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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.106「リスニング、スピーキングが全く上達しません。 何か良い勉強方法はありますか?」

私は現在大学二年生です 受験勉強や知り合いの友達の外国人に出会ったことをきっかけに英語・海外に興味を持つようになり、大学1年の秋頃から英語を本格的に勉強するようになりました。 英語に興味があるのですが、興味をもった時期が遅かったのもあり、特にリスニングとスピーキングが全く上達しません。 リスニングの練習は大学生になってから始めました。 勉強法は「聞いた英語をノートに書き、聞き取れなかった部分・間違っていた部分を確認し、繰り返し見直す」という記事が多くあり、自分もこの勉強法で今もやっています。 大好きな英語を「勉強」という堅苦しい枠にはめたくなかったので、最近は子供用のアニメをリスニングの教材として使用しています。

悩んでいるのは、リスニング、スピーキングが全く上達しないことです。 「聞いた英語をノートに書き、聞き取れなかった部分・間違っていた部分を確認し、繰り返しやり直す」という勉強方法を信じ、やり続けて一年が経ちますが、全く上達しません。英語を書きとるノートだけが一向に増えるばかりです。文章でthatがきたら、このthatは関係代名詞だ!と理解出来るのですが、リスニングになるとそのthatはなんのthatなのか、そもそも聞き取れない、スピードが速すぎる、イメージがわかない、ということが起きてしまいます。この勉強法でそのまま続けていいのか不安になってきています。 何かいい勉強方法や、アドバイスがあれば教えて頂きたいです。

英語が聞く・読む・話せるようになりたいという目標の元、今は留学に向けてTOEFLの勉強中です。 長文になってしまいすみません。

よろしくお願いいたします。

(れいら、大学生、20歳)


 

目的にあった学習方法を取り入れましょう

英語に興味を持ち始めて、英語学習を続けていらっしゃるのは本当に嬉しい限りです。様々な英語学習方法がある中、ご自身で良いと言われている学習方法を探し出し、それを継続していらっしゃるところが、まず英語力アップに繋がっていると思います。英語力そのものがアップしていても、それが試験などのスコアに反映されるまでには、時間を要することも少なくありません。気を落とさずに継続して欲しいです。それでも、やはり他にも効果的な学習法があるので、そちらも試してみてください。

 

これまで行ってきた学習方法は、おそらくディクテーションという学習方法です。このディクテーションは、英語学習方法としてはかなり優れています。さて、このディクテーションにはどのような効果が期待できるのでしょうか。

まず、聞き取りについてですが、これは全体の内容を聞き理解する能力をアップさせるというよりは、一語一語を聞き取る力を付けるのに向いている学習方法です。一語一語の発音を学ぶことができ、単語と単語の繋ぎ目に起こる音の脱落やリンキングを上手く聞き取り、それをひとつひとつの単語に分解する能力が養われます。

例えば、

Matt is going to visit his sister on Monday.

という文ですと、

Mattis gointo visitisister oMonday.

のように、単語と単語を繋げて発音するため、2つ以上の単語が一つの単語のように聞こえてきます。ディクテーションにより、これを分解できる力がつきます。また、特にネイティブスピーカーの英語の発音では、音の強弱、高低、長短が極端なので、弱く、低く、短く発音される部分の音を上手く聞き取れません。それを耳に頼って聞き取る必要は全くなく、自分の持つ単語や文法の知識、それからその発話がなされている場面に関する情報などを用いて、聞き手が補って文を完成する必要があります。そのため、ディクテーションをすると、単語や文法の知識も身についていきます。このように、これまで行ってきたディクテーションは、英語力アップの効果は期待できるものの、内容理解を目的としたリスニング力やスピーキング力アップに直接的には繋がっていなかったことがおわかりいただけると思います。

そこで、今度はリスニング力とスピーキング力を上げるための学習法を取り入れていただきたいと思います。

 

リスニングでは、まずキーワードの単語を聞き取りましょう

まずは、内容理解を目的としたリスニング力アップのための学習方法です。内容理解をするためには、聞いている英文の中から重要語句を聞き取る必要があります。ディクテーションをした時に、特に聞き取りやすい単語がいくつかあったと思いますが、その単語を聞き取って理解に繋げるものです。

実際のコミュニケーション上で英語を聞き取る際は、このようにキーワードとなる単語を聞き取るだけで、意味が理解できます。もし何かの検定を目指していらっしゃるようでしたらその問題集を使うといいでしょう。リスニング学習にはスクリプトがあると便利なので、スクリプトがない教材は避ける方が無難です。

例えば、聞こえてきたのが

The store will be closing at three today due to the renovation.

