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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.100 「子供を海外の有名大に留学させるには...」

小学生の息子がいるのですが、彼には将来的に海外の有名大学に行かせたいと思っています。まだ4年生ですが、英語はもう学校で学び始めていて、話してくれるのを聞く限り、楽しく勉強しているみたいです。

私自身は都内の女子大を出たのですが、高校の友人にUCLAに進んだ子がいて、その子を見ていると、海外の大学を出た方が人生の選択肢が多いなと感じます。実際、友人は日本の会社に務めたあと外資系のIT企業に転職し、今はシンガポールにいます。どうしたら海外の大学、例えばUCLAのような有名な大学に行かせられるでしょうか。やはり、親の海外勤務に連れて行くなど、小さい頃に海外経験がないと、なかなか難しいのでしょうか。

英語に関する質問でなくて申し訳ありませんが、宜しくお願いいたします。

(あゆみ、41歳、会社員)


 

|留学準備は、日常生活での環境作りから

海外の有名大学卒業ともなると、人脈が国際的になり、人生の選択肢が広がるのは間違いないと思います。お子さんがUCLAのような有名大学に入学し、そして卒業するにはどうすればいいでしょうか。まずは、海外大の入試について確認しておきましょう。

 

|海外大の入試は、英語力、成績、学力テスト+エッセイ

まず、海外の大学入学は、日本の一般入学試験とは大きく異なります。多くの大学の場合、日本の大学でいう推薦入試やAO入試のような方法で、合格者を選抜します。入学するために入学条件や必要な応募書類などは、大学によって違いますので、志望大学の公式ウェブサイトにある、入学希望者のページで詳細を必ず確認しましょう。

 

さて、英語圏の大学の入学者選考で共通して重要視されるのは英語力です。一般的にはTOEFLやIELTSという試験によって英語力の証明をします。有名大学に入学するためには、TOEFLでは100点以上、IELTSですと7.0以上というのが目標スコアだと考えていいと思いますが、これはかなりの上級者の得点です。英語で教育を受けていない学習者にとっては、かなり高いハードルとなります。TOEFLもIELTSも、リスニング、リーディング、スピーキング、ライティングの4技能が含まれている試験ですので、総合的に英語力を磨かないと高得点を取得するのは難しいといえます。

 

次に、他の学力に関する審査もあります。高等学校での成績やScholastic Aptitude Test (SAT), American College Test (ACT)などの学力テストのスコアを要求する大学もあります。大学によっては、過去の合格者の平均的な成績やテストのスコアを公開しているので、それを目標に準備するといいでしょう。

 

そして、Essayの提出が求められることがよくあります。書く内容は大学によって様々ですが、多くは志望動機や将来の展望などについて書くことが多いと思います。知識の量ではなく、思考力と表現力が必要になります。しっかり内容を練って、自分の考えを読み手に分かりやすく伝え、自分の魅力を大学にアピールします。時間を掛けてじっくり書くことが必要ですし、時間に余裕を持って書き終えて、大学の留学に詳しい英文校正のプロがいるので、添削してもらうと良いと思います。

 

このように出願準備にはいくつかすることがありますが、重要なのは英語力です。まだ小学生であれば、十分間に合いますが、本人が続けられる方法で学習を進めていくことが重要です。海外の大学への留学を目標に始めた英語学習のストレスのせいで英語嫌いになってしまっては本末転倒ですから、本人が楽しみながら学習できる環境を作るのが親のできる一番のサポートです。

 

|海外大へ行くために、小学生からできること。

試験対策を今から始めるのは現実的ではありません。そのため、お子さんが小さい今は、日常で英語に触れる機会を増やすことから始めましょう。

たとえば、家族全員で、家の中にあるものの名称をすべて英語で言う時間を作ったり、go, eat, listen, speak,などの基本的な動詞をできるだけ普段の生活から英語で表現するように心掛けるなど、毎日少しずつ日常に登場する英単語に触れれば、基本的な英単語の多くを身につけられるようになるはずです。孤独な学習をさせないように、家族全員で英語を使う環境を作ってあげることが重要です。

 

基本的な500語程度が身についてくると、もう少し本格的な英語学習ができるようになります。たとえば、Graded Readersのような簡単な単語のみで書かれている本を読み進めるだけでも、英語力は養えます。それらの本には音声がついているものも多くあります。それらを使い、聞き取りによる理解力をつけていくことも重要です。ここで、最も重要なのは、理解ができるレベルの教材を使用することです。内容が理解できないものを、辞書等を使って調べながら学習すると効果があまり期待できないので、辞書等を使用せずに理解できるレベルの物を読んだり聞いたりするように心掛けてください。

 

また、学校だけの英語学習ではおそらく十分な留学準備は難しいので、英語教室などに通うことも良い考えでしょう。海外留学を視野にいれた英語教室がありますから、実際に通った方々の意見などを聞きながら、本人が通いやすい教室を選ぶと良いと思います。そこでは、もう少し難しいテキストを使用したり、話したり書いたりする練習をするはずです。また、ある程度のレベルに達するとTOEFLやIELTSなどの試験対策も行うはずなので、家では読むと聞くに特化した学習で十分だと思います。

 

これだけ、普段から学習する習慣が身についていれば、入学後の大学での勉強も安心できます。海外の大学では、宿題の量も多く、英語が母国語ではない留学生にとっては、課題を締切りまでに仕上げるのにもかなり時間がかかり苦労します。しかし、英語学習を成功させて有名大学に入学できるレベルまで達成した経験があれば、大学での課題も高いレベルで仕上げることができるはずです。

 

かなり英語力が必要とされるものの、海外の有名大学への留学は努力次第で可能になる目標です。お子さんが継続学習ができる環境を整えてあげて、入学に限らずしっかり卒業するための準備だと思って頑張ってください!


 ●担当編集より:英語学習に質問やお悩みのある方は、ぜひ横本先生にご質問をお寄せください。一人で考えて答えが出る悩みもあれば、悩み続けて時間が経ってしまうことも多いと思います。ご質問はこちらから。ぜひお気軽にお聞かせください!
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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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