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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.33「資格試験の勉強から、使える英語力を身に付けるには?」、Q.34「英語を学ぶやる気を引き出すには?」

この連載では、英語学習に悩みを抱える読者の方のご質問に、横本先生が懇切丁寧にお答えしていきます。

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Q.33「資格試験の勉強から、使える英語力を身に付けるには?」

 就活も近いので、履歴書に書けるような資格を取ろうと思い、英語の資格試験の勉強をしようかなと思っています。最初はTOEICの勉強をしようかなと思っていたのですが、TOEICの勉強をしても英語を話せるようにはならないと聞いたりして、英検とかのほうがいいかなと思ったのですが、どうなんでしょうか?将来的に「英語を使える」ようになりたい場合、試験勉強は問題を解いて答えを確認するだけではなく、なにか工夫したほうがいいのでしょうか。(あやこ、21歳、学生)

 

「試験問題を教材として活用しましょう!」

 受験英語を筆頭に、試験対策としての英語学習に関して、実用的な英語ではないという批判はよく聞きます。ただし、公的に認められている英語の資格試験に使用されている英語には、実際に使える英語表現が多く含まれているので、英語学習の教材としては優れていると考えられます。

 しかし、その優れている英語教材であっても、資格試験の英語が批判されるには理由があります。それは、受験者がそれぞれの資格試験に合格するため、あるいは目標スコアを獲得するために、必要なスキルだけに絞って学習するということが原因と考えられます

 たとえば、長文読解問題があれば、長文全体を理解できなくとも、設問に関連する部分だけを理解できれば問題を解くことができるので、設問を見て、長文中のどこにその答えが書かれているのかを探すスキルなどが必要になります。つまり、実際に長文全体を読み取って、その情報を使って何かを発信するスキルは、問題の正解を選ぶのには不要なので、そこを目指して学習する人がいない受験者側に問題があります。

 試験対策として試験問題を解いて答え合わせをするだけでは、直接的に使える英語力のアップには継がりません。折角の優れた教材を無駄にしています。そこで、問題を解くことを目標にせず、問題に書かれている英文を自分の力で書いたり話したりできることを目標にするべきです。あくまでも英語力アップを目指すのであれば、リスニング教材にある音声のように話せること、リーディング教材にあるような文章を書けることを目標にして学習しましょう

 音声にしても、文章にしても、英語特有の構成があります導入部分では、どのような表現が使われているか、そこから本題に入るためにはどのような表現が使われているのか、重要な内容を伝えるためにはどのように内容を強調しているのか、文章を締めくくるにはどのような表現が使われているのかなどを分析してみると、ただ読んだり聞いたりして理解するだけでは得られなかった学習ができます

 それができたら、そうした英語を自分で再現出来るようになるために努力してみましょう。全く同様の文章を再現するのを目標にするわけではありませんが、細かい表現はそのまま使えるようになれば、あなたの将来の英語に必ず役立ちます。

 優れた教材の英語を自分で表現できることを目指して学習してみてください。

 

 

Q.34「英語を学ぶやる気を引き出すには?」

 先日、ネットの記事で「語学学習にはモチベーションが不可欠」と目にしました。私の勤める会社では、昇進の条件のひとつとしてTOEICのスコアが求められているので、少しずつ勉強したりしているのですが、モチベーションが湧かずにどうしたものかと思っています。学生の頃から英語が特に好きというわけではないので、現在のように細々とやっている感じなのですが、これだといつまで経ってもあまり上達しないような気もします。モチベーションはどうしたら上がるのでしょうか?(さとし、31歳、会社員)

 

「英語を使っている自分の姿を目標にする」

 なかなかやる気が湧いてこないという悩みは、英語に限らずあらゆる分野に共通する大きなテーマだと思います。なかなか自分の英語力アップも実感できないとさらに悩んでしまいますよね。ここで、すべて解決するような回答は難しいことですが、モチベーションについて知ると少し考えが変わるかもしれません

 モチベーションの種類にはいくつかあるのですが、ここでは二つ紹介します。一つは、すでに経験済みのモチベーションです。実は、昇進の条件の一つとしてTOEICのスコアが求められているので、少しずつ勉強しているというのは、すでに外発的動機付けがあるということです。すでに学習を始めていらっしゃるので、この外発的動機付けには効果があったといえます。これとは別に、内発的動機付けがあります。これは、英語学習そのものに意義を感じ、内面から湧き出てくる英語学習そのものに関する興味などによるモチベーションです。

 これらの外発的動機付けと内発的動機付けでは、学習効果に対する違いがあまりないといわれています。つまり、昇進や資格合格、極端にいえば賞金などの外発的動機であっても、本質的に英語に興味がある方々と同じような結果が出せるということになります。

 実は、私も英語に興味があったわけでもありませんし、英語が得意だったわけでもありませんが、「教師になるには英語が必要」となったので、英語を学習しました。つまり外発的動機によって英語を学習せざるを得なかったということです。

 ここで私が重要だと感じたのは、自分が英語を使って何をしているのかというビジョンを持つことでした。英語学習がうまく進まず、単語も覚えられず悩んだときも、1年後の自分がアメリカの大学院で英語教育を学んでいる姿を目標に、ただただ継続しました。外発的動機に加えて、将来英語を使っている具体的な自分の姿を想像して、いつもその姿を目標に頑張ってみてください。

 また、英語力アップを一度実感できると、その後の継続はそれほど難しくありません。自分がやってきた努力が間違っていなかったと実感するが継続への力になります。英語力アップを実感できるまでは、自分が英語を使って活躍している自分の姿を目標に頑張ってください。

英語は言語なので、学習時間に比例して上達します。少しずつで構わないので、継続学習してください

 

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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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