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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.82「英語版のマンガは英語学習に使えるか?」、Q.83「音読をするならどんな教材いいか?」

この連載は、英語学習に悩みを抱える読者の方のご質問に横本先生が懇切丁寧にお答えしていきます。先生へのご質問はこちらから。お気軽にご応募ください。
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Q.82「英語版のマンガは英語学習に使えるか?」

 いきなり洋書は読めないので、日本の漫画の英語版を読んでみようかなと思うのですが、英語の勉強になりますか?洋書を読むより効果はないですか?どんなことが学べるでしょうか?

 

場面に合った表現を漫画で学ぶ

 何かしらの方法で英語に触れるという姿勢が大変嬉しいです。いきなりハードルを上げて洋書から取りかかるというのは、多くの学習者には難しいと思いますし、かなり強いモチベーションが維持できないと、継続学習に繋げるのも簡単ではなさそうです。そこで日本の漫画の英語版という着目点がとてもいいと思います。

 英語の学習という点でいえば、それなりの学習は出来ると思います。ただ、日本の漫画の英語版を実際に手に取ったことがないので、これはあくまでも想像に基づいての私の個人的な考えとなります。

 洋書と日本の漫画の英語版には大きな違いが2つあると考えています。一つ目は文化的背景による表現やストーリーの違いです。洋書はもともと英語話者向けに書かれたものですので、英語話者が理解しやすいように書かれていますし、英語特有の表現が少なからず含まれています。例えば、the elephant in the roomという表現がありますが、これを日本語に訳しても意味は通じません。これは、「誰もが触れることを避けたがる重要な問題」を指す表現ですが、このようにそのまま日本語に訳してもなかなか理解できない表現に触れるには洋書の方が向いていると考えられます。内容的にも、人種差別、市民権、奴隷制度、宗教などに関連する内容に触れることがよく見られるのも洋書の特徴だと言えます。

 一方、日本の漫画の作者は日本人なので、日本人的な考え方を基にしてストーリーや台詞が作られていると考えられます。話の内容にもよりますが、日本独自の文化や歴史的背景などを用いたストーリーの場合、それらをそのまま表現する英語は元々存在していないので、どのように英語で表現しているのか私自身も興味があるくらいです。ストーリーを読み進めてきた読者に内容を伝えるという目的を果たすのに十分な英語で書かれていると思いますが、実際に英語話者の人がそのような表現を日常で使っているかどうかというのはものにもよると思います。

 もう一点の大きな違いは、漫画特有の構成に関連します。洋書ですと、説明、物語、議論、など、目的に合わせて様々な文体で書かれていますが、日本の漫画という限定された分野で考えると、おそらく書かれているのは台詞が多いと考えられます。つまり、書かれているのは、ほぼ話し言葉で、しかも紙面上の都合で極力短く、場合によっては文として未完成な省略形も多く含まれているでしょう。また、スラングも多く含まれていることが考えられます。

 その他にも違いはあると思いますが、重要なのは、楽しみながら理解して、表現を身につけていくことなので、漫画で英語学習されてみるのも一つの方法だと思います。漫画で登場する表現がどこでも使える表現ではないことに注意しさえすれば、イラストによって内容理解が容易になっていて、続けられるかも知れません。簡単なものからはじめて是非継続してみてください。

 

 

 

Q.83「音読をするならどんな教材いいか?」

 外国語を学ぶ上で音読がすごく有効だと聞きますが、英語だと、どのようなものを読むのがいいですか?例えば、アメリカの大統領のスピーチとかT E Dとかでもいいのでしょうか?スクリプトは必ず必要ですか?よろしくお願いします。

 

スピーチを使って総合的な英語力アップ

 音読は学習方法としても様々な効果があると言われています。ここでは、その効果について簡単におさらいして、それを踏まえて、その題材選びについて触れさせてください。

 音読で最も効果が期待されるのが発音です。まずは個々の単語の発音の学習に音読は役立ちます。英語には、綴りからだと発音が予想できない単語が多くあります。例えば、foreignをフォレジンと発音する学生がいて、実際に会話が止まってしまったこともありました。おそらくこの学生は、英語話者がforeignという単語を会話の中で使っていても、この単語を聞き取れてはいないと考えられますから、やはり、語彙学習で音と綴りと意味を切り離さずに学習することが重要だと言えます。

 発音学習という点では、音読は、個々の単語だけではなく、いくつかの単語からなるチャンクや文単位で重要となってくる、リズムやイントネーションの学習にも効果があるといわれています。英語と日本語とでは、リズムもイントネーションも大きく異なりますし、間違ったリズムやイントネーションで話すことは、コミュニケーション上の妨げになることもよくあるので、音読をすることで、単語レベルを超えた長いチャンクや文の発音の学習に役立ちます。

 そして、少し意外かもしれませんが、文法や表現のニュアンスを掴むのに、この音読が役に立ちます。例えば、メールを英語で書いた際、送信ボタンを押す前に、音読してみて、間違いがないかチェックしたりしますが、この音読という学習方法によって培った文法や表現のニュアンスが役立ちます。自分が書いた文を音読した際、その文に何か違和感があり、表現を変えてみたり、文法を修正したりすることもよくあります。

 いわゆる上級者といわれる学習者の間では、音読は広く学習方法として取り入れられてきていて、それにより、語彙、文法、発音に至るまで学習効果を発揮しています。

 そこで何を音読すればいいのかということですが、大統領のスピーチ、TEDトークなどは秀逸な教材です。レベルによっては難しい表現もあるかとは思いますが、スクリプトを使って、表現の学習にもなりますし、何しろ、人に聞かせるために推敲されたスピーチですので、表現が的確です。しかもスピーチのテクニックが優れているので、リズムやイントネーションの学習には最適です。スクリプトが簡単に入手できる点も優れています。最初はスクリプトを見ながらでいいので音声を完全に真似できることを目指してください。

 記事や小説などの音読も効果があると考えられますが、参考にする音声があるという点では、公的な場でのスピーチなどがオススメです。スクリプトと音声のどちらも入手できるような題材の中で、内容に興味のあるものを使って、繰り返し練習してみてください。必ず語彙、文法、発音の力がアップします。

 

 

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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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