Q.137「知っている単語なのに聞き取れない...そんな時はリンキングを学ぼう! 」
リスニング力を上げたいと思い、最近、知人におすすめされた短いフレーズ集を使って勉強しています。取り上げられているフレーズ自体は”I got it.”や”It’s up to you.”など簡単なものなのですが、音だけを聞いた時にどんな単語かわからなくなることが多いです。本で確認すると「ああこんな簡単な単語なのか」と思うこともあり、単語同士がリンキングされることで、こんなにもわからなくなるのかと感じています。リンキングを克服するには、やはり音のつながりを一つひとつ確認していくしかないだろうなと感じつつ、もし良い勉強法があれば教えていただけると嬉しいです。
音の繋がりの学習とフレーズ単位の学習を
知っている単語ばかりが並んでいるのに、なかなか聞き取れないというのは、よくあることだと思います。ご指摘のようにネイティブの話す英語は単語と単語の間を区切らず全部の単語を繋げて話すので、どこに単語の区切れ目があるのか、すぐに理解できないことがよくあります。今回はその単語の区切れ目がうまく聞き取れない原因を二つに分けて説明させていただき、それぞれを克服するための練習方法を紹介させてください。
ディクテーションで音のつながりを知ろう!
まず、単語の区切れ目が聞き取れず、簡単な単語の組み合わせでも聞き取れない原因は、発音に関する知識が不足していることが考えられます。ご指摘の通り、音の繋がりについての知識は、聞こえてくる音声を単語に分けるというプロセスにとても役に立ちます。ここで、自著のテキストで恐縮ですが、簡単な単語ばかりで話された英語を一字一句聞き取るために必要な音の繋がりや文法に関する知識を学習するために書いたテキストがありますので、ここで紹介させてください。
タイトルは、『究極の英語ディクテーションVol. 1』と『究極の英語ディクテーションVol.2』 というテキストです。まずVol. 1では基本単語1000語のみを使用して作成しています。そのため、初級者の方でもそれほど知らない単語が登場するわけではなく、音の繋がりや文法的な知識が原因で一字一句正確に聞き取れなくなりそうな、簡単な英文が収録されています。例で挙げていただいたI got it.のようにgotの最後の子音の/t/とitの最初の母音の/ɪ/が繋がるリンキングなどをはじめ、例を使用して音の繋がりについて体系的に説明し、同様のリンキングの聞き取り練習もできるように構成しています。音の繋がりに加えて、文法知識を使って、あまりはっきり発音されない部分を補う練習もできるようになっているので、知っている単語ばかりなのになかなか聞き取りができないという方にはピッタリのテキストだと思います。Vol. 2では単語レベルを基本単語2000語まで上げて書いているので、Vol. 1を終えてさらに練習するのに適していると思います。
いろいろな人の発音を聞いて特徴をつかむ!
また、音の繋がりを体系的に学んだとしても、テキスト1冊に収録されている音声の量は限られており、リスニングの練習量としては決して十分とは言えません。さらに聞き取り練習をしていただきたいのですが、それに適しているのがYouGlishというサイトです。このYouGlishでは、聞きたいフレーズを検索バーに入力すると、そのフレーズが使用されているYouTube動画を見ることができます。同じ音の繋がりでも、その音の繋ぎ方には個人差があります。また、人によって話すスピードも違いますし、リンキングの根本となる子音や母音の発音に多少のバリエーションがあります。話し手の出身地や英語以外に話す言語の影響によって発音が変化することもよくあります。先ほどのgot itという例で簡単に説明してみると、/t/という音はもともと破裂音というもので、/t/の発音をするときに舌を前歯のすぐ裏あたりに押し付けて空気を遮断してからその空気を破裂させて出す子音です。イギリス英語の/t/は空気を一旦遮断して破裂音を出すことが多いので、カタカナで表記するなら、ゴッティトゥのように/t/の音が発音されているように聞こえてきます。一方、アメリア英語ではgotの/t/が弾音化して、日本語のラ行のような発音に変化するので、カタカナで表記するならガリッのように聞こえてきます。人によって若干発音の仕方が異なることはよくあるので、様々な人の発音に触れることが重要なので、このYouGlishを使っていろんな人の発音の仕方に触れることはとても有効的な練習方法になります。
聞き馴染みのある語彙と表現を増やそう!
また、音を聞いただけで単語が分からなくなるのには別の原因もあります。それは語彙力です。音だけに頼って聞き取りをするというのはとても難度の高いタスクです。これまでの経験で、はじめてお会いした方と自己紹介した際に、相手の名前がうまく聞き取れずに、聞き返したことはありませんか。うまく聞き取れなかった原因はいくつか考えらえると思いますが、その中のひとつに聞き馴染みのない名前だったということもあると思います。
聞き馴染みのない言葉は、脳がその音が聞こえてくることを予想しないので、とても聞き取りにくくなります。これは英単語でも同様です。その単語や熟語を知らないとなかなか聞き取れません。それは知っている単語ばかりを組み合わせて作られた熟語やフレーズも同様です。一つ一つの単語を知っていても、今までにない組み合わせで発音された場合は、やはり聞き馴染みがないので、聞き取りが難しくなります。それを、聞き取れなかったと考えるより、それは新出単語だと考える方が自然ですし、今後の英語学習にも役立つと思います。例として挙げられているIt’s up to youも、it, is, up, to, youのすべての単語を知っていても、It’s up to youの意味はなかなか想像できないので、ひとつの塊として「あなた次第です」という意味だと理解する方が発音の面でも語彙力の面でも理に適っています。
このように音の繋がりを学習したり、知っている単語の組み合わせでできている表現を新しい語彙として学習すると聞こえてくる音が増えてきますので、自信を持って学習を続けてください。
★先生おすすめの発音学習サイト★
・YouGlish ( https://youglish.com/ )
サーチボックスに発音を聞きたい単語を入力して検索すると、YouTubeの膨大な映像データの中から、該当する語を含む複数のクリップを再生してくれます。該当の単語が発音されるところから再生してくれるので、同じ語の様々な人の発音が簡単に聞くことが可能!実際の発音のされ方を学び、リスニング力アップに役立てましょう!
★編集部より★
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