朝日出版社ウェブマガジン

MENU

教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.95「共通テストのリスニング対策指導、どうすればいいですか?」

 

この連載では、英語学習に悩みを抱える読者の方のご質問に、横本先生が懇切丁寧にお答えしていきます。先生へのご質問はこちらから。お気軽にご応募ください。
英語お悩み相談室 質問受付フォーム


 

Q.95「共通テストのリスニング対策指導、どうすればいいですか?」

首都圏の高校で英語を教えています。うちの学校では進学率を上げるために、新しく共通試験対策の英語の夏期講習を実施することになりました。内容としては、教材を使って試験形式に沿った問題を解かせようと考えているのですが、生徒のリスニング力そのものを上げるには、彼らに自学習を頑張ってもらうしかないと考えています。自学習の際に有効なリスニング力の強化方法があれば教えて頂きたいです。宜しくお願いします。(たかおか、29歳、教員)

 

|明示的な発音学習と多聴でリスニング力アップ

共通テストのリスニング問題は、本来のリスニング力がないとなかなか解けない問題です。受験のテクニックのような対策では、なかなか高得点は期待できないかもしれません。やはり、英語を聞き取って理解できることと、理解した内容を整理して書き留めること、などができるように練習しておきたいです。質問でおっしゃる通り、授業中のリスニング練習だけでは、英語に触れる絶対量が到底足りません。どうしても自宅や通学中の自習に頼らざるを得ないのが現状です。

 全体的にリスニング力を向上させるためには、いくつかのハードルがあります。自習では克服するのが難しい発音の学習は、授業中に行うのがベストだと考えています。特に日本語にはない英語の子音や母音、強勢と弱勢で作られるリズム、音の高低で表現される抑揚、そして音の連結というのは、聞き取るだけで学習するより、明示的に学習するほうが効果的だと言われています。そのため、授業で取り扱って欲しいポイントです。

 

|リスニングの授業後は、繰り返し復習を!

授業で扱った後は、自習で何度も練習するように教えてあげてください。音の仕組みを理解することで、聞き取ることができるようになるきっかけを作れたとしても、実際に聞き取れるようになるには、練習が必要です。

それは、正しいバットの振り方の説明を読んだり聞いたりして理解したとしても、すぐに打てるようにならないのと同じです。発音に限らず、文法もそうですが、理解しただけでは使えるようにはなりません。必ず反復練習を自習で行うように薦めてください。

 

 

|自習では単語の発音ポイントを確認!

自習で行う際に使う題材ですが、授業で扱った発音ポイントを含む題材であれば何でも構いません。まず、子音や母音の学習の後には、多くの話者が発音している子音や母音に触れることが重要な学習です。

これは高変動音素訓練(High Variability Phonetic Training)と言われるものです。例えば、日本人が苦手としている/l/と/r/の聞き分ける練習をするときに、複数の話者が発音する/l/と/r/の音を聞き分ける練習をすると、聞き分けができるようになります。

 

|YouGlishのすすめ!

これを自習に取り入れるには、YouGlish (https://youglish.com/)を利用するといいでしょう。YouGlishでは、聞いて欲しい単語を検索すると、その単語を含むYouTube動画が多数聞けるようになっています。例えば、YouGlishの検索バーでlockと検索すると、lockという単語が含まれている動画が13,000件以上観ることができます。同様にrockを検索すると、rockという単語を含む動画が42,000件以上観ることができます。授業で、/l/と/r/を扱ったら、しばらくの間、lock, rock, lip, rip, light, rightなどを30人分くらいずつ聞いて見るなどを宿題にするのも効果的だと思います。

 

|英語のリズムは、音節の理解から教えましょう

次に強弱によって作り出されるリズムです。これも聞き取りのみによる学習だと限界があるので授業で生徒に指導する必要があります。特に音節を捉えることが重要です。たとえば、strongは1音節で、computerは3音節だというような音節の構造に対する意識付けをしてあげて下さい。カタカナ英語に変換してしまうと、英語の音節と数が合わず、英語のリズムを捉えられずに聞き取りの妨げになるので、単語学習と同時に音節を捉えるように教えることを強くオススメします。

音節が捉えられるようになったら、2音節以上からなる単語の場合に強勢のある音節を大げさに強く、弱勢の音節は極端に弱く発音することで、英語のリズムを捉える練習をすると、英語のリズムで話されている単語を聞き取れるようになります。

この強勢と弱勢の組み合わせは、文単位でも重要です。文中の重要語句には強勢があり、比較的聞き取りやすくなっていますが、冠詞や前置詞などあまり重要でない語句(機能語)に関しては、不明確な発音が多いので、聞こえてこないこともしばしばあります。その際には、強勢のある単語を聞き取って、意味を把握する練習が必要です。その仕組みを授業で扱って、やはり宿題として、文単位のリスニング練習を取り入れるべきです。

 

|多聴は学習者のレベルに合ったものを!

いずれにしても、授業でそれぞれの音の仕組みを学習した後、多聴を取り入れるべきです。最近ではインターネット上で、無料で利用できる教材も多くあります。多聴も多読と同様にあまり難しすぎる音声教材を使用してもあまり効果が望めないので、レベルを学習者用に調整されたものを使用するのが望ましいです。学校の図書館などにGraded Readersで音声付きのものがある場合には、それを積極的に使用するのが望ましいです。インターネットでもGraded Listeningと検索すると便利なWebページが見つかると思います。学習者のニーズや興味に合わせて、使えそうなページを紹介してあげて、毎日少しずつリスニング練習をさせるのが効果的です。

リスニング力を効率的に上げるには、授業で音の仕組みを学習し、家庭で多聴を行うことが欠かせません。初めは苦労するかもしれませんが、聞き取れる内容が増えると、学習効果を実感でき、モチベーションにも繋がります。是非試してみてください。

 

 

★横本先生&編集部のおすすめリスニング学習サイト★

○YouGlish(https://youglish.com/)

検索するとすぐに該当単語の音が聞くことが可能です。ぜひ一度お試しを!

○British CouncilのGraded Listening

(https://learnenglishteens.britishcouncil.org/study-break/graded-listening)

レベルはA2からB2まで。内容がドラマ仕立てなので、勉強の息抜きにもおすすめです。スクリプトも参照出来ます。

○Randall’s ESL Cyber Listening Lab(https://www.esl-lab.com/)

レベルは、easy、Intermediate、Difficultの3種類。素材が豊富で、キーフレーズの学習もでき、内容に沿ったクイズも用意されています。こちらもスクリプト参照可能。時間に余裕がある方は、1日1つ聞くのもおすすめです。

 

バックナンバー

著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

ジャンル

お知らせ

ランキング

閉じる