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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.124「高校の英語の先生になりたい!必要な英語力を身につけるには?」

今から大学で教職の授業を取ろうと思っているのですが、中学の英語教師か高校の英語教師か迷っています。個人的には高校の英語教師になりたいと考えていますが、高校英語は難しく、英語力の高くない私には、とても授業に追いつける自信がありません。私の周りの英語英文学科の学生たちに置いてけぼりにされないか、とても不安です。これから毎日どのような勉強をしていけばいいでしょうか?(高校生の時の英語の教科書は取ってあります)

(18歳、大学生)


 

教員を目指すなら、できる限り高いレベルを目指しましょう!

中学の教師を目指すか高校の教師を目指すかで迷っていると聞き、私自身が大学の教職課程でもがいていた頃のことを思い出しました。当時の私の英語のレベルは、基本的なことすら理解できていないレベルでしたし、大学4年の5月に教育実習で母校の高校ではじめて教壇に立つと、自分の英語力のなさを痛感しました。留学して高い英語力を身につけてから教師になろうと考えたのは、まさにその頃のことでした。

 

英語力の伸びは、基礎力にあり!

文部科学省によれば、英語教師には英検準1級相当の英語力を身につけることが望ましいとされていますが、私の個人的な意見は少し違います。教える場が小学校であっても、中学校であっても、高校であっても、あるいは大学であっても、できるだけ高いレベルの英語力が必要だと考えています。特に英語に触れ始める小学生や中学生での英語教育は、学習者の基礎を固める重要な場です。教師の英語力はもちろん、指導力も高い方が望ましいと思います。学習者は、初期の頃にしっかりとして基礎を身につけておくと、後の学習で、高いレベルの英語力を身につけられるための準備ができますが、この基礎が弱いと、後の学習で身につけられるレベルに限界をつくってしまいます。

これは、建物を建てるのに似ています。建物を建てる際には、必ず基礎を作ります。この基礎固めによって、その上に立てられる建物の規模が決まります。どの高さのビルを建てるにしても、基礎が強いことに越したことはありませんが、2階建てのビルに対して十分な強度を持つ基礎を固めたとしても、その上には50階建てのビルは建てられません。

英語学習でも同様です。学習者がハイレベルな英語力を身につけられるように、学習の初期の段階で、今後の長い学習の間、揺るぐことのない基礎を固めてあげるのが、英語教師の使命だと考えています。

 

スキル別に弱点を見極め、継続学習を!

せっかく英語教師を目指すのですから、できるだけ高いレベルの英語力を手にいれてください。そのために、少しずつ継続学習することを強くおすすめします。学習を始めるにあたって、まずは自己分析をして、自分には何ができるのか、何ができないのかを明らかにすることが近道です。必ずしも必要ではありませんが、4スキルに分けて自己分析をして、苦手なスキルを中心に学習を進めるといいでしょう。

英語資格試験などを受けて、その結果で自己分析するのも良いと思います。これまでに、何かしらの英語検定試験を受験されたことがあると思いますが、検定試験のスコアシートにはスキル別の評価もあり、検定試験によっては、たとえばTOEICならAbilities Measuredという詳しい項目別の評価も記載されています。これらは、自己分析にとても役立ちますし、これを基に定期的に目標を設定することができます。

 

苦手なものこそ目標を作り、時間をかけた学習を!

目標設定ができればあとは学習です。どのスキルの伸ばすにしても、学習時間が長ければ長いほど身についていくのが英語力です。話す時間が長ければ話すのがうまくなりますし、書く時間が長ければ書くのが上達します。英語教師になるためには、やはり苦手なスキルは克服しておきたいので、時間のかかる苦手な分野により時間をかけて学習するといいでしょう。

学習方法についてですが、自習用の教材を使用して学習するのがいいでしょう。学校用教科書は、教師が教室で使用することを前提に作られているので、必ずしも自習用に適しているとは言えません。ですが、復習用の読み物や文法事項を調べる際に使う参考書として使うことがあります。あるいは、教職課程の英語科の授業研究などで授業計画を立てるときに実際の教科書を用いることがありますので、その時のために取っておくといいでしょう。

何の学習でもそうですが、目標があると継続学習がしやすくなるので、検定試験で目標設定するのはどうでしょうか。4技能の学習が同時進行できるのが望ましいので、4技能を測る試験を選ぶといいでしょう。まずは受験してその結果をみて、そこから2~3か月で達成できそうな目標を立てましょう。たとえば、英検でも単に合格不合格を目標にするのではなく、CSEスコアを100点アップするといった具体的な目標の方がいいでしょう。

検定試験のための学習を批判する方も少なくありませんが、基礎的な正しい文法、用法、語彙の使い方などを学ぶために適したテキストも多いので、単に問題を解くためではなく、テキストに書かれている英文をすべて学習に生かせるような使い方をするといいでしょう。どのように過去形と現在完了形が使い分けられているのか、どのような文脈で受動態が使われているのかなど、英文を分析しながら読むと、英語教師に必要な力が養われます。

 

最適な学習方法を見つけ、各スキルを上達させる

もちろん、英文をすらすら読み進めるスキルも必要なので、多読もやっておくといいでしょう。オンライン上で、無料で読めるGraded Readers(様々なレベルの学習者のために、それぞれのレベルの英語で書かれた本)もあるので、数分でも構わないので、毎日少しずつ読み進めて、純粋に内容を楽しんでください。この多読では英文を分析することはせずに、内容を楽しむことを目標にすると効果があるといわれています。

英語教師になるにあたって、もちろんスピーキング力も大切になります。こちらは英会話教室に通ったり、オンライン英会話サービスなどを利用するのもいいですが、純粋に大学にいる留学生と交流したりするのもおすすめです。

最近では、スピーキングに特化した英語学習アプリなどもあります。それらをフル活用してスピーキングの練習をするのも大事ですし、今はスマホで毎日写真を数枚撮ってそこに映るものを英語で説明してみる、といった練習方法も有効です。その説明を録音して聞き返してみると、自分は何が話せて何が話せないのかがとてもよくわかるので、おすすめの学習方法です。

同様の方法でライティングも学習できます。一度書いたものを数日後に読み返してみると、何が書いているのかわからないことも、少なからずあります。それをどう書き直せばいいのかを考える、この積み重ねが上達するにつながります。

見てきたように、工夫次第で自分でできる学習方法はたくさんあります。将来、生徒の皆さんに、自身の学習体験について話すことが必ずあります。その時のためにも、色々な学習方法を実際に試してみるのがいいでしょう。英語は時間をかけて努力すれば、必ず身につきます。継続学習をして、ぜひ素晴らしい英語教師になってください。

 


●編集部より:英語学習に質問やお悩みのある方は、ぜひ横本先生にご質問をお寄せください。一人で考えて答えが出る悩みもあれば、悩み続けて時間が経ってしまうことも多いと思います。英語学習についてのご質問はもちろん、留学のご質問なども受け付けております。ご質問はこちらから。ぜひお気軽にお聞かせください!


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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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