Q.61 「どうしたら英文を早く読めるようになりますか?」、Q.62 「TOEIC®︎が時間内に終わりません。」
この連載では、英語学習に悩みを抱える読者の方のご質問に、横本先生が懇切丁寧にお答えしていきます。先生へのご質問はこちらから。お気軽にご応募ください。 |
Q.61 「どうしたら英文を早く読めるようになりますか?」
英文を読むのがすごく苦手です。今予備校生をしていて、英語担当の先生には「スラッシュリーディング」をしなさいと言われ、授業でも英語のかたまりごとにスラッシュを引いて解説してくれるのですが、意味があるのか疑問です。短い文なら読めるのですが、長い文になるとSVが取れなくなります。やっぱり文法力が足りないのでしょうか?(19歳、浪人(予備校生))
文法力、語彙力アップでスラッシュリーディングをする
英文を読むのが苦手な気持ちよく分かります。私も学生の頃は、辞書に頼って日本語に訳して読んでいたのでとても時間もかかりましたし、英文を読むのがなかなか上手くなりませんでした。スラッシュリーディングを知った時も上手くいかなかったのですが、練習して少しずつできるようになりました。スラッシュリーディングは、英文を早くそして正確に読むために、是非身につけて欲しいスキルです。
たとえば、
Explanations about language learning can be different depending on the researchers who observe learners from different points of view.
という英文を、単語毎に読み進めると、「説明」「~について」「言語」「学習」「~できる」「~である」「異なる」「~による」「~の上に」「その」「研究者」「~する(人)」「~を観察する」「学習者」「~から」「異なる」「点」「~の」「視野」となり、これを前から順に読み進めても、文全体の意味を把握するのは困難です。これを
Explanations about language learning / can be different / depending on the researchers / who observe learners / from different points of view.
のように、チャンク(塊)毎に読み進めると、「言語学習についての説明」「異なることがある」「研究者次第で」「学習者を観察する(人)」「異なった視点から」となります。このチャンク毎に意味を把握すると、日本語の語順に並べ替えなくても意味を把握することができます。スラッシュリーディングの最大の利点は、語順は英語のままでも、理解することが可能で、順番を並べ替えることに無駄に時間を要しないことです。
また、主語と動詞のセットを把握するために、最も重要な点は、英文の主語をまず探すことです。主語が1語の場合にはそれほど問題ないと思いますが、名詞句(複数の単語)が主語のときには少し混乱するかもしれません。たとえば、
The book published in 1989 …
と始まる文があるとすると、ここまで全体が主語だと分かります。このpublishedは過去形か過去分詞形かのどちらかですが、publishは人が行う動作で、直前にあるthe bookが出版することはなく、ここでは出版「された」を表す過去分詞形だと分かります。この知識があれば、このThe book published in 1989が主語になることがわかります。
先ほどの例のように、動詞にはその形によって、主語を持つ節の中の述語として使われる動詞と、他の語句を修飾したりする分詞があります。基本的には、can, could, may, might, shall, should, will, mustなどの助動詞とともに使われている動詞は述語として使われているので、その前に主語があるはずです。一方、現在分詞や動名詞の-ingや過去分詞形の-edは、文中では他の語句を修飾する役割をしているので、publishの例のように動詞の意味を踏まえて、前後の名詞との関連に注意して、修飾語だと分かるようにするといいでしょう。
いずれにしても、文法知識も語彙知識も必要ですし、練習しないとスラッシュを入れるのに時間がかかってしまい、本末転倒です。うまくスラッシュリーディングができるように、文法と語彙の学習も頑張りましょう。応援しています。
Q.62 「TOEIC®︎が時間内に終わりません」
ここ数年会社でTOEICを定期的に受けさせられているのですが、どうしても試験時間内に全ての問題が解き終わりません。最後の長文の問題を何題か残してしまいます。どうしたら時間内に問題を全部解き終えますか?何かコツとかテクニックみたいなものはありませんか?(まさみ、33歳、会社員)
解くべき問題かどうか見極めながらできるだけ多く解答する
TOEICのリーディングセクションを制限時間内に、なかなか全問解き終わりませんよね。読む量も多いですし、解く問題数も多いので、全問解くというのはそれほど簡単なことではありません。
ご存じだと思いますが、TOEICのリーディングセクションでは、大まかにいうと、語彙に関する知識、文法に関する知識とともに、英語で書かれた情報をいかに素早く正確に理解することができるかという能力を測っています。しかも、重要なのは、初級者から上級者まで同一の問題を解いて、それぞれのレベルをスコアで表すというテストです。つまり、リーディングセクションで495点中、100点レベルの受験者と120点レベルの受験者の能力の差を測るために出題され、120点以上レベルの受験者全員が正解すべき問題や、400点レベルの受験者と420点レベルの受験者の差を測るために出題され、400点レベルにまだ達していない受験者全員が不正解になるべき問題などが、混在しているということです。
受験者一人ひとりのレベルが、初級者だろうと、上級者だろうと、全員が同じ問題を見て解くので、リーディングセクションで495点(最高点)を獲得するようなレベルでない限り、最後の問題までじっくり解くということはして欲しくないはずです。たとえば、かなりの上級者ではありますが、400点獲得できるレベルの受験者が急いで解いて全問終わらせた場合、しっかりは読んではないけど、勘で解答した問題数問が正解していた場合、この受験者に495点を与えてしまう危険性が生じてしまいます。これでは、就職や受験など、社会的に影響力のあるテストとしては信憑性に欠けてしまいます。テストを信憑性のあるものとして実施する側の立場からすれば、全問題をしっかり解いて正解してほしいのは495点レベルの受験者だけです。TOEICに限らず、スコアでレベルを示すようなテスト全般にいえることですが、全問を解くことを目的にする必要はありません。
ただ、495点レベルの問題が最後にあるとは限りません。また、明らかに自分の実力では解けない問題は、10秒で解いても、5分間かけて解いても正答率に違いはありません。それを踏まえて、自分のレベルで解くべき問題かどうか、見極めながら取り組みましょう。Part 5とPart 6では、それぞれの問題を5~30秒で解いて、2つのパートを合わせて20分くらいで終わらせ、Part 7は、1問平均約1分間を目安に解く練習をしてみてください。もちろん、自分のレベルでは解けない問題はある程度考えたら、時間をかけずに勘で解く練習も合わせて行いましょう。そうすれば、少しずつ解答できる問題数が増えるはずです。長い道のりですが、いつか全問解くべきレベルに達すると思います。頑張ってください。