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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.111「英単語を使えるレベルまで習熟させるには?」

語彙力を付けたくて、単語の勉強をしています。今使っているのは、TOEIC対策のもので1日10個づつ覚えていますが、すぐに忘れてしまい、あまり定着しません。どうすれば、一度覚えた単語をずっと覚えていられるでしょうか?よろしくお願いします。(kotaro61、会社員)


 

内容理解を目的とした語彙学習のすすめ

英語学習において、語彙力アップは欠かせず、語彙の学習は最上級者になってもずっと続きます。なので、まず「それほど焦って単語を覚えなくてもいい」と考えてください。

今の単語学習は1日10個ずつ覚えているとのことですが、どんな単語を覚えていらっしゃるのでしょうか。単語集を使っているのか、あるいは問題集などにある英文を読んでその中にある未知の単語を10個ずつ毎日覚えているのか、によって学習方法が大きく違ってきますが、毎日10個と決めていらっしゃることから、おそらく単語集などを使用されていると推測できます。今回は、単語帳を使った学習方法の利点と限界に言及して、オススメの語彙学習方法をご紹介させてください。

 

単語帳での学習は、人間本来の語彙習得とは異なる!?

まず、将来学習した語彙を、話したり書いたりするなど、実際に使用することを目標とする場合、単語集だけを使用した学習はあまりオススメしません。それは、その学習方法が、人間が語彙を習得する方法とはあまりに異なるからです。

ここで、ご自身が日本語の語彙をどう学習したかを思い返してみてください。国語の教科書にある文学作品の抜粋や、新聞の記事などに使用されている語彙などを何度も目にしたり、時には調べたりして、今の語彙力を獲得してきたと思います。決して単語集を使用して語彙学習をしたから、日本語が上手く書けたり話せたりできるようになったというものではないはずです。

つまり、語彙学習は実際に使用されている言語を読んだり聞いたりして、内容を理解して身につくものです。実は、単語集にあるリストを眺めたり書き取ったりするのは、学習している単語が言語として使用されていないことに問題があります。語彙が言語として使用されている文の内容を理解するという過程が語彙学習には不可欠だからです。

 

単語帳は試験対策には良いが...

ただ、単語集を使用することにも利点はあります。それは検定対策です。

今、TOEIC用の語彙を学習されているということですが、TOEIC対策用の単語集には、実際に本番の試験で頻繁に使用される語彙が収録されています。TOEICは、過去問題を公開していないテストなので、著者の方がTOEICを実際に何度も受験し、頻繁に登場する単語を調べて執筆されているはずです。そのため、実際にTOEICを受験した際、学習した語彙が頻繁に登場することになります。

こうした単語帳を読むことによって、TOEIC問題の英文を効率よく理解できるようになりますし、それに応じてスコアアップも目指せるはずです。加えて、TOEICに登場する英文は実用的な表現も多く、実際に話したり書いたりする際に参考になります。

しかし、通常の単語集を用いた学習では、話したり書いたりするレベルで語彙が定着することはあまり期待することはできません。

 

自然な語彙の習得のために、まずはリーディングを!

やはり、語彙を定着させるには、人間が語彙を習得しているのに近い形で学習することがオススメです。そこで、まずはリーディングの学習をしながら語彙学習を進めることをオススメします。TOEICの問題集などをお持ちでしたら、その長文読解問題の英文を使用すると良いと思います。または、他の検定のものでも構いません。

はじめに、長文を読む学習をします。この際に重要なのは、問題を解くことや語彙の学習を目的とするのではなく、長文に書かれている内容の理解を目的とすることです。すこし難しい考え方ですが、長文に書かれている内容を理解しようとすると、そこに書いてある語彙を言語として使用することになります。言ってしまえば、単語帳などに書かれている語彙は、言語としては使用されてはいません。語彙学習には、この語彙を言語として使用する経験がとても重要になります。

 

内容理解を進めつつ、知らない単語は書き出そう!

長文を読み進める中で、知らない単語が登場すると思います。それらの単語を単語ノートや単語カードに書き出しましょう。辞書や解説にある和訳などを利用して、それぞれの単語の意味を調べて、その意味をノートやアカードに書きます。よくあるのは、そのノートやカードを何度も見ることで単語を学習するという方法ですが、ノートやカードにある単語は、言語として使用されていないので語彙学習としてはまだ不十分です。かならず、それらの単語が含まれている元の長文を見ただけでしっかり理解できるかどうか確認します。それを数回繰り返すと、英文を見ただけで内容が理解できるようになります。この方法で、実際に言語として使用されている語彙を学習すると、自然な表現を多く目にすることになり、それによって蓄積された自然な英語表現を組み合わせることで英文が書けるようになります。日本語で考えて一つ一つの単語を英訳して不自然な文を構築するのとは大きく異なり、自然な表現が使用できるようになります。

 

聞いて理解できる語彙を増やすには...

リーディングの長文を使用する語彙学習を進めても、その語彙が聞こえてきた際に理解できるとは限りません。発音を含んだ語彙学習を進めるためにも、リスニング教材を使用した語彙学習も進めることをオススメします。リスニング教材を使用する際もリーディングの場合と同様に、英文を聞き、その内容を理解することを目的としましょう。そして、そこに登場する知らない単語を単語ノートやカードに書き出して語彙学習を進めます。こちらも、ノートやカードを使用した学習の後、元の音声に戻って、音声情報だけでしっかり内容が理解できることを確認することが重要です。おそらく、ご自身ではすでに知っていると思っていた語彙も聞こえてこない可能性があります。読んで理解できる語彙と聞いて理解できる語彙に差があることはよくあります。発音学習をしっかり語彙学習に取り入れることで、リーディングの語彙とリスニングの語彙の差をできるだけ縮めるように学習を進めていきましょう。

語彙学習は一朝一夕にはいきません。後に話したり書いたりするときに使用するための語彙ということを考えると、尚更じっくり英文の内容を理解する上での学習が必要です。少しずつで構いませんので、毎日内容理解を目的とした学習を進めてください。

 


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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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