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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.126「フォーマル表現とカジュアル表現を上手に使い分けするには?」

大学での英語の授業を通して、ディスカッションやエッセイなどを書くことには慣れてきました。しかし、そうした英語と友人との日常会話やチャットに使う英語は、大学で触れる英語とかなり異なる気がしています。コミュニケーションを取る相手によってTPOに応じた英語を使う必要があると思うのですが、フォーマル表現とカジュアル表現の使い分けは、どのような学習をすれば、判別ができたり、上手に使えるようになるでしょうか。よろしくお願いいたします。(金沢、20歳、大学生)


 

場面に応じた英語表現を真似する!

大学でライティングやディスカッションの授業を通して学んでいるアカデミックな英語と、日常会話で使用されるカジュアルな表現の違いを感じているというのは、すでに使い分けが出来はじめているということで間違いないと思います。

大学の授業では、エッセイを書いたり、ディスカッションをしたりと、砕けた表現の使用はあまり容認されないと思いますが、重要なポイントは、いずれも想定している読み手、聞き手がいる点です。大学の課題で書く作文を読む人、ディスカッションをする相手を想像してみてください。授業の一環で書いたり、議論したりするのは、あくまでも練習です。将来的に、論文を書いた時に、それを読んでくれるのは、担当教員でもクラスメイトでもなく、その論文のトピックにある程度精通している人たちです。議論するのも同様で、トピックについて議論ができるレベルの人たちが相手だと想定できます。アカデミックな内容について書いたり議論したりするのであれば、必然的に語彙レベルも上がりますし、文構造も複雑になります。

 

場面毎の言葉の使い分けについて、日本語で考えてみましょう!

日本語に置き換えて考えてみると、それほど意識しなくても、その使い分けをしていることに気付くと思います。たとえば、環境問題について作文を書いたとします。おそらくその作文中には、「ちょっと」「まあまあ」「いっぱい」といった日常会話で使う表現はほぼ含まれず、代わりに「多少」「適度に」「多数」といった表現が使われているはずです。もちろん、義務教育を含む学校教育を通して、これらのフォーマルな表現を学んできたと思いますが、基本的にはこれまで読んだ本や記事に使われている表現を目にしたり、真面目なトピックに関する議論を耳にしたことで、これらの表現を身につけてきたはずです。一方、フォーマルな表現が使われている本や記事をまだ十分に読んでいないこどもには、これらの表現を使うのは難しいでしょう。

 

日本の英語教育はフォーマルが基本!

日本の英語教育で学ぶ英語は、比較的フォーマルな場所で使用できる表現がほとんどなので、教科書や参考書で学んだ表現は、あらゆる場で安心して使えます。英語で話す相手ができたとしても、親しくなるまでは、お互い比較的フォーマルな表現を使うことが多いので、会話だからといって、最初からカジュアルな表現にこだわる必要はありません。それは相手が同年代であっても同様で、最初からあまりカジュアルは表現を使う必要は全くありません。とはいえ、親しい友人ができたときのためにも、カジュアルな表現も学んでおきたいので、学習方法を紹介させてください。

 

シットコムは、カジュアルな英語表現の宝庫!

私自身が個人的に行なった学習方法でもありますが、シチュエーション・コメディ(以下、シットコム)を繰り返し観ては、登場人物が使用している表現を真似するという学習方法は、とてもいい勉強になったと実感しています。

シットコムでは、登場人物同士がかなり親しい仲であることが多いので、友人同士の日常会話で使えるくだけた表現が頻繁に登場します。ただ、注意が必要なのは、コメディなので、時々、たとえ親しい仲であっても失礼にあたるような表現も登場し、それを笑いに変えてしまっている点です。たとえば、デートに出掛ける前に、着ていく洋服をルームメイトに見せて、

“Do I look okay?”

と聞いたら、そのルームメイトが遠慮なく

“To be honest, you look terrible. ”

と言うなんてこともあります。いくら仲が良くてもあまり直接的にyou look terribleなんていうことはほとんどありません。このように実際に真似すべきではないような表現が登場した場合、笑い声が聞こえてくるので、そのようなことは一般的には言わないと察することができます。それさえ注意すれば、シットコムは多くの表現を学べる優れた教材だと言えます。

授業内の英語もシチュエーションコメディで学ぶ英語も、それぞれのコミュニケーションの相手によって言葉を選択しています。使い分けるときには、読み手、聞き手などの相手と自分の関係によって使い分けをしていくといいでしょう。これまでの学習もそうですが、日本語話者としての経験も十分に生かせるので、それほど難しいものではありません。

 

フォーマルな表現とカジュアル表現の見分け方

表現そのものがフォーマル表現なのかカジュアル表現なのかについての判別ですが、大まかにいえば長い単語がフォーマルで、比較的短い単語を使用するのがカジュアルな表現といえます。たとえば、

This computer was cheap. 

(このコンピュータは安かった)

 をよりフォーマルにすると、

This computer was inexpensive.

(このコンピュータは安価でした)

と言うことができます。最近の研究では、日常的に使用されるカジュアルな口語英語の95%の単語は基本単語3000語レベルで、アカデミックな内容の口語英語の95%は4000語レベルで表現されている、といわれています。そして、ライティングに関するものでは、7000語レベルだといわれています。これを踏まえて、カジュアルな英語で話せる相手とやり取りをする際には、目安としては中学までで学習した単語プラスα程度の英単語を使用して話すといでしょう。

 

どのシチュエーションでもそれに合わせて話す、書くことが求められますが、間違いを恐れることなく、とにかく使うことが大切です。それぞれのタイプの英語を真似して、少しずつ使い分けの練習をしてみてください。

 


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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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