Q.74「英語を学ぶなら専門か大学か?」、Q.75 「TOEICの勉強をしても英語ができるようにならないの?」
この連載では、英語学習に悩みを抱える読者の方のご質問に、横本先生が懇切丁寧にお答えしていきます。先生へのご質問はこちらから。お気軽にご応募ください。 |
Q.74 英語を学ぶなら専門か大学か?
進路の相談です。今高2で来年高3になるので、そろそろ進路を決めないといけません。進学を希望していて、唯一好きな教科である英語を学びたいと考えており、外国語の専門学校に行くか、大学の英語科みたいなところに行くかで悩んでいます。将来の仕事としては、通訳案内士とか空港のグラウンドスタッフとかを考えていて、英語の実用的な力を身につけたいのですが、どちらに進んだほうがいいでしょうか?(高橋、17歳、高校2年)
様々な側面に目を向けて信頼できる人に相談しましょう!
高校生にとって進路を決めるのは簡単なことではありません。それでも決めなければなりませんし、その後の将来に大きく関わる決断をすることなので、慎重にいろいろな側面を考慮して決めたいものです。
まず最も大事なことを言わせてください。進路については、例えばご家族や担任の先生、英語を学びたいというのであれば英語の先生など、普段からご自身のことをよく知る方々に相談してください。進路相談のような重要な決断に関わるようなことについては、会ったこともなく、ご自身のことをさほど知らない人の意見を鵜呑みにしてはいけません。あくまでも一意見として、ほどほどに聞き入れるべきです。
それを踏まえた上で、私の考えをまとめさせてください。
英語好きというのは、英語学習の上ではとても重要な役割を果たします。英語教師として英語を好きになってほしいとあの手この手を使って授業を行いますが、全員が英語好きにはなってくれる訳ではありません。そういう点でいえば、すでに一歩前に進んでいるも同然です。
そして進路についてですが、実用的に英語を使う職業としてのイメージが強い通訳案内士や空港のスタッフが例に挙げられています。いずれも英語だけでなく、対面で人を案内したり、質問に答えたりするいわゆる接客サービスのような要素が強い職業だと思います。しかし、イメージがあまり沸かないかもしれませんが、公用語を英語としている会社では、通常の業務を英語で行うことも多く、実用的な英語が身についていないといけませんし、入社の条件に英語力というものが含まれていることが多いです。
Withコロナ時代では、対面の接客を伴うサービスや旅客に関する職業に就くのは非常に難しいこともありますし、就職後も厳しい状況が続くかもしれません。昨今のグローバル化で社内公用語を英語にしている会社は増えてきているので、実用的な英語を使った職に就きたいということで考えるなら、もう少し幅広く考えるのもいいと思います。
そうした場合、学歴が重要になってきます。通訳案内士や空港スタッフであれば、専門学校に進んでも、大学に進んでもそれほど差はないかもしれませんが、公用語を英語にしているような会社では、大学を卒業している方が有利になることも少なくないと考えられます。そして、もう一点重要なのは、英語を専攻するかどうかということです。英語だけが武器となるとなかなか上手く就職の競争で勝ち抜けません。最近、いくつかの大学では、英語を使って他の分野を専攻することができるようなプログラムが増えてきています。英語を学ぶのではなく、英語で学ぶことで、本当の意味で実践的な英語が身につき、他分野の知識も得られるので、将来の可能性がさらに広がります。
そのような可能性もあることに目を向けて、今一度ご家族や先生に相談してみてはいかがでしょうか。
Q.75 TOEICの勉強をしても英語ができるようにならないの?
会社で昇進の条件になっていることもあり、現在TOEICの勉強をしており、最近650点を超えたのですが、英語ができるようになったという感じがありません。洋画を見ても何を言っているのかおぼろげにしかわかりませんし、CNNなどのニュースにもついていけません。TOEICを勉強しても英語ができるようにはならないのでしょうか?(太一、25歳、会社員)
TOEIC以外の学習のススメ
昇進の条件にTOEICスコアが含まれている会社は少なくないようです。TOEICのような資格試験のための英語学習をやっていると、その目標が資格試験のためなのか、本来目指すべき英語力そのものの向上のためなのか分からなくなりますよね。
TOEICのスコアが上がっているということは、英語力そのものが上がっていることに間違いはありません。確かに受験のテクニックなどを学習して、テスト受験力を身につければスコアは上がりますが、650点というスコアはテクニックだけでは取れるスコアではありません。語彙にしても、文法にしても、少なくとも基礎的な英語力はすでに身についているはずです。
洋画を観て何をいっているのか完全に理解できるかどうかということに関してですが、650点ではまだなんとなくしか意味の理解は出来ないと思います。お気づきかも知れませんが、TOEICに登場する場面や表現はごくごく日常的なものばかりです。実際に生活して、買い物したり、メールを書いたり、広告を見たりなど、エンターテイメント的な要素を極力出さないような題材でテストが作成されています。650点ということは、それらの表現のうち6~7割が理解できていると解釈できます。一方、映画の世界は非日常が多く存在します。その非日常で使われる語彙や表現は、やはりそれに慣れないと聞き取るのも難しいことだと思います。
CNNのニュースも似たような現象が起こります。たとえば、有名でない地名や通りの名前や、国際的にはあまり知られていない政治家や起業家などの固有名詞が多く登場します。有名な固有名詞でさえも、日本の報道ではカタカナに変換されるので、いざ英語で聞いてみると聞き取れないことも多々あります。また、たとえば「3年前の○○のとき」といったような表現もよく登場しますが、その3年前のニュースを知らないと聞き取りに追いつけません。
逆にいえば、洋画もCNNもTOEICの学習と同じように学習するようにすれば、それを聞き取ることができるようになります。お好きな映画を一つ題材にして、英語字幕で語彙を確認したり、CNNニュースもオンデマンドで繰り返し聞くことができて、英語字幕の出るものもあるのでそうした素材を学習に利用しましょう。
洋画やCNNを題材に英語学習をするのは楽しいですし、それによってTOEICのスコアが下がるようなことはありませんので、試してみるのはいかがでしょうか。TOEIC対策をするほどスコアが伸びたりすることはないかもしれませんが、TOEICスコアを650点まで伸ばして基礎力を身につけたからこそ出来る新しい学習方法です。
650点までスコアを伸ばしたことで、間違いなく英語の基礎力は身についているので、さらなるレベルアップを目指す意味でも、他の題材も取り入れてみるいいチャンスかもしれません。頑張ってください!
【編集部より】
CNNでは学生向けに放送されているCNN10という番組があります。こちらは通常の放送よりも扱う内容がやさしめで、1回の放送時間も10分と短くおすすめです。毎日の隙間時間で視聴してみてください。
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