朝日出版社ウェブマガジン

MENU

教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.88「ネイティブと非ネイティブ、文法の学び方の違いとは?」

この連載は、英語学習に悩みを抱える読者の方のご質問に横本先生が懇切丁寧にお答えしていきます。先生へのご質問はこちらから。お気軽にご応募ください。
英語お悩み相談室 質問受付フォーム

 

Q.88「文法の学び方、ネイティブと非ネイティブの違いとは?」

文法の勉強が苦手です。現在形、進行形、助動詞まではまだいいのです。が、関係詞や仮定法、分詞構文とかになってくるともう訳が分からなくなってしまって、新しい参考書を買ってもいつもそこで挫折してしまいます。どのようにすれば理解できますか??考えすぎて、ネイティブがどのように文法、とりわけ関係詞をどのように理解しているのか気になります。文法はどうしてこうも分かりにくいのでしょうか?なにか良い方法、理解する助けになるようなやり方はありませんでしょうか。

 

2種類の知識 「宣言的知識」と「手続き的知識」

 文法説明は、時には複雑で例外も多く、なかなか簡単に覚えることができません。私も得意ではありませんでした。文法説明を理解できるに超したことはありませんが、実際には英語が使えることの方が重要です。そのために必要な知識についてご紹介します。文法知識に限らず、何かを学習していく過程で獲得していく知識には、宣言的知識と手続き的知識という2種類の知識があります。

 まずは宣言的知識です。これは、言葉で説明できる知識のことです。学習者が新しいルールを学び、それがどのようなルールか説明できるタイプの知識になります。たとえば、「書」という漢字を書道で上手く書くためには、全部で8本並ぶ横画の間隔を均一に揃えると上手に書ける、ということを知っていて、それを説明できるということです。ただ、この知識があっても、実際に「書」という漢字を美しく書けるかどうかは別の話で、知識があるからといって上手に書けるとは限りません。このような知識を、宣言的知識といいます。

 英文法の教科書や参考書で説明されている文法は、この宣言的知識だと言えます。実は、この宣言的知識は、英語を外国語として学習している者にとって、効率よく英文を書けるようになるために重要な役割をします。たとえば、動詞の過去形の使い方などを考えてみましょう。Yesterdayやlast weekなどのように、過去のある時間を表わす語句が文に登場する場合、ある出来事、あるいは行動が行われたのは過去なので、動詞は過去形にするというのがルールです。規則動詞の場合、動詞の原形に-edを付けて過去形にするというのがルールです。このルールは、過去の出来事や行動を表わす英文すべてにおいて適用できるので、ルールを覚えるだけで、あらゆる文で過去形の文が表現できるようになります。この効率の良さが文法を学習する大きな理由です。

一方、手続き的知識を持っている人は、必ずしもその知識について説明ができるとは限りません。たとえば、コンピュータを使うとき、ブラインドタッチでタイピングの速い人は、ひとつひとつのキーがどこにあるのかを把握していて、意識的に押したいキーをタイプしているというよりは、無意識のうちに文字をタイプしています。これが手続き的知識です。

知識には二つの種類がある、このことをまずは知っておいてください。

 

文法を身につけるには慣れることも大事!

 英語においては上級者やもちろんネイティブは、英語を話すときに、この出来事は過去に起こったから動詞を過去形にしなければならない。動詞の原形に-edを付けて過去形にするというようなことを考えずに話しています。もちろん上級者だけではありません。初級者であっても、誰かとはじめて出会ったとき、

Hello. My name is ○○○.

という表現で自己紹介すると思いますが、ネイティブはこのとき「nameは名詞で、誰のnameかを表わすには所有格のmyを使うのがルールで、nameは単数名詞だからbe動詞はisになる」というような文法的な説明を考えずに言っています。これが手続き的知識です。

 実は英語学習で身につけたいのはこの手続き的知識だと言えます。いくらうまく文法説明が出来ても、話すとき、書くときに、英文でその知識を使って表現できないのでは意味がないからです。逆にいえば、英文で上手く表現できさえすれば、宣言的知識は不要ということになります。分詞構文、関係詞、仮定法など、説明すると複雑な文法に関しては、『習うより慣れろ』でもいいと思います。

 学校の試験などで、文法説明を求められている場合、あるいは、教師になって英文法を説明しなければならない場合は、宣言的知識が必要となりますが、英語を実践で使用するのが目的の場合、必ずしも宣言的知識は必要ではありません。

 

まずは英文のひな型を覚えましょう!

 では、宣言的知識なしに、どのように手続き的知識を習得すればいいのでしょうか。ここで最も重要なのは相当量のインプットと反復です。インプットは、テキスト、参考書、辞書などにある例文を使いましょう。覚えたい文法事項の例文を数文、丸暗記しましょう。何度も何度も音読するなどして、一字一句丸暗記してしまいましょう。このとき、丸暗記した文の意味をしっかりニュアンスも含めて覚えるようにするのが肝心です。

 たとえば、

If I lived in Okinawa, I would go to the beach every day.

という例文と

「もし沖縄に住んでいたら、毎日ビーチに行くだろう」

という和訳があったとします。この文は仮定なので、自分が沖縄に住んでいなくて、毎日ビーチには行かないことを想像しながら反復して例文を丸暗記します。そして、この例文をひな形として、例えば Iの代わりにtheyを使うこともできますし、lived in Okinawaの代わりにchose the red dressを使うことで、自分で英文を組み立てることができるようになります。。 

 過去形の動詞を他の動詞と置き換えるときには過去形の動詞を当てはめるというように、単語は変えても形は変えずに、このひな形に当てはめていくことで基本的な文を作れるようになります。これを繰り返していくと、宣言的知識は身につかないかもしれませんが、手続き的知識は少しずつ身につくと思います。是非、コツコツ手続き的知識を身につけていってください。

 

 

バックナンバー

著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、など

ジャンル

閉じる