解をするのは難しいといえます。

 

そしてもう一つの大きな原因は、話し方やスピードです。ネイティブの人は、話している相手の英語のレベルに合わせて、無意識のうちに話し方や話すスピードを変えています。それは、日本人が日本人以外の人に話しかける時に、話し方やスピードを若干変えて、相手に伝わりやすいように話すのと同じです。よほどネイティブのように流暢に話す日本人でない限り、ネイティブの人は日本人に話しかける際には、スピードや表現を若干変えることがほとんどです。同じ人の話でも、自分に話しかけているときには理解できても、ネイティブ相手に話しているときには理解ができないのは、話し方もスピードも変えているからです。

このように、英語学習用教材に収録されている英語や、普段自分と話している際に聞こえてくる英語は、ネイティブ同士が話す英語とは違ってくるので、簡単には聞き取れません。

 

|どうすればネイティブの会話が聞き取れるようになるのか?

それではネイティブ同士の会話が聞き取れるようになるには、どのような練習をするべきなのでしょうか。最初に取り組みたいのは、台本にない英語、つまり自由な発話をしている英語を聞く練習をすることです。ニュースや映画やドラマなどは、決められた英語を話していますので、異常にスムーズです。実際の会話では、それほどスムーズに話す人もいませんし、ほとんどの場合、言いよどみや無駄な繰り返し、言い直しなどが日常茶飯事に起こっています。最近では、インタビュー、議論、トークショーなどの映像もインターネット上で視聴することができるので、そのような題材で聞き取りをするといいでしょう。報道を目的にしているものは、英語表現が標準語に近いので、エンターテイメント要素の強い題材を選んだり、街でのインタビューなどが収録された題材を多く取り入れると、良い聞き取りの練習になります。

 

練習量に関してですが、多ければ多いほどいいでしょう。ただ、大量に聞き取る練習を始めてしまうと継続が難しくなるので、例えば、寝る前の15分間だけ毎日聞き取り練習をするなど、必ず毎日継続出来そうな分量に留めておくようにしてください。本当はもう少し学習したいと思える分量が長続きの秘訣です。短期間に大量の学習をするより、毎日少量を継続して学習するほうが学習効果の高いことが分かっています。継続を優先する分量設定をしてください。

 

はじめは難しいかもしれませんが、継続すると少しずつ聞き取れるようになります。聞き取れるようになると、継続のモチベーションに繋がります。最初の学習効果を実感するまでは、何がなんでも続けてみてください。標準語の英語学習をして結果が出たのと同様に、続けることで慣れていき、ネイティブ同士の会話も聞こえてくるようになります。

 


●担当編集より:英語学習に質問やお悩みのある方は、ぜひ横本先生にご質問をお寄せください。一人で考えて答えが出る悩みもあれば、悩み続けて時間が経ってしまうことも多いと思います。ご質問はこちらから。ぜひお気軽にお聞かせください!
英語お悩み相談室 質問受付フォーム 

バックナンバー

著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

ジャンル

お知らせ

ランキング

閉じる