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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.115「英文法は完璧に覚える必要があるのか?」

キャリアアップのために英語学習を始めた者です。学生時代から英語が苦手だったこともあり、英文法がなかなか覚えられません。文法には様々なルールがありますが、やはり完璧に覚えないといけないのでしょうか?また、文法のおすすめの勉強法などがあれば教えていただきたいです。(るる、22歳、会社員)


 

英文法は語順に関連する文法事項を徹底的に

社会人になってから英語学習をやり直す方は少なくありません。仕事をしながら英語学習を続けていくことは簡単なことではありませんが、少しずつで構わないので最初のうちは英語で内容を理解することを中心に学習を進めていってほしいです。

さて、英文法がなかなか覚えられないということですが、いきなり難しい英文法を学習する必要はありません。理解できる英語のレベルにあわせて少しずつレベルを上げていくことを強くオススメします。初級者は特に、英文を読んだり聞いたりしたときに内容を理解するために必要な基本的な文法を学習するのを優先すべきです。

まずは語順です。簡単な英文の構造からしっかり復習しておくことをオススメします。すでにご存じだとは思いますが、英語の語順は日本語と大きく異なるので、意味を正しく理解するためには、どうしても正しい語順を学ぶ必要があります。

たとえば、

(1)The old man ate the whole pizza in the morning.

 (その老人は朝、ピザを全部食べた。)

という簡単な英文でも

(2)The prolific scholar disseminated the recent findings in his article.

 (その多作の学者は論文で最近の研究成果を普及した。)   

という比較的難しい語彙を使用した英文でも英文の構造は全く同じです。

いずれも主語+動詞+目的語+修飾語という大きな枠組みの構造になっています。修飾語はおまけのようなものなので、ここではまず主語+動詞+目的語の枠組みに注目しましょう。この基本枠組みの場合、主語は動詞の表す動作を「する」、目的語はその動作を「される」という意味上の関係にあることが分かります。これが英語の基本構造です。これに似ていますが少し異なった構造もあります。

 (3)The flower garden is very popular.

 (その花園はとても人気がある。)

この文では、主語+動詞+補語という枠組みになっています。この枠組みの場合は、補語が主語の状態や様子を表していて、動作を「する」「される」というような意味上の関係がありません。まずはこの2つの枠組みを理解することが重要です。

 

単語は句毎で理解を!

次に、さらに細かく分析して、品詞の役割まで理解できるとさらに英文の内容が理解できるようになります。注目していただきたいのは、例文(1)~(3)の主語と目的語の位置にある単語の塊です。英語の文法を説明する上では、2語以上からなる塊のうち、主語と動詞を両方含まないものを句と呼びます。

中でも例文(1)にあるthe old manやthe whole pizza、例文(2)にあるthe prolific scholarやthe recent findings、の4つの句は、いずれも冠詞+形容詞+名詞という構造をしていて、3語で名詞の役割をしている名詞句です。例文(3)のthe flower gardenは冠詞+名詞+名詞という構造ですが、flowerがどのようなgardenかを表す形容詞的な役割をしているだけであって、基本的には3語で名詞の役割をしている名詞句です。この名詞句は、主語や目的語としてだけでなく、修飾語の一部でも使用されることもよくあります。

たとえば、例文(1)のin the morningにearlyという形容詞を加えてin the early morningとすると前置詞+名詞句(冠詞+形容詞+名詞)という構造で前置詞句(=修飾語)という構造も成り立つので、英文中でこの名詞句を捉えることは、英文の構造を理解する上でとても重要です。

 

Graded Readersを使って、実践的に文構造に慣れていこう!

その構造を繰り返し目にしたり耳にしたりすることで、英語の語順に慣れておきたいので、短文ではなくて長文を使って文構造を捉える練習をするといいでしょう。名詞句がどこにあるのかを把握しながら、英文を正確に理解できるように内容理解の練習してください。比較的簡単に内容が理解出来る題材を利用した方が、学習効果が期待できるので、Graded Readersなどを利用しましょう。Graded Readersは使用されている単語や文法構造がレベル分けされているので、英文だけで内容理解をする練習をするのに役立ちます。知らない単語がほとんど含まれていないレベルのGraded Readersを利用して、英文構造に慣れるといいでしょう。英語の語順になれて、内容がすらすら理解できるようになったら、Graded Readersのレベルを一つあげてさらに練習していくと、徐々に語彙のレベルも文法構造のレベルも上げられるので、自然にレベルアップできます。このような内容理解を主な目的とした学習の中に英文法や英文構造の学習を取り入れるのがコツです。

 

関係代名詞の役割は、形容詞と同じ!

それと平行して、もうひとつ抑えたい文法事項が関係代名詞です。これは比較的易しいレベルのGraded Readersにはあまり登場しない文法事項なのですが、今後英文を理解する上ではとても重要なので抑えていただきたいです。関係代名詞は基本的には形容詞と同じ役割だと考えてください。文中の名詞をその後ろから詳しく説明する部分だと分かればそれほど難しくないと思います。

 (4)The old man who had not eaten anything for three days ate the whole pizza in the morning.

  (3日間何も食べていなかったその老人は朝、ピザを全部食べた。)

この英文の中でwho had not eaten anything for three daysがすべてthe old manの説明なので、基本的な英文の枠組みは例文(1)と変わっていません。つまり、関係代名詞を使って英文が長くなっても、基本的な英文の枠組みを掴みさえすれば、英文を理解できるということです。

学習していくうちに長い英文も多く目にすると思いますが、基本的な枠組みを掴んで、加えて語彙学習をしていけば、理解できる英文が増えていきます。英語は学問ではなくて、言語なので、使えば使うほど上達していきます。毎日少しずつでいいので継続して学習して下さい

 

 


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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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