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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.49「自分に合う効率的な英語学習方法の見つけ方」、Q.50「英語ができるようになると他の言語も覚えやすくなる?」

この連載では、英語学習に悩みを抱える読者の方のご質問に、横本先生が懇切丁寧にお答えしていきます。先生へのご質問はこちらから。お気軽にご応募ください。
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Q.49「自分にとって効率的な英語学習方法の見つけ方」

 英語を使った職業に就くために、英語を勉強しています。現在は、T O E I C、英会話の復習、YouTubeで発音&リスニング・ネイティブ英語の4つを勉強しています。あまりに忙しく、目が回ります。この場合、どれか2つに絞って勉強した方がいいのでしょうか。アドバイスお願いいたします。(ゆうちゃん、42歳、会社員)

 

目的に合った題材で継続を優先する

 仕事で英語を使用するということで、継続学習を行っているとのこと、大変うれしいです。

  これまでの継続学習の中でもいろいろ試されているように、英語学習といっても様々な方法があります。英語学習になにか特定の目的がある場合、その目的にあった学習を行うと、実践的で役立つと実感することもよくありますし、モチベーションも保つことができます。

 仕事で英語を使用するとありますが、それが、例えば、英文での文書作成、メールのやり取りが中心となる場合、英語で書かれたビジネス文書を多く読んでおいて、形式や表現について学びたいですし、英文メールもできるだけたくさん読んで、様々な状況に応じたメールの書き方、返信の書き方などについて学んでおきたいです。TOEICの読解問題では、多くのビジネス文書やメールを扱っており、実践に参考になる題材が多く含まれています。学習する際には、読み取って意味を解釈することや、問題を解くだけにとどまらず、もう少し踏み込んで、文書の作成方法、文章の構成はもちろん、メールのあいさつ文、要件の伝え方などを分析して参考にするといいでしょう。

 また、発音やスピーキングの練習についてですが、ビジネスに関する題材が実践的で目的に合っていると思いますし、内容も表現も実践的なものの練習ができると思います。別の目的でスピーキングの練習をするようでしたら、それに合わせた題材、たとえば日常会話などを扱った動画や音声を使用するといいでしょう。どちらにしても話す練習のためには、録音を強くおススメします。相手がいないとなかなか話す機会もないかと思いますが、話す内容だけを決めて、実際に話してみましょう。それを録音することで、実際に人と話すときに似た緊張感もありますし、なにしろ後から自分のスピーキングを聞き返すことができるのが最大の利点です。自分が話した内容を聞き返すと、修正したい箇所が必ず出てきます。修正箇所を決めたら同じ内容のことを再度録音してみましょう。この修正と反復によりスピーキングが上達します

 ここでは二つの学習のポイントを紹介しましたが、いずれも継続が大切です。すでに実感されているとは思いますが、継続することで着実に力がついてきますし、継続ができないとスキルアップは期待できません。忙しくても疲れていても継続できる分量で、毎日少しずつ学習してください。応援しています。

 

 

Q.50「英語ができるようになると他の言語も覚えやすくなる?」

 最近聞いた話で、英語が母語の人はフランス語を習得するのは簡単と聞きました。やはりアルファベットを使う言語同士だと、新しく学ぶ際にそれほど抵抗はないのでしょうか?日本人があまり英語が得意でないというのも、いわゆる「言語間の距離」というのが問題なのでしょうか?先生の意見お聞かせください。(高橋郁夫、53歳、学習塾経営)

 

言語間の距離による教育法の違い

  やはり母国語と第二言語の間に共通点が多い場合、とくに英語とフランス語のように、共通の語源を持つ語彙が多くある場合には、学習経験がゼロでも理解できる語彙が多く存在することになります。したがって、必然的に、意思疎通を図るという目的を達成するレベルまでにかかる学習時間が短縮されるかもしれません。

 言語習得はまず理解するところから始まります。共通部分の多い言語間では、話された語彙や文が何を表しているのかを理解するまでのプロセスでかなり有利に言語学習を行うことができるといえます。

 ただ、共通部分が多いので、混同することもよくあります。典型的なのはスペルです。スペルミスだけに焦点をあててみた場合、日本人が必ずしも英語が得意でないとは言えません。日本で行う教育はスペルミスも許さない、正確な英語をベースとした英語です。その教育のおかげで、日本人はスペルも比較的得意な方ですし、文法の説明も得意です

 日本語と英語は、扱う文字が違うため、どうしても文字から教育を始める傾向にあると思います。かなり前の話ですし、ただの一例に過ぎませんが、アメリカの大学で、全くの初心者向けのドイツ語、フランス語、日本語の授業を見学したことがあります。ドイツ語もフランス語も、あいさつ文や会話など、耳に頼った学習から始まり、単語の読み書きは話す練習の後から行われていました。それに対し、日本語の授業は「あいうえお」などの、読み方の学習から始まっていましたし、日本の英語教育でもa, b, cから始めて、文字を読む学習を早い段階から取り入れています。扱う文字が違うがゆえに、根本的に教育方法が違うのだと考えています。

 人間の言語学習は本来音から始まるものなので、個人的には、音に頼った外国語教育の方が理にかなっていると考えています。幼児英語教育では、完全に音に頼って英語教育を行えるので、アメリカで見たドイツ語やフランス語のような授業展開が可能だと考えられます。理想を言えば、小学校英語も、中学校英語も、読み書きを後回しにして、音から入る教育にすれば、英語に関する「知識」の教育ではなく、「言語」としての英語教育が行えるのではないかと常々考えています。

 日本人が英語でのコミュニケーションが苦手というのが事実であるなら、言語間の距離というよりは、それを踏まえた教育方法の違いの副作用のようなものではないでしょうか。

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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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