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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.123「英語の基本的な学び方と、モチベーション維持のコツ」

英語を勉強したく、勉強方法についてご相談です。

目指しているレベルは、以下の2点です。

・ネイティブスピーカーと会話ができる

・英検2級取得

学生時代は英語が得意な方でしたが、社会人となり10年が経過し、英語とは無縁の生活を送っています。

英語を勉強するのは、本当に久しぶりなのですが、まずは何から始めるべきでしょうか?中学英語も怪しいレベルなので、まずは中学英語の文法と単語を勉強するべきかと、考えていますが、いかがでしょうか?

文法を「中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく」で、単語を「世界一覚えやすい中学の英単語1800」で、勉強し、この2冊を完璧にしようかと考えております。

また、英会話において、中学英語の文法が大切と聞いたことがありますが、それは本当でしょうか?

以前に、英語を勉強しようとしては、続かず、挫折している経験が何度もあります。仕事や生活のために英語を勉強するといった必要に迫られている状況ではないので、モチベーション維持が難しいと感じています。おすすめのモチベーション維持の方法はありますか?

よろしくお願いいたします。

(みかん、31歳、会社員)


 

内容理解とOUTPUTの手本としてのINPUT

社会人になると、普段仕事で英語を使用する方以外は、英語とは無縁の生活になると思います。そのような中、久しぶりに英語学習を再開されるという志が嬉しいです。いい機会なので、基礎からやり直して、是非ネイティブスピーカーとの会話ができるレベルと英検2級取得という目標を達成しましょう。そのために少しでもお役に立てるよう、英語学習方法についてとモチベーションの維持方法について紹介させていただきます。

 

自分のレベルを客観的に把握しよう!

まず英語学習方法についてです。ご自身の評価では、中学英語も怪しいとのこと。こうおっしゃる方は非常に多いのですが、実際には中学英語で学習する基礎はすでに出来ている方も結構いらっしゃいます。

英検2級取得という明確な目標がありますので、目標達成するのに自分に足りていないものが何かを分析できるといいと思います。そのほうが、今後の学習計画がより明確になり、後に紹介するモチベーションを維持するというのにも深く関わってきます。実際のテストなどの結果で現在のレベルを正確に知る必要があるので、一度テストを受験することをオススメします。

英検2級取得が目標ですので、まずは英検3級と英検準2級の過去問をひと通り見てみて、どちらかを受験をしてみてはいかがでしょうか。英検協会のホームページに過去問が掲載されているので、時間を計ってひと通り解いてみるといいと思います。合格ラインに少し足りないくらいのレベルのほうを受験するといいと思います。

受験すると成績表が送られてきますが、そこにCEFR(Common European Framework of Reference for Languages)のレベルが表示されています。このCEFRというのは、世界共通で使用されている語学力の指標で、初級レベルのA1から上級レベルのC2まで、6段階で語学力を表します。ネイティブスピーカーと会話するレベルという目標についてですが、スラスラとはいかないまでも、ところどころ語彙や文法を探りながらでも、身近な内容や自分の興味のあることについて話すのであれば、CEFRで中級のB1レベル相当になります。また、英検2級合格というのもB1レベル相当なので、Reading, Listening, Writing, SpeakingすべてにおいてこのB1レベルに達することを目標にすればいいと思います。

ご相談内容にもありますが、会話では中学で学習する文法や語彙が重要になるのは確かです。特に語彙についていえば、受験や検定試験で問われるような語彙力は必要ありません。様々な場面で使用されている英語を集約したBritish National Corpus (BNC)というデータから算出された、最も頻繁に使われる3000ワードファミリーを、実際にネイティブスピーカーが会話で使用している語彙と照らし合わせると、2000ワードファミリーでは89%以上、3000ワードファミリーと地名や人名などの固有名詞を加えるとなんと96%以上を占めることが分かっています。

このワードファミリーとは、語形変化や派生語を含めた単語の数え方です。たとえば、happyという単語にはhappierやhappiestという語形変化もありますし、happinessという派生語もあります。こうしたすべての語を、ひとつのワードファミリーとして数えます。それにしても3000ワードファミリーをマスターすれば、大概の会話は可能だということが分かります。現在の学習指導要領のよると、小学校で600~700、中学で1600~1800のワードファミリーを学習するので、中学英語を中心に語彙学習を進めるのはとてもいい考えです。

 

使える文法は、まずはINPUTから!

文法についても、特に会話であれば、複雑な文構造を学習する必要はありません。基本的な語順に加え、疑問文、助動詞、動詞の時制、完了形、進行形、関係代名詞、基本的な仮定法など、中学英語で学習する文法事項で十分会話を楽しむことができます。中学英語で学習する英文法にあまり自信がないようでしたら、市販の教材を使用して復習するのもいいアイデアだと思います。

ただ、文法に関する説明を理解するだけでは、英文の内容を理解するINPUT、実際に会話で使うOUTPUTができるレベルには達しないので、長文などを使って、学習した英文法が実際に使われている英文の内容をまず理解するINPUTの練習が必要です。英検対策のための問題集にある長文などを読んで、問題を解くのではなく、内容理解つまりINPUTすることを目標に学習を進めてみてください。語彙学習と同時進行していけば、長文に登場する語彙の理解にも、文法の理解にも、そして実際に英語を使うOUTPUTのスキルにも繋がります。

 

何気ない話題を、OUTPUTの練習に!

