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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.63「英語の勉強は朝にやる?夜にやる?」Q.64「英語の試験、T O E I Cの次に受けるのは?」

この連載では、英語学習に悩みを抱える読者の方のご質問に、横本先生が懇切丁寧にお答えしていきます。先生へのご質問はこちらから。お気軽にご応募ください。
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Q.63「英語の勉強は朝にやる?夜にやる?」

 現在会社員をしている者です。英語の勉強を始めようと思うのですが、朝と夜であれば、どちらが学習に向いていますか?仕事をしているので、どうしても日中に時間が取れず、朝か夜に勉強をするしかないのです。もし学習効果の高まる時間帯などがあれば教えていただきたいです。(さおりん、38歳、会社員)

 

 続けられる時間帯に学習しましょう

 仕事をしながら英語学習を続けるというのは容易ではありません。日中にはなかなか時間が取れずに、どうしても朝か夜に学習時間を確保することになってしまうのは、おそらく誰にでも起こり得る身近な問題だと思います。そのような限られた時間の中で、効率よく学習したいものですね。

 まず、学習効果の高まる時間帯に関する質問ですが、少なくとも言語習得という分野においてそのような研究をされたという話は聞いたこともありませんし、もちろんそのような論文を読んだこともありません。しらみつぶしに探せばどこかに見つかるかもしれませんが、言語学習の効果と学習する時間帯に何かの関係があるとは言い難いです

 よく言われる夜型の人、朝型の人というのは、全部やることが終わってから夜余った時間に学習するのがいいとか、朝早く起きて他のことを考え始まる前に学習するのがいいとか、人それぞれの好みだと考えられます。仮に学習効果に何かしらの違いがあったとしても、書かれていることを理解して覚えるという学問的な要素が大きい内容の学習であれば考えられなくもないですが、言語学習は学問的な学習とは根本的に違います。

 英語は言語ですから、問題の解き方を考えたり、新しいコンセプトを覚えたりするものではなくて、使って身につけるものです。従って、通常は、どの時間帯というよりは、どれだけ使うかという量に比例して学習効果が現れます

 それを踏まえると、ある程度の学習量を確保しながら、毎日休まず学習することこそが、効果的な学習だと言えます。日本語でも、幼少の頃からたくさんの本や記事を読んで育った子どもが、大人顔負けの言葉を使って話したり文章を書いたりすることがあります。逆に、大人であっても、経済ニュースを読んだり聞いたりしなければ、経済について話すことも書くこともできません。英語でも同様に、読んだり聞いたりすることが多ければ多いほど、それらの表現を使って話したり、書いたりすることができるようになります。それには、毎日の反復が必要です。

 朝でも夜でも構いません。例えば、歯磨き、犬の散歩、入浴、など毎日欠かさずやる活動があると思います。そうした活動と英語学習をセットにして、毎日欠かさず学習すると必ず効果が現れます。朝か夜かにこだわるのではなく、毎日休まず学習することが成功へと必ず導いてくれます。毎日必ず続けられる量を決めて、継続してください。

 

 

Q.64「英語の試験、T O E I Cの次に受けるのは?」

 最近T O E I Cで850点を超えました。T O E I Cについては極めた感があったので、そろそろ別の試験に手を出そうと考えています。特に留学をする予定はないのですが、出来れば高度な語彙や発信力を身につけたいと考えていて、T O E F LかI E L T Sを受けようと考えているのですが、どちらがおすすめでしょうか?(斎藤、27歳、会社員)

 

内容はもちろん受験形態も考慮に入れる

 TOEICで850点以上を取得されたということは、すでにかなりの上級者ですね。特に留学する予定や海外出張で英語を使用するなどの目的がない場合、目標設定はなかなか難しいです。そのような状況で、何か別の試験に挑戦して英語力をさらに伸ばすという姿勢には脱帽です。

 さて、英語の試験について簡単に説明させてください。これまで学習されてきたTOEICは国際的なコミュニケーションの場で、英語で書かれた文章や、英語で話されている内容が理解できるかどうかという能力を測るために作成された試験です。

 一方TOEFLは、ご存じの通り、主に英語圏の教育機関で、英語で教育を受けるために必要な理解力と発信力を測る試験です。つまり、実際に学校で必要とされる能力である、学問的な内容や学校生活に関連のある文章を読んだり聞いたりして、内容の要約や自分の意見を書いたり話したりする能力を測るテストです。

 また、IELTSは目的に合わせてアカデミック・モジュールとジェネラルトレーニング・モジュールに分けられているようです。アカデミック・モジュールであれば、TOEFLと同様に学問的な英語のスキルが要求されています。ジェネラルトレーニング・モジュールではそこまで学問的な内容ではないにしろ、仕事上や生活上で必要とされる英語力を測る試験です。どちらのモジュールで受験するにしても、高得点を目指すのであれば、語彙、文法、情報処理能力、表現力を総合的に身につけなければなりません。

 TOEIC850点というのは、TOEIC L&Rのスコアですね。スピーキングとライティングの試験がまだ未経験だとすると、TOEFLやIELTSのスピーキングとライティングは、かなりハードルが高いので、まずはTOEIC S&Wでもう少し身近な内容のスピーキングとライティングスキルを身につけるところから始めてもいいかもしれません。TOEFLもIELTSも受験料は安くないですし、留学が目的ではないのであれば、TOEIC S&Wでいずれも180点くらいを目標に頑張ってみてはいかがでしょうか。

 どうしてもTOEFLやIELTSの受験をしたい場合は、いくつかのポイントで比較して選択するのもいいかもしれません。現在ではどちらもコンピュータで受験できるようですが、IELTSはまだ紙ベースの試験を実施しています。問題冊子に書かれた問題を読んで、鉛筆で解答を書く試験に慣れている場合、IELTSをオススメします。しかし、IELTSのスピーキングテストは、直接面接官と話し合うことになります。面接官と対面では緊張してしまったりすることもあります。コンピュータに向かって話す方が緊張しなくていいのであれば、TOEFLをオススメします。但し、リーディングや文法問題などはコンピュータの画面上で受験するので、それに慣れている必要があります。

 TOEIC S&WもTOEFLもIELTSも受験すれば、かなり詳しいスコアレポートがあるので、受験後の自己分析に役立ちます。それを基にして弱点克服ための目標を立てることができるので、まずはどれか受験してみて、しばらくはその試験でのスコアアップを目指してみるのがいいと思います。今後も継続して学習してください!

 

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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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