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Q.89「TOEICのリスニングパートを解くにも、文法力は必要?」

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Q.89「TOEICのリスニングパートを解くにも、文法力は必要?」

 初めまして、英語の勉強方法に困っていたところこのようなサイトを見つけたので質問させて頂きました。 toeicのリスニングパートを毎日1時間勉強しています、三ヶ月続けてきたのですが、ほとんど聞き取れません。 自分で色々原因を調べてみたのですが、どうやら文を見て瞬時に訳せるものでないと聞いた時にも訳せないみたいです。 少し考えれば当然だと思うのですが、自分は疎かにしていました。 そこで質問なのですが、自分は今までpart 1,2,3,4 と順番通りにやっていたのですが、先にpart5,6,7 の練習をして文法のレベルを上げてからpart 1,2,3,4をやるべきでしょうか?(nakku、大学生、20歳) 


 勉強しているのに効果が見えないのはなぜか?

 TOEICの学習を継続されているとのこと、感心します。なかなか聞き取れるようにならないと継続も難しくなりそうなところですが、もう少し自分自身の上達を実感できるようにして、今後の継続学習につなげていきたいところですね。

 さて、リスニング学習を1日1時間、3ヵ月続けているのに聞き取れるようにならないとのことですが、最初にこの原因について考えてみたいと思います。自己診断で、「瞬時に訳せるものでないと聞いてもわからない」ということでした。この点からいくつかの可能性が考えられます。

 まず、使用している教材についてですが、教材選びも英語学習には重要なステップです。TOEICというテストはスコアでレベルを表わすテストですので、スコアが990点の上級者も100点の初級者も同じ英文を聞いたり読んだりします。したがって、いわゆる問題集と呼ばれる教材には、初級者でも理解できる英文から、かなりの上級者でないと理解できない英文が含まれています。リスニングパートで300点レベルであれば、概算ですが4割くらいの英文は聞き取れない可能性があるということですし、全部が聞き取れるということは、495点を獲得する可能性があるということです。

 

まずは自分に合った教材選びからはじめましょう!

 教材選びにはレベル設定が重要です。どのレベルの学習者でも使用できる問題集は、上級者の学習にはとても向いているといえますが、初級者には難しすぎる問題が多すぎるかもしれません。つまり、教材としてはあまり高い学習効果を期待できないかもしれません。

 ご自身のレベルを知るために、まずはTOEICを受験されるといいと思います。あるいは、問題集を使用しても構いません。問題集を用いる場合には、休憩無しでPart 1からPart 7まで2時間で行うなど、本番と全く同じ条件で受験して、現在のレベルを把握してみましょう。問題集の多くは予想スコアが計算できるようになっているので、それで現在の予想スコアをまず知りましょう。

 現在のレベルが把握できれば、そのスコアに100点から200点を足して、目標スコアを設定しましょう。2~3ヵ月間ではそれくらいがちょうどいい目標設定だと思います。そして目標スコアを基に、ご自身のレベルの合ったテキストを購入しましょう。純粋にスコアアップを目指すのであれば、Part 2から始め、Part 5へと進めるのがオススメです。英語力を上げるというのであれば、Part 7からはじめて、読解をしながら、語彙、表現、英文の構造なども併せて学習するといいでしょう。語彙や表現などは英文の文脈から学んだほうが、高い学習効果が期待できます。将来実際に英語を使うときのことを考えると、長文の中から語彙や文法を学習することを強くオススメします。

 

英文を和訳する勉強法は避ける!

 また、英文を和訳しているようですが、この学習方法は避けるようにしましょう。読むときも聞くときも、英文を和訳した瞬間、日本語の文を解釈をしていることになってしまいます。おそらく、Hi! How are you?と挨拶されて、「こんにちは。ご機嫌いかがですか?」と訳してから答えたりしないと思います。それは反復により、この英文が定着しているからですが、このように反復によって、訳すという作業をいれなくても英文から直接解釈できる英文を増やすようにしていきましょう。どうしても訳してしまう場合には、必ず英文に戻って、英文を見ただけあるいは聞いただけで解釈できることを確認しましょう。

 

語彙学習は音と一緒に!

 長文を用いて語彙学習をした場合、その語句を聞き取れない場合があります。それを防ぐためには、必ず発音も学習しましょう。読み取って学習して折角覚えた単語も、発音を知らない、あるいは発音を間違って覚えてしまっていては、リスニングでその単語が登場しても聞き取れません。英語にはスペルから発音を予測できない単語が多くあります。語彙学習をする場合には、意味、用法、発音を必ずセットで学習しましょう

 

実際に口に出す練習がリスニング力と発音を向上させる!

 さらには、ナチュラルスピードで話すTOEICの教材になれるためには、スピードに慣れるための練習も必要です。スクリプトを使ってオーバーラッピングやシャドーイングをして、教材の音声と同じスピードで英文を読めるようにトレーニングしましょう。オーバーラッピングは音声と全く同時に音読をする練習で、シャドーイングは1~2秒遅れて音声についていきながら音読する練習です。シャドーイングは慣れてきたら、スクリプト無しで、聞き取った英文そっくり再現する形で進めるとさらに学習効果が上がります。いずれのトレーニングも、自分が口に出している英文の意味を聞き手に伝える気持ちで、音声のスピード、抑揚、強弱すべてを完全にコピーするように心掛けましょう。これらのトレーニングは、リスニング力も発音も良くなるので、是非試してみてください。

 これで少しずつ上達が実感できるようになると、さらに継続学習ができるようになります。ぜひTOEICの目標スコアを達成してください!

 

 

 

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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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