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Q.65「文法の勉強だけではニュアンスを理解できない?」

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Q.65「文法の勉強だけではニュアンスを理解できない?」

最終的に英語圏で暮らしていきたいと考えており、テストのための勉強ではなくネイティブレベルに近づけるような勉強方法が知りたいです。たとえば、ネイティブの8歳となると、難しい言葉は理解できないとしても、イントネーションやコミュニケーション能力は十分にありますよね。そのレベルになるまで、どういう勉強をしていったらいいのか分かりません。英語のコア的なことを身につけたいのです。

私自身は、英語の表現方法を地道に学んでいくしかないのかな、と考えています。例えば、wayの使い方に慣れるとか、英英辞書で調べ直していくとか、リスニングで聞き取れなかったところはスクリプトを見て確認するとか、そういう勉強を地道にやらないと駄目なのかなと思っています。

この他にもおすすめの勉強方法はありますでしょうか。英文法に関しては、Pearson の “Focus on Grammar” 1-5などを6ヶ月間毎日やったのではある程度の理解は出来ていると思うのですが、たまに、"~ what being in love. "のようなこなれた表現が出てくると、わからなくなってしまいます。being のニュアンスがわからないからです。beのing系なのか、being で意味をなしているのか分かりませんし、分かったところでニュアンス(英語圏ではどういう感じで使われているのか)が分かりません。そこはやっぱり、バイリンガルの先生についてもらって、一つ一つ教えてもらわないと理解するのは難しいような気がしています。

とりとめのない話をして申し訳ありません。実は、今もう一年英語学習をするか、ここであまりやりたくない仕事をするかで迷っているのです。やっと英語がわかり始めてきたのに、あまり興味のない仕事で中断させてしまうのはもったいない気がしています。もうちょっとやれば、きついでしょうが、英語がものに出来るような気がしています。

リーディングをたくさんしても、何かに気づかないと(リズムだったり、語順だったり)意味がないのです。その点、リスニングのほうが学習に効果的な部分が多いように感じています。今の自分には、リスニングをもっとした方が良いような気もしているのですが、どうでしょうか?(40歳、女性)

 

 文法の学習は効率が良い!定着するまで続けましょう!

 ネイティブのように英語を扱えるようになりたいという気持ちは大変よく理解できます。おそらくこれまでも相当な努力をされてきたのだと思います。その努力を最大限に活用するためにも、今後の学習方法を考え直すいい機会かもしれません。

 英文法を学習するというはとても理にかなっていて、英文の構造を効率よく知り、学ぶ学習方法だと思います。基本的な文法事項はすでに学習されているようですが、たまに珍しい表現に出くわすと不安になる気持ちもよく分かります。

 文法のテキストや文法書に書かれているのは、あくまでも実際に使われている表現の説明です。英語を母語として育ち教育を受けた人たちが使っている表現を、多くの言語学者がなんらかの形で説明をしています。そのため、同じ表現でも言語学者によって解釈や説明方法が違うこともあります。

 たとえば、This novel is written by a local writer.という受動態の説明では、「be + 過去分詞形で『writeという動作をされた』となり、この文の主語がその動作を受けとる」と説明されたり、「過去分詞形には『~された』という意味の形容詞的な意味があり、be動詞は『イコール』を表す」という説明があったりします。

 

文法の説明には限界があるが、、、

 人間は生まれてきて話し言葉を習得するとき、文法書にあるような文法ルールを体系的に学びません。家族や周りの人間が使用している言語を聞いて、観察して、自分の中でルールが無意識のうちにできあがったときに、そのルールに則って言語を使用します。そうしたルールの数は本では書き切れないほどになりますし、文法書ですべての文法を網羅するのには限界があります。未だに言語学で英語の文法の研究をする言語学者が多くいます。それは、すべてを説明仕切ることはほぼ不可能で、まだまだ説明されていない文法、あるいは、別の説明が可能な表現が数多くあるからです。

 言語を外国語として学ぶ際、学習している言語に囲まれて生活する時間が圧倒的に少ないので、文法書などを使って、ルールができあがっているものはルールを先に学びます。その方が行き当たりばったりの学習より効率がいいからです。しかし、先ほどの文法説明の限界を考えると、すべてを本から学ぶことは難しいかもしれません。ただし、すべてを学ぶ必要があるかどうかといえば、そうではありません。

