朝日出版社ウェブマガジン

MENU

教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.132「TOEICテストリスニングパートの勉強法」

私は今度TOEICテストを受験予定で、目標スコアは600点です。リスニングの勉強法でシャドーイングをしているのですが、自分には難しくて一日に2問程度しか復習できません。また、シャドーイングが辛くて、勉強のモチベーションが上がりません。このまま一問をじっくり復習するべきでしょうか?それとも、問題をたくさん解くべきでしょうか?また、どちらにせよ、リスニングの初心者でもできる、効果的な勉強法はありますか?よろしくお願い致します。(あゆ、大学生)


 

自己分析でリスニングの問題点を知る

 シャドーイングは、私の長い英語学習歴の中でも、一度は試してほしい学習法のひとつです。ただし、シャドーイングを行うには自分のレベルに合った教材を選ぶことが重要になります。すでに学習に取り入れているので、お分かりかもしれませんが、シャドーイングを行うには、聞こえてくる単語をすべて聞き取る必要があります。つまり、聞いている音声教材の中に知らない単語が多く登場してしまうと、かなり難しい学習法になります。

TOEICの受験を考えているということは、おそらくTOEICの問題集を使用してシャドーイングを行っていると想像しますが、TOEICは、英検などのようにレベル別に試験問題が異なるテストとは違って、英語学習をしたことのない超初級者から990点を目指す上級者まで、全く同じ問題を解くテストです。つまり、問題の中には、簡単な表現しか登場しないものもあれば、Part 3とPart 4には、初級者には難しすぎて、たとえば600点目標の受験者では理解できないレベルの表現も登場します。したがって、TOEICのリスニング問題を使用してシャドーイングするなら、800点程度のレベルが必要かもしれません。

 

シャドーイングは、自分のレベルにあった英文でやってこそ意味がある!

 ただし、使用する教材をしっかり選びさえすれば、シャドーイングはとても有効的な学習法です。まず、教材選びですが、知らない単語があまり含まれていない教材を選ぶことが重要です。知らない単語が多く含まれていると、文章全体の意味を理解することが難しくなり過ぎて、あまり学習効果が期待できません。日本の英語教育では、読み書きを通して新しい語句を学ぶことが圧倒的に多いので、音声から新しい語句を学ぶことに慣れていない学習者は少なくありません。また、シャドーイングは新しい語彙や表現を学ぶための学習法ではありません。知らない語句をあまり含まず、聞いたらほとんど理解できるレベルの教材を使用してシャドーイングをするといいでしょう。そうすれば、個々の単語の発音の学習、単語と単語を繋げて発音するconnected speechの学習、強弱や抑揚の学習のような発音に関する学習はもちろん、英文の中で弱く曖昧に発音される部分を埋めるために必要な文法知識などを磨く練習にもなります。

また、ここまでシャドーイングに苦労されてきたことですし、一度シャドーイングから離れてみるのも継続学習を考えると有効的かも知れません。シャドーイング以外でリスニングの学習をする際に、まずご自身で一度自己分析していただきたいことがあります。そのためには、様々なレベルの教材が含まれているTOEICの問題集などがちょうどいいかもしれません。そのような教材を使用して、音声を聞いた際に理解できない理由を突き止めましょう。聞いて理解できない理由が分かると今後のリスニングの学習計画に役立ちます。

 まず、例えばTOEICのPart 1やPart 2のような短い英文の音声でも構わないので、聞いてみて、意味が理解できるかどうか確認しましょう。そこで意味が理解できない英文があったら、スクリプトを読んでみてください。スクリプトを読んでもまだ理解できない場合は、語彙力あるいは文法知識が足りていないと考えられます。知らない語彙や表現はただの雑音なので聞いても理解できません。スクリプトに知らない表現があれば、日本語訳や辞書などを参考にして、必ず学習してください。その際、発音の学習を怠ると、後にリスニングで同様の表現が登場した際にまた理解できない可能性があるので、しっかり発音の学習も行ってください。リスニング教材を繰り返し聞いたり、辞書の音声を聞いたりするといいでしょう。

 一方、スクリプトを読めば意味が理解できた場合は、スピードについていけない、あるいは発音やconnected speechに関する知識が不足していることが考えられます。スピードについていけない場合には、教材を少し早いスピードで再生して聞き取る練習をしたり、高速音読をしたりすると少しずつ克服できます。いずれの学習法でも個々の単語の発音を必ずチェックしてください。高速音読をする際には、実際の音声と同じスピード、あるいはそれより早く発音できるようになると、聞き取れなかった英文も聞き取れるようになります。個々の単語の発音のチェックは辞書などに頼ればある程度可能ですが、connected speechの学習には、音声を聞きながらスクリプトを目で追って、単語と単語の間の発音が繋がっている部分を細かくチェックするといいでしょう。この単語間の繋がりを意識していくと、たとえば、allのように子音で終わる単語とaboutのように母音で始まる単語が繋がると、オールアバウトではなく、オーラバウトのように聞こえてくるなどのconnected speechの仕組みに気づき、リスニングの有効的な学習になります。

 早速自己分析をして、どちらの学習が必要なのかを判断した上で、学習を進めてみてください。使用する教材を選んで、聞けなかったことが聞けるようになったという成功体験を少しずつ積み重ねていってください。必ずリスニング力がアップします。

 

TOEICはパート毎に目標を立てて対策する

たとえば、英検のリスニングパートは、一級でもナチュラルスピードより若干遅いようです。一方、TOEICのリスニングセクションはナチュラルスピードで話されているので、ネイティブの話す英語に慣れていない学習者にとっては難しく感じることも多いようです。そのことも踏まえて、TOEICのリスニングセクションを攻略するためには、リスニング力そのものを上げることももちろん大事なのですが、TOEICについて知ることが先決です。

まず、各パートでどれくらいの正答が必要かなど、細かい目標を立てて学習することを強くお勧めします。まず、600点達成を目標とするのであれば、リスニングセクション全体で350点から380点を目標にしましょう。このくらいのレベルですと、読む量がかなり多いリーディングセクションは最後まで問題を解くことさえできず、結局は何問か適当にマークを塗りつぶす「ぬり絵」をするケースがほとんどではないかと思います。それに比べて、リスニングセクションは、理解できているかどうかに関わらず、全問を解くことが可能です。中には聞こえてくる音声の意味が理解できず、塗りつぶす問題があるにしろ、テストの音声そのものがペースメーカーになっていて、結局は100問全問解くことになるので、リスニングセクションの方が高スコアを獲得できる受験者は少なくありません。

 

ハイスコアのために、各パートの攻略ポイントを押さえよう!

 このことを踏まえて、各パートに具体的な目標を立てましょう。まず、Part 1は全部で6問しかありませんが、写真に写っている物や人の描写であることが多いので、このパートで登場する表現は、比較的簡単なものが多いでしょう。問題集や参考書などを使用して、どのような写真が登場するのか、あらゆる表現というより、写真で表すことができることに絞って、人物や物の描写表現を学習しましょう。表現がそれほど難しくないので、この短い英文をシャドーイングしてみるのも、語彙学習、発音学習という点で効果が期待できます。

Part 2は全部で25問ありますが、600点目標でしたら、ずばり23問正解を目指しましょう。ここでは、質問文と応答文に同じ単語や発音の似た表現などが含まれている選択肢は不正解だという「キーワードを避ける」ことや、What やWhenなど、Wh-で始まる疑問文なら、Yes/Noで答えている選択肢は不正解など、TOEIC対策の参考書にあるような対策をして、しっかり繰り返し練習すれば、かなり高い正答率が期待できます。Part 2も比較的簡単な表現が多いですし、短い文が使用されているので、シャドーイングで練習するのもいいでしょう。また、短い会話文なので、質問文と正解の応答文を繰り返し音読したり、自分なりの応答文を考えてみたりするのもいい学習になります。

 Part 3とPart 4は、音声が長くなるので、簡単ではありませんが、600点を突破するには、Part3では39問中25問、Part 4では30問中18問の正解を目指しましょう。語彙の学習や高速音読などで、リスニングスキルを上げていくことはもちろんですが、TOEIC対策も必要です。

両パートで共通してどうしても行っていただきたいのが、先読みです。この先読みは、まず、Part 2が終わったらPart 3の説明文がありますから、その説明文が放送されている時間に最初のQ32~34の3問の設問と、可能なら選択肢も読んでおきましょう。そうすることで、聞き取りたい情報が整理できて、聞き取りやすくなります。そして、Q32~34の会話文が放送されている間に、これら3問の解答を済ませ、その後のQ32~34の質問文を読み上げる時間と、解答のための沈黙の時間を使って、次のQ35~37の設問と選択肢を読みます。これをPart 4が終わるまで繰り返していきます。

この先読みをするには、設問と選択肢を素早く読むスキルが必要です。設問を繰り返し読むことは大事ですし、出題の傾向を押さえることも重要です。

例えば、Part 3では、

・Where most likely are the speakers?

(話し手はどこにいるか?)

・What does the man ask the woman to do?

(男性は女性に何をするよう頼んだか?)

 

Part 4では、

・Who is the talk intended for?

(誰向けのトークか?)

・What problem does the speaker mention?

(話し手が言及した問題は何か?)

 

などのような設問は、会話やトークの内容にかかわらず頻繁に出題されるので、しっかり押さえておくと、1~2秒で読み取ることができるようになります。その分、他の設問や選択肢を読む時間ができるので、問題集などで似たようなことを聞いている設問をチェックしておきましょう。このように、先読みがPart 3とPart 4の最大の対策となります。

 そして、Part 3とPart 4には、詳細が聞き取れなくても解答できるタイプの問題が含まれます。たとえば、Part 3のWhere does the conversation most likely take place? (会話が行われているのはどこか?)や、Part 4のWhat is the main purpose of the talk?(トークの主な目的は?)などは、細かい情報を聞き逃しても解ける問題です。各会話やトークに3問ずつ設問がありますが、そのうち最初の問題にこのような問題が出題されることが多いですし、Part 3とPart 4を合わせると約20問あるので、これらの問題をしっかり正解する練習をしておくといいでしょう。

 このようにTOEICのリスニングセクションの傾向や対策をしっかり行って、繰り返し練習をすれば、必ず目標スコアを達成できるはずです。全力で応援しています!

 


●編集部より:英語学習に質問やお悩みのある方は、ぜひ横本先生にご質問をお寄せください。一人で考えて答えが出る悩みもあれば、悩み続けて時間が経ってしまうことも多いと思います。ご質問はこちらから。ぜひお気軽にお聞かせください!


英語お悩み相談室 質問受付フォーム 

バックナンバー

著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

ジャンル

お知らせ

ランキング

閉じる