という英文のうち、store, closing, three, renovationという4つの単語が聞き取れれば意味の把握には困りません。

 

複雑な文構造の把握には、スピードリーディングを

また、もう少し複雑な文構造が聞こえてきた場合の学習法としてオススメなのが、スピードリーディングです。リーディングとリスニングの大きな差は、スピードなのですが、リーディングで、そのスピード差を克服すれば、リスニングのスピードについていけるようになります。やり方も、英文を前から順に読みすすめていくだけなので、とてもシンプルです。

ここで重要なのは、関係代名詞などのような名詞を修飾する語句が後ろに来ているものも、そのまま前から読みすすめていくことです。英語は日本語と比べると語順が異なるので、その違いに慣れる必要があります。英文を前から順に読み進めていき、できる限り前の単語に戻らないように読んでいきます。この際に役立つのがスラッシュリーディングです。これは、意味の塊毎に前から読み進めるのにとても役立つ学習法です。

たとえば、

I am going to be in charge of the building that you talked about yesterday.

という英文を見てみましょう。

I am going to / be in charge of / the building / that you talked about / yesterday.

と意味上の塊に分解して、「私はこれからやる/担当を/そのビルの/あなたが話していた/昨日」という英語の語順のまま意味を理解していきます。これにより読むスピードも早くなりますし、そのスピードが話すスピードに追いつくと、リスニングでも問題なく理解できるようになります。リスニングの練習と同時にこの練習を進めていくことをオススメします。

 

スピーキングは、まずは3分間で話す練習を

次にスピーキングです。スピーキングで重要なのは、話す練習です。日本にいる限り、話す量が圧倒的に不足しているのは事実です。実際に話す機会が増えれば、必然的に話す力はついていきます。したがって、何らかの方法で、英語を口に出す必要があります。英語だけで自分が見ているものを描写したり、考えを述べたりする時間を毎日確保するようにしましょう。これは毎日行いたいので、たとえば風呂上がりの15分などのように、毎日行う活動とセットで学習すると良いと思います。

具体的な学習方法としてオススメするのが、3/2/1という学習法です。子ども用のアニメを教材としてご覧になっているようですので、たとえばその内容を3分間で話すというのもとてもいい練習になると思います。

1回目の3分間が終わったら、今度は同じ内容を2分間で、そして、最後にもう1回同じ内容を1分間で言えるように3回繰り返します。この同じ内容を3回繰り返すことに加え、話す時間を短くしていくことが、この学習法の効果の秘訣です。

スピーキングは語彙力アップのためというより、すでに持っている語彙を使用して表現できることを目標としたいので、あまり難しく考えず身近なトピックがいいと思います。この学習法によって、英文を組み立てる時間は徐々に短縮されていきます。自分が持つ語彙で色々なことが表現できるようになり、流暢さが増していきます。

 

話す時は、意味上の塊ごとに

そして、スピーキングの際に気をつけたいことがあります。それは発音にも関わることです。スラッシュリーディングによって意味上の塊ごとに理解することをおすすめしましたが、話す時にこの意味上の塊ごとに話すということも重要です。

たとえば、3月に月例会議を行っている際に、

The next meeting will be on April 28.

と言うとします。この英文は

The next meeting / will be on April 28.

と二つの意味上の塊に分けて発音するといいでしょう。

そして、1つ目の塊ではnextが重要語句ですし、2つ目の塊では28が重要となります。それぞれの塊の中でこれらの単語を強く、高く、長く発音すると上手に伝わります。

この意味上の塊や、強く、高く、長く発音する練習として効果的なのはシャドーイングです。シャドーイングというのは、リスニング教材などの音声を流し、聞き取った音声を1~2秒後に、元の音声と全く同じ英文を、全く同じスピードで、全く同じ発音で話すというトレーニングです。

これもスクリプトがないとはじめは難しいので、検定対策用の教材で構いませんし、難し過ぎるならスクリプト付きの初級者用リスニング教材を使用するといいでしょう。ここで重要なのは、「完璧にコピーする」ことです。音の強弱、高低、長短を100%全く同じように表現できるように練習することが重要です。

そして、もちろん口に出している内容を理解した上で、どのように重要語句が強調されているのか、また、強調されていない語句がどのように素早く発音されているのか、を捉えるのにとてもいい練習になります。意味上の塊も意識しながら、シャドーイングで発音の仕方を身につけると、聞き手にとって理解しやすい英語が話せるようになります。

 

いずれの練習方法も継続練習によって英語力が磨かれていきます。これまでも継続学習がしっかりできていらっしゃったことを考えると、リスニングやスピーキングが上達するのも実感できると思います。全力で応援しています。毎日コツコツ楽しみながら学習してください。

 


●担当編集より:英語学習に質問やお悩みのある方は、ぜひ横本先生にご質問をお寄せください。一人で考えて答えが出る悩みもあれば、悩み続けて時間が経ってしまうことも多いと思います。ご質問はこちらから。ぜひお気軽にお聞かせください!
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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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