ライティングやスピーキング、つまりOUTPUTですが、難しい内容に挑戦する必要はありません。日常的に身の回りで起こり得る内容について書いたり話したりしましょう。理想的なのは、簡単な内容であるという条件付きですが、読んだばかりの英文の内容に関連することについて書くのがいいでしょう。たとえば、問題集の長文を読んでその概要を書いてみるというのもひとつのいい練習方法です。重要なのは、日本語で考えて英訳するのではなく、これまでINPUTを通じて見たことのある英語表現を使用して英文を書くことです。辞書に頼ることがあるのは仕方ありませんが、できる限り学習した英文の中の表現を使用して書くように心掛けてください。読んだり聞いたりしてINPUTした表現を、話したり書いたりしてOUTPUTするのが英語学習の最大のコツです。

 

継続可能な学習計画でモチベーション維持

学習するための教材と学習方法がわかれば、あとは継続学習です。英語学習にはどうしても継続学習が不可欠です。学習の途中で続かなくなったりすることも多いと思いますが、どうしたら継続できるのかを考えながら、モチベーションを上げたり維持したりするためのコツを紹介したいと思います。

まず、モチベーションで重要なのは目標を具体化することです。たとえば目標のひとつでもある英検2級合格というものであれば、現在のレベルで何が不足しているのかを具体的に知ることが重要です。現在のレベルにもよりますが、目標があまりにも高すぎると不足していることが多すぎて、結局何から始めていいのかわからなくなるというのがよくある失敗例です。いきなり最終目的地を目指すのではなく、まず少し上のレベルを目標に、たとえば、いきなり英検2級合格を目指すのではなく、まずは3級合格を目指すところから学習を始めてみましょう。一度3級を受験してみて、成績表にある詳しい説明から、自分に足りないスキルは何かを分析するのがおススメです。合格したとしても、満点ではない限りまだまだ3級レベルの教材でやり残した学習があるはずです。リスニング力が不足しているのか、それとも語彙に課題があるのか、あるいは文法や語法の理解が足りないのか、実は長文の読解が苦手なのかなど、客観的な指標で評価された分析結果を見ると、今何をすべきなのかが明らかになります。これがモチベーションには重要な情報です。

 

学習計画を目で見える形にする!

自分の弱点が分かったら、それを克服するための学習計画を立てて、学習進捗度が視覚的に分かるようにカレンダーなどに書き込みましょう。たとえば、読めば理解できる単語でも、リスニングで登場すると聞き取れないのが弱点だったとします。それを克服するために、2週間は毎日1文ずつディクテーションして音声情報を言語情報に置き換える練習をするという学習計画を立てて、卓上カレンダーに「ディクテーション」などのように書き込んでおきます。達成できたらそこに印をつけるなどして、学習が進んでいることが視覚的に確認できるようにするとモチベーションを維持しやすくなります。

そして、学習計画を立てるときには、弱点克服に必要な学習内容を細かく分けて、短いスパンで達成できる計画を立てていくのがおススメです。例えば、語彙不足が課題だと分かったら、市販の単語帳一冊を終わらせるというような長期的な計画ではなく、問題集の長文問題1題分の中にある知らない単語をアプリ上の自作の単語帳に入力して、1週間でそれをすべて覚えるなど、目標達成にも、毎日の学習にもそれほど長時間かからない計画を立てて、それを達成して、次の計画を立てるという方法がモチベーションを維持していく秘訣です。

 

毎日やれば、英語はどんどん上達する!

そして、学習効果を上げるためにも必ず毎日少しずつ学習しましょう。ある研究では、週に1回2時間学習するより、10分間の学習を週に5回を行う方が、より学習効果があることが報告されています。いつでも気軽にできる形の学習が最も適しています。例えば、毎日通勤中にスマホを見るのであれば、その時間を利用して学習するなど、忙しい社会人でも継続可能な1日5分間あるいは10分間という必ず続けられる学習計画を立てることを最優先しましょう。

また、学習する回数もとても重要です。どんな優れた学習方法を行っても、学習回数が少なければ定着せず、学習効果が期待できません。1度学習したら終わりではなく、2~3日空けて4~5回以上学習すると、学習効果が上がります。語彙の学習となると最低でも8回以上は反復学習しましょう。そうすると、学習した単語が英文で登場した際、意味が理解できていることを実感できるようにもなりますし、その実感がモチベーションの維持に大きく貢献します。

 

自分の目標の姿に、思いを馳せてみましょう!

そして、もう一つ重要なのは、自分自身が目標を達成して英語で何かをしている姿をしっかり想像することです。CEFRのB1レベルが目標なので、英語で身近な内容について話せるというレベルですから、例えば、昼食に食べたパスタやその店の様子などについてネイティブスピーカーと話している自分の姿を想像してみるといいでしょう。時々そういう会話をしている自分の姿を想像してみることが、モチベーションをするのに役立ちます。

ここまで紹介したモチベーションに関する方法は、ひとりで行うものですが、実は他人と目標を共有すると、継続学習に繋がります。実際に身近に同じような目標を持った知り合いがいればいいのですが、いなければ、最近ではソーシャルメディアなどを通じて同じような目標を持った人と比較的簡単に知り合うことができます。英語を教えてくれるというような相手が主導権を握るような関係ではなく、同等のレベルで英語を話せるようになりたい、英検2級に合格したいという目標を持っている人と、目標を共有したり、学習進捗度を共有したりすると、比較的継続できるようになります。

このように短いスパンの目標を立てて、必ず継続できる学習計画を立てて、毎日少しずつ学習し、その学習進捗度を視覚化また共有しながら、自分の思い描く英語を話している自分自身に一歩一歩近づいていくことで、最終的な目標を達成できるようになります。継続すれば必ず達成できますし、私も全力で応援しています。

 


●編集部より:英語学習に質問やお悩みのある方は、ぜひ横本先生にご質問をお寄せください。一人で考えて答えが出る悩みもあれば、悩み続けて時間が経ってしまうことも多いと思います。英語学習についてのご質問はもちろん、留学のご質問なども受け付けております。ご質問はこちらから。ぜひお気軽にお聞かせください!


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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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