 まず、今できることは、文法書で学習したルールは定着するまで使うことが重要です。聞いたり読んだりするだけではなく、話したり書いたりすることで、学習した文法を使う必要があります。言語学習は、文法を分析したり、理解したり、語彙を増やしたりするだけでなく、円滑なコミュニケーションを目的にするべきなので、自分の言いたいことを100%伝えられるような学習方法にするのはいかがでしょうか。そこで上手く表現できないという壁にぶつかったときに、培った分析力を使って、新しい表現を学ぶ方が実用的な英語を身につけられると思います。

 

ニュアンスは説明ではなく、感覚で掴む!

 リスニングかリーディングかということでも悩んでいらっしゃいますが、これは「話し言葉か書き言葉か」という選択でもあります。つまり、話すことを目的とするなら、リスニングが不可欠ですし、書くことが目的ならリーディングが不可欠です。

 しかし、「リスニングではまだスクリプトに頼らないと聞こえない単語がある」というのが気になります。母語を使えるような年齢になってから外国語を学ぶと、母語の発音のカテゴリーを基に外国語の発音を聞いてしまうので、聞き取りが困難です。/l/も/r/もラ行の音に聞こえるのはそのためです。

 たとえば、日本人が苦手で有名なlight とrightの区別、上級者の間ではcarsとcardsの区別も、通常、文の中で使われていると文脈で区別できることがほとんどですが、ネイティブは音だけに頼っても区別ができます。時間はかかりますが、反復練習をすることで聞き取りの際に音の区別ができるようになります。

 この音の区別ができるようになると、聞いたことのない新しい単語を聞いたときに、音として新しい単語を覚えることができます。スクリプトに頼ると、一旦音の情報を無しにして、結局はリーディングでの学習になります。意味を学ぶ上では効率がいいので、取り入れるべき学習方法ですが、再度音での学習に戻るべきです。この単語のもつ音と意味のリンクができあがる前に単語学習が終わってしまうことは避けたいです。

 また、文法が一通り身についたら、リスニングでもリーディングでも、文法の分析をそろそろ止めるのはいかがでしょうか。分析して、文法ルールを学ぶのはある程度までの学習には効果的だと思いますが、稀に登場する表現を分析して理解しても、実際にそれを使用した表現に再度出くわす機会も、自分がその表現を使用する機会もあるかどうかわかりません。内容理解の障害にならない場合には、毎回説明をする必要はないような気がします。

 

ニュアンスを感じられるようになるために

 最近ではオンライン辞書などで、共起表現(注:ある単語と一緒に、同じ文の中で使われる言葉・表現のこと)を一気に検索することができるようになりました。これは、単語がどのような文脈で使用されているのかを学ぶのにとても有効です。別の文脈で使われていることを待たずして、検索によって探すことができるからです。ただ、音の問題は克服できないので、こちらはあくまでもリーディングとライティングで生かされるニュアンスの習得だと捉えてください。

 英語圏での生活では、話すことも書くことも避けられませんから、どちらか一方に絞って学習することはオススメしません。ただし、今後の学習は、内容理解を中心に行い、辞書や文法書を見ずに行うと、いわゆるニュアンスの学習になると思います。ニュアンスは感覚的に学習するべきです。私が学んだアメリカやイギリスの大学院では、いわゆる言語ルールの説明を余儀なくされる言語学系のクラスでは、留学生の方が優秀でした。ネイティブは、ニュアンスで正しいかどうかの判断はできますが、説明はできません。日本語の「ドアが開いている」と「ドアは開いている」の違いの説明を、日本人であれば誰でも上手くできるわけではありません。ニュアンスを掴むために、感じる学習に少しずつ転換してみてください。最初のうちは、説明をしない学習に不安を覚えますが、しばらくすると、なんとなく分かる、つまりニュアンスを掴み始めるのを実感すると思います。少しずつですが、目標達成できることを心から応援しています。

 

 

 

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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター講師
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、